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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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好調

「うん、悪くない。プラスさん、いい具合になって来ていますね。そのまま続けてください」


「は、はい!」


 プラスさんはシトラの強い一撃をしっかりと躱し、ミルの攻撃も回避できるようになっている。

 勇者だから成長速度が大きいのかな。でも、まだ体力がついてきたというだけだ。それだけでは戦いが起こった時、粘れても倒すのは難しいだろう。


 僕は今まで鍛錬をせずに仕事ばかりをしていた。勉強もおろそかになっている。そのため、まずは体を動かして以前の調子を取り戻すところから始めた。

 

 以前よりも体の動きが軽い。心が軽くなったからかな。でも、半月の間鍛錬をしていなかったのはとても大きい痛手だ。時間を掛けてじっくりと戻して行かないといけない。剣術だって型がブレているかもしれない。そう言う不安が僕を駆り立てる。でもプラータちゃんに嫌われていなかったという安心感だけで他の不安は払しょくされた。そのおかげで微笑みが浮かび、やる気が満ちてくる。


 僕は森の中を思いっきり走った。体が思うように動かず、こけたり倒れたり、疲れが見えた。無理をせず、自分を見つめ直して体を治したあと、もう一度走り込みを行う。


「今なら、前よりも強くなれる……。そんな気がする!」


 僕は鍛錬をするのが楽しくて仕方がなかった。

 昼頃まで山の中を賭け回ると感覚を大分取り戻した。ひとまず休憩し、食事をとる。その後、勉強した。復習を徹底的に行い、忘れかけていた部分を思い出すという行為を繰り返す。


 午後三時、シトラとミル、アルブと共におやつを食し、活力を補充した後、鍛錬を再開。フルーファとアダマスを振り、訛った体を叩き起こした。


 夕食時まで型の調整を行い、汗だくになりながらお風呂に入る。その後、夕食を得て勉強だ。今日は絶不調の日々の中で考えられないほどいい調子の日だった。

「キースさん、お休みなさい」


 ミルはベッドの上で僕にキスをしてくる。


「お休み。ありがとう、ミル。大好きだよ」


 妻のキスに対する想いは感謝に変わり、僕の心は温まった。


「うぅ……。いつものキースさんです」


 ミルは僕の体調が戻ったことがとても嬉しかったのかいつもより強めに抱き着いてきた。背中を優しく撫でて不安な気持ちを少しでも取る。


「もう、ミルちゃんだけズルいわ……」


 シトラは僕にくっ付き、ミルと共に温まった。


 ミルとシトラはすやすやと眠りについた。僕は今までの時間を取り戻すべく勉強に励んだ。

 疲れ知らずの体は新しい知識を沢山吸収し、咀嚼していく。


 六月は梅雨の季節だ。そのため、ウィリディス領でも多くの雨が降った。でも、水が大量に溜められるし、薬草の水やり用の水が手に入るため、いいことしかない。まあ、ミルとシトラの機嫌が悪くなってしまうのは仕方がなかった。


 僕が無我夢中で採取したマンドラゴラは全てウィリディスギルドに売った。ミルは報酬を受け取らなかった。自分は手伝っていないからと言ってお金はもらえないのだとか。僕は半分ギルドに寄付をして半分ミルに預けた。


「僕達は夫婦だから、お金は僕達のものだ。大金だけど、しっかりと管理してくれるかな?」


「キースさん……。はい! わかりました!」


 ミルは大きく頷き、お金を受け取ってくれた。


「キースさん、今回の寄付及びに領土内のマンドラゴラの駆除作業、誠にありがとうございました。もう、感謝してもしきれません」


 ウィリディス領のギルドマスターことベルデさんは深く深く頭を下げてきた。


「ウィリディス領に一定額寄付していただいた方に土地や施設栽培が出来る品をお渡ししているんですが、どうしますか?」


「土地ですか……。じゃあ、ください」


「かしこまりました。今、開いている土地がこの地図の丸で囲まれた範囲です。満額寄付されましたので、山一個分の土地を選んでください」


「山一個分……。ウィリディス領って広いんですね」


「はは……、広さだけなら他の領土の中で一番ですからね。まあ、これだけ土地が余っているということは土地の人気が無いということなんですけどね……」


 ベルデさんは自分で言って自分で落ち込んでいた。少々面倒臭い方だ。


「じゃあ……、グンミの木がたくさん生えた山が良いですね」


「なるほど、それなら、南西の方にある山が良いかもしれませんね。ですが、なぜグンミの木なんて……」


「あはは……。いやぁ、ちょっと興味本位で……」


 僕はグンミの木が生えている森の所有権を得た。売買も可能らしく、地価が高騰すれば儲けが出るそうだ。

 僕達は早速森に向かった。グンミの木が生えており、樹液の取り放題だ。


「まさかもう一個山を手に入れられるとは思わなかったな……」


「ニクスさん、ちゃっかりグンミの木が生えている森を選ぶなんてそんなに良かったんですか~」


 ミルは猫口になり、僕を弄ってくる。


「多くの者に経験してもらいたいくらい良い品だった。だから、大量生産できるように沢山のグンミの木が生えた場所を選んだんだ」


「あんな品を毎回使われたらぼくは命が何個あっても足らないんですけど……」


 森の中で開けた土地を耕して薬草の栽培施設を作った。冬でも問題なく育つらしく、少しでもウィリディス領に貢献出来たらうれしい。


 領土内のマンドラゴラがいなくなったため、僕達は領外の魔物の駆除やマンドラゴラの駆除を主な仕事とした。


 六月八日、今日の仕事は休みだ。ウィリディス領の観光をするために朝から服装に気を遣う。


「はぁ~、キースさんとやっとデートが出来ます~。生憎の雨ですけど……」


 ミルは窓ガラスに張り付き、雨が降って言うウィリディス領を見ていた。


「仕方ないわよ。そう言う日もあるわ」


 シトラは化粧や服装を整え、体調万全だ。服装を整えても結局雨具を羽織るので見えない。でも細部までこだわっているのはよくわかった。


「じゃあ、二人共、観光に行こうか」


「はい!」


 ミルとシトラは大きく声を出し、僕の腕に抱き着いてきた。心が戻ってからの観光は今回が一回目。雨でも楽しみの方が勝つ。

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