ウィリディス領に寄付
「アイクさん達は元気かな……。『赤色のルベウス』さん達も……」
「どうでしょうね。でも、アイクさんは今日も今日とて激安の大盛り料理を作っているに違いありません。あの人が仕事を休むなんて滅多にありませんから」
「はは、そうだね。僕達も頑張って仕事をしようか」
「はい!」
ミルは元気よく返事してくれた。
僕達はウィリディスギルドに移動し、花のマンドラゴラではなく、領土内に生えているマンドラゴラを駆除する依頼を受けた。
「え……。キースさん、この依頼を受けるんですか?」
受付の女性は僕がいつもと違う依頼を持って来たからか、動揺していた。
「はい。街中のマンドラゴラをできる限り駆除すると言う依頼ですよね」
「え、えっと、この依頼は周りに人がいる状況下での依頼で、最悪、死者が出るかもしれません。そうなった場合、キースさん達に損害賠償や実刑判決が下される可能性があります。それでもやりますか?」
どうやら、ギルドの受付さんは僕達が犯罪しないように心配してくれているらしい。
「安心してください。出来る限り、除去してきます」
僕は街中に生えているマンドラゴラを駆除していく。
森の中に生えている品より小さく、叫びの威力は同じく弱い。だが、危険に変わりないそう。
放っておくと普通に大きくなり、致死性が増す。出来る限り駆除して回る。ただ、小さい個体は報酬がいつもより少なくなってしまう。そんなことはどうでもいい。
僕達はマンドラゴラの被害を少しでも減らすために働いた。
ミルがマンドラゴラを見つけ、僕が駆除していくと言う連携作業を続ける。『無音』によってマンドラゴラの声が出なくなり、仮死状態に容易に持って行けた。
朝から昼までマンドラゴラをかたっぱしから駆除し続け、昼食を得てからいったん休憩。
一時間経ったらすぐに駆除を再開する。五八カ所ある地域の内、一カ所の範囲のマンドラゴラを全て取り除いた。
「良し、後、五七カ所回れば領土内のマンドラゴラは結構駆除できそうだね」
「もう、一カ所の地域だけでもマンドラゴラが大量すぎて持つのが大変ですけどね……」
僕達はマンドラゴラを大量に駆除した後、ウィリディスギルドに移動し、大小さまざまなマンドラゴラを提出した。
作業中に起きた事故は一回もなく、完璧な仕事ぶりだった。
鍛錬や勉強が出来ないのが残念だが、朝と夜にすれば問題ない。
「す、すごすぎて言葉が出ないんですが……。え、えっと、なんでいきなり領土内のマンドラゴラの駆除をしようと思ったんですか? 他領から来た冒険者さんですよね。わざわざウィリディス領のために危険を冒してまで……」
「簡単に言えば、僕はウィリディス領が好きだからです。妻たちも雰囲気がすごく好きだと言っているので、住みやすい領土にしたいなと思って行うことにしました。あと、このマンドラゴラの報酬は半分だけもらえますか?」
「は、半分ですか?」
受付の女性は僕の発言を繰り返した。
「はい。半分です。残りの半分はウィリディスギルドに寄付します。ウィリディス領には多額の借金があると聞いて、僕達に何か出来ないかと思って……。半分は妻の取り分で、もう半分は僕の報酬なので、僕のぶんを全て寄付します」
「…………」
受付の女性は某全としていた。数分茫然としていた後、はっと動き出し、仕事を進める。
「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!」
ウィリディスギルドのギルドマスターであるベルデさんが頭を何度も何度もさげて感謝して来た。
「気にしないでください。僕はお金に頓着しないので」
僕はミル分の報酬を貰い、午後五時に家に帰った。
「はあっ! おらあっ! せいやあっ!」
「ふっ! はっ! やっ!」
家の庭で大きな声を出し、シトラとプラスさんが戦い合っていた。拳と剣で戦っており、シトラの拳がプラスさんに打ち込まれる
「くっ!」
プラスさんは吹っ飛び、地面を何度も転がった。
だが、立ち上がり、シトラに再度立ち向かっていく。その姿は朝に見た根性がないプラスさんと別人で、何度も立ち向かっていく姿はまさに勇者だった。
ただ、魔法を使っていないプラスさんはただの女性と何ら変わりがなく、シトラにボコボコに殴られていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。うぅ……。私、魔法を使わなかったら、こんなに弱いんだ」
プラスさんは自分の実力を再確認し、身動きが取れなくなった状態で呟いた。
「ふぅ……。丁度、キース達が返ってきたわね」
シトラは拳を納め、僕達の方を見た。
「シトラ、プラスさん、お疲れ様」
「お帰りなさい。今日は、いつもより遅かったわね。何かあったの?」
「聞いてくださいよ、シトラさん! キースさんが多額のお金をギルドにまた寄付していました!」
ミルは僕が寄付しようとした時に反対してきた。家に帰って来て早々に鬱憤をシトラに呟き、発散しているのか……。
「またぁー。もう。なんで、そう毎回毎回寄付するかな。寄付する必要あると思えないんだけど」
シトラは首を傾げ、手を腰に当てていた。
「まあまあ、僕がしたいと思ったから寄付したんだ。ウィリディス領は良い領土だからさ、消えてほしくないなって思った。それだけだよ」
「まあ、キースが良いなら私は何も言わないわ」
シトラはミルの鬱憤を受け止め、僕の話しを納得してくれた。やはりシトラは何でも出来て凄い。
「う、うぅん……。こ、こんな鍛錬を毎日続けていたら私の顔が変形しちゃいます……」
殴られ過ぎて、顔がパンパンになっているプラスさんは無理やり立ち上がり、僕達の元にやって来た。両手に緑色の魔力を出し、自分の顔にヒールを掛け、しっかりと治療した。
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