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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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醜態

 フルーンさんはアルラウネについての文献や攻撃方法などを詳しく教えてくれた。シトラやミルも熱心に聞いている。


「アルラウネは魔力量が多い奴を狙う習性がある。獣族は魔力が少ない分、アルラウネに見つかりにくい。根に捕まっても魔力を吸収されない分、力で引き千切れるし、相性がいい」


「よかったですね。ここにいる二人は橙色武術祭女の部で一位と二位の実力者です」


「な……。君たちはいったい何者なんだい……」


「Cランク冒険者パーティーの『名無し』です」


「その実力を持っていてCランク冒険者なのか……。末恐ろしいな……。おい、バカ弟子。お前も見習ったらどうだ」


 フルーンさんはプラスさんの方に視線を向け、強めの口調で言う。


「わ、私。今、シトラさん達に鍛錬してもらっているんです。前よりも確実に強くなっています。そう、自覚できるんです!」


 プラスさんは負けじと大きな声をあげた。


「そうなのか。あのバカ弟子が迷惑をかけてすまないな。回復魔法の才能はあるのに、戦闘面は駄目駄目で目も当てられなかったんだ」


 フルーンさんは溜息をつきながら頭を振る。


「プラスさんは努力すれば伸びる人なので、少しずつ強くなっています。シトラと戦えるくらい強くなっているんですから、何も心配いりません」


「なるほど。私が倒れている間も努力していたようで何よりだ」


 フルーンさんからアルラウネについて色々教えてもらったあと僕のお願いはもうなかったのでシトラとミルに聞いた。


「相手の感度を上昇させる薬ってありませんか!」


 ミルは手を挙げてフルーンさんにお願いしていた。


「感度を上げる薬? それはどっちの話しかな?」


「男性の方です!」


 ミルははっきりと答える。


「なんだい、キース君は感度が悪いのかな?」


 フルーンさんは笑いながら訊いてきた。


「どうなんでしょう……。何もつけていない状態なら何も問題ないんですけど、避妊具を付けている時はどうしても妻たちの方が先に意識を無くしてしまって……」


「相当だね……。避妊具って言うのはどの品を使っているんだい?」


「サンドワームの品を使っています」


「へぇ~。いい品を使っているね。でも、確かに少し分厚い。感度を上げる薬はあるが、癖になったら普通に出来なくなる。あまりお勧めしないね。でも、丁度良い品がある。プラス、お前が作ってる品があっただろ。持ってきな」


「うぅ……。は、はぃ」


 プラスさんはなぜか頬と耳を真っ赤にしていったん部屋を出ていく。少しするとプラスさんが戻って来た。


「こ、これを……」


 プラスさんは木製の板に色々置いた状態で持って来た。


「この品はグンミの木から取れた樹脂で作った避妊具だ」


「うっす……」


 ミルとシトラは食い入るように見つめた。確かに一ミリメートルより確実に薄い。


「これ、破れないんですか?」


「そう思うだろ」


 フルーンさんは避妊具の中に水差しから水を灌ぐ。すると、ものすごく伸びて避妊具が膨れ上がっても水がこぼれなかった。


「す、すごい……。さすがにキースさんでもその量は出せませんよ……」


「新しく販売しようとプラスが作ったんだ。こいつは清楚っぽく見えて案外ムッツリなんだよ」


「ちょっ! 師匠! 変なこと言わないでください! わ、私、そんなのに全然全くこれっぽっちも興味なんてありませんから!」


「へぇ、樹脂で男性器を作っている癖に良くそんなことが言えるな」


「な、なんでそれを……」


 プラスさんの顔がトマトみたいになり、針で突いただけで今にも破裂しそうになっていた。


「部屋を掃除していたらベッドの下で見つけた。だが、あれは良い品だと思うぞ。木製なんかより本物っぽくて硬い芯を入れたらもっと良い品になる」


「うぅぅ……。た、試してみます……。って、こんな変態師匠の弟子になっちゃったからこんな性格になっちゃったんじゃないですかぁ~っ!」


 プラスさんは逆切れをかまし、泣き崩れていた。ミルとシトラが近寄って慰め始める。


「はぁ……。性欲くらい誰でもあるだろうが。何を恥ずかしがっているんだバカ弟子。人間は三大欲求のために生きているんだ。それを満たせる品を作っていると言うことに誇りを持ったらどうだ?」


「こ、こんな薄っぺらい避妊具と男性器の模造品を作ってどう誇りを持てと! こんなことが多くの者に知られたら私は外を歩けませんっ!」


 プラスさんは本気で悩んでいるのか、言葉に重みを感じた。


「キース君。アルラウネが来たらバカ弟子は死ぬかもしれない。いや、私が戦った時よりも強くなっていると考えると、一人で戦ったら確実に死ぬ。死ぬ前に女の悦びを教えてやって……もごもご」


 フルーンさんはプラスさんに口止めされてしまった。


「き、キース君! こんな変態おばさんの言うことなんて聞かなくていいから! わ、私、醜態をさらすくらいなら処女のまま死ぬよっ!」


 プラスさんは満面の笑みを浮かべながら泣き、フルーンさんを窒息させる勢いで口を閉じさせていた。


「プラスさん、死ぬなんて言わないでください。犯罪ではない仕事をしているのなら、立派じゃないですか。そもそも、プラスさんは緑色の勇者ですし、日ごろから頑張っているはずです。僕は避妊具や男性器の模造品を作っているからと言ってプラスさんを嫌ったりしませんし、逆に何で醜態になるのかわかりません。その品が他の人の役に立つのなら、誇っていいじゃないですか。剣を作っている人と避妊具を作っている人で何が違うんですか?」


「うぅ……。な、なんか、キース君って他の人とずれてる?」


「まあ、キースさんは感性が色々おかしいです」


「そうね。キースはやっぱりバカなのよ」


 ミルは優しく言ってくれたが、シトラは一直線に突き刺してきた。


「はぁ……。死ぬかと思った……。まあ、バカ弟子。元勇者からの助言をする。勇者になってしまったらそう簡単に結婚出来ないぞ。特に女は難しい。なんせ、そこら辺の男より断然強いからな。男は自分より強い女と結婚したがらない。勇者の中で最弱といっても、他の者に比べたらプラスは強いからな。結婚相手を探すのは苦労するぞ。あっという間に四八歳未婚になっているかもな~」


「い、嫌ぁあああ~っ!」


 プラスさんは両手を頭に当て、悪夢を見るかのような叫び声をあげていた。ほんと、面白い方だな……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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