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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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植物園

 僕の行動を不信に思った犯罪者たちは逃亡をはかった。他にも犯罪者がいたのか、僕が捕まえられた犯罪者は八人だけだった。

 美術館内に蔓延していた魔法が消え、多くの者が魔力の効果が無くなる。


「何人に逃げられたんだろう……。まあ、捕まえた人達に訊けばある程度わかるか」


 僕は捕まえた八名を騎士団に渡した。加えて一八個の魔道具も渡す。その後、待たせているシトラとミルのもとに戻った。


「キースさん、無事でしたか?」


 ミルは美術館の外に出て僕に駆け寄って来た。


「うん、ミルも無事みたいだね」


「シトラさんも無事です。アルブちゃんがぼく達を守ってくれたみたいです。でも、美術館の品を盗んでいく者がいるなんて。あんな絵が売れるんですかね?」


「さ、さあ? わからないけど、欲しい人は欲しいんだよ。でも、奪うのは違うよね」


 僕とミルが話あっていると、シトラが美術館から出てきた。


「はぁ、ほんと最悪……。なんで、今日に限って犯罪に巻き込まれるのよ……」


 シトラは休日を台無しにされていらだっていた。まあ、誰だって犯罪に巻き込まれたらイラっとするか。


「シトラ、落ちついて。少し考えてみて。僕達がここに来たから犯罪を止められたんだ。だから、僕達がここに来た意味はあるんだよ」


「うぅ、そうだけどさ……。せっかく久しぶりのデートだったのに……」


 シトラはアルブを抱きしめながら視線と尻尾を下げ、耳もへたっていた。その姿を見るだけで心が沈んでいるとわかる。


「雨はやみませんし、ぼくたちの心はずーんと重めです……」


 ミルも天候が雨で感覚が狂うのか、気分が下がっていた。

 僕が絶不調だったのが原因かもしれない。二名に少しでも元気になってもらいたかった。何かいい場所はないかと思い、冊子をパラパラとめくる。僕は良い場所を見つけ、ルパとミアの手を取って案内した。美術館の近くに二人が好きそうな場所があったのだ。


 僕たちが入ったのは透明なガラスドーム内に作られた植物園だった。様々な植物が生えており、花々も咲きほこっている。ガラスにぶつかる雨の音と植物園の雰囲気がしっとりしており大変心地良い。

 植物園内に喫茶店もあり、お菓子や珈琲を飲みながら楽しむという大人な時間を過ごせば、二人も鬱憤を少しは発散してくれるのではないだろうか。


「うわぁ~、森の中にいるみたいです。綺麗なお花が咲いていていい匂いもして、雰囲気が物凄く良いです~!」


 ミアは植物に囲まれ、気分が一気に上がっていた。雨に濡れず、花の良い香りがするから余計に気分が上がるだろう。


「す~、はぁ~。植物がいっぱいで空気が美味しく感じる。なによ、キース。やるじゃない」


 シトラも先ほどの鬱憤が晴れ、花を見たり匂いを嗅いだりして心を静めていた。


「よかった。二人の心が上がってくれて。やっぱり旅行は楽しまないと!」


 僕は気分をあげるために出来る限り笑った。無理やりではなく、楽しい気持ちを表すためなので辛くない。


「きゅるるんっ! キースさん、その笑顔は反則ですっ!」


 ミルは日のような明るい笑顔になり、僕に抱き着いてくる。やはりミルはこうでなければ。


「もう、この前までボロボロだったくせに。あんまり無理した駄目よ」


 シトラも僕に寄り添って来た。アルブも僕にぺたぺたくっ付いてくる。自然に囲まれていると心が落ち着く。まあ、家の周りも自然だが、花が咲いていると元気が貰えるのかもしれない。


 僕達は喫茶店に向かい、ケーキと珈琲、紅茶を購入した。花が見える場所で三時のおやつを食す。花に囲まれながらおやつが食べられるなんて贅沢だ。


「キースさん、あーん」


 ミルはチーズケーキを僕に食べさせてきた。


「あーん」


 僕はありがたくチーズケーキを食す。代わりに僕のショートケーキをあげた。


「ん~っ。キースさんに食べさせてもらえると、いつも以上に美味しく感じます」


 ミルの気分が上昇し続けており、雨など関係ないくらい楽しんでいた。

 シトラはアルブにケーキを食べさせており、お母さんのような温かみを感じる。


「キースさん、アルラウネっていつ来るんですかね?」


「わからない。でも、今の僕は調子がいい。この前きていたら最悪だったけれど、今なら負ける気がしない。それくらい調子がいいからミルは何も心配しないで。今まで心配かけてごめん、僕はまだまだ弱い。これからも心配をかけるけど、ついて来てほしい」


「もう、キースさん。そんなの当たり前じゃないですか。ぼくはキースさんが地の果て海の果てに行ってもついていきますよ」


 ミルは両手を握り、満面の笑みを浮かべた。


「キースありきの作戦なんだから、しっかりと仕事しなさいよ」


 シトラは僕にチョコレートケーキを食べさせてくる。


「もちろん。僕に出来ることは何でもするよ」


 植物園で気持ちが上がった僕達はすでに旅行を楽しんでいた。八日に一度の旅行は僕達の心を暖め、人生を豊かにしてくれる。とても大切な時間だ。プラータちゃんやイリスちゃんもいたらもっと楽しくなるんだろうなと優に想像できる。


「あぁ~、キースさん。今、プラータちゃんのことを思い浮かべましたね」


「イリスちゃんもね。ほんと、手が出せると思ったらすぐに顔に出るんだから」


 ミルとシトラは僕の考えを当ててきた。超能力でも使えるのかな……。


 三時のおやつを食べ終えた僕達は植物園の中を歩き、時間を使う。植物園は広く、全体を回るだけで時間が溶けた。


 暗くなると魔石の照明が点き、幻想的な空間になる。もう少しいたいと思ったがミルとシトラがお腹を空かせていたので高級な宿に向かった。今日は高級な宿の美味しい料理食べ放題にした。全部食べたらさすがに悪いので美味しく食べられるだけの量にとどめてもらう。


 美味しい料理を食すミルとシトラはいつも以上に幸せそうで、その笑顔を見ている僕の方も幸せな気持ちになる。幸せな気持ちは伝染するんだな……。


 僕は高めの葡萄酒を購入し、シトラとミルの二名とたしなむ。

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