強くなりたい気持ち
「シトラ、プラスさんをお風呂に入れてあげて。怖すぎて漏らしちゃったみたい」
「はぁ……。なさけない勇者さんね……」
シトラは何だかんだ言いながらプラスさんを抱き上げ、お風呂場に向かった。
「ふわぁ~。いやぁ~、今日は森の木々たちが異様に元気が良く見えますね」
ミルは森の景色を見ながら大きなあくびをした。僕が放った大量の無色の魔力を吸い、森の植物たちが大変喜んでいる。……ように見えるだけだ。実際、どうかわからない。
僕は外にある池で水浴びして、掻いた汗を綺麗さっぱり流した。
「『無限』対象、体の表面と水」
僕は体を拭いて乾かすのが面倒だったので『無限』で体に付着した水を一瞬で弾いた。
「良し。戻るか」
僕は屋敷の中に戻った。
「うぅ、うぅぅう……」
僕が家の中に戻ると、シトラのブラジャーと下着をつけたプラスさんがシトラの太ももに顔を埋めて泣いていた。
「よしよし、良い子良い子」
シトラはプラスさんの頭を撫でながら母性を醸し出している。
僕もシトラに良い子良い子してもらいたいなんて言う悶々とした気分でいたらプラスさんが泣き止み、顔をあげる。
僕の姿を見て恐怖し、すぐにシトラの背中に隠れた。
――あぁ、めっちゃ怖がられちゃってるぅ。どうしよう。クルス君よりも教えるのが難しそうだ。やっぱりクルス君は優秀だったのかな。はたまた根性があったのか。
「キースさん酷いですぅっ。私、私ぃ。ものすごく弱いのに、あんな厳しい練習を初っ端からするなんてぇっ。もう、辛くて辛くて死んじゃうかと思いましたぁっ!」
プラスさんは泣きながら僕に大きな声で叫ぶ。
「すみませんが、強くなるのに泣き言なんていりません。あと言ったじゃないですか。辛いですよって。それでも覚悟を決めて来たプラスさんを凄いと思いますし、最後まで走り切ったんですから自分を褒めてあげてください」
「じ、自分を褒める……」
プラスさんは泣き止み、ペタンコ座りしながら自分の手を頭に乗せる。
「うぅ、よしよし、私、よく頑張ったねぇ。あんな辛いことよく頑張ったねぇ」
プラスさんはお婆ちゃんのような口調で、自分を褒めた。よく褒めてくれた相手がお婆ちゃんだったのかな。まあ、褒め方は何でもいいか。
「えっとプラスさん。自分を褒めているところ悪いんですけど、服を着てもらえませんか?」
「へ……。わぁああ~っ!」
プラスさんは自分の恰好がブラジャーとパンティーだと気づき、身を丸めるようにして素肌を隠した。いったんシトラの服を着る。
プラスさんの服はシトラが洗濯し、今、外に干したので一日経てば乾くだろう。
「はぁ……。私、やっぱり勇者なんて向いてないんですよ……。もう、くじけそうです……」
プラスさんの根性は六歳児のクルス君よりもなかった。そのため、鍛錬のやり方を少し変えた方がいいかもしれない。
「プラスさんの根性が結構無いと言うことがわかったので、鍛錬の方法を少し変えます。本当は体力作りから戦闘の鍛錬をすると言うのがいいと思うんですけど、プラスさんの場合は体力作りの鍛錬で挫折しそうなので、初っ端から戦闘の鍛錬をします。相手はシトラが良いですかね。丁度ライアンと戦い方が同じなので、ライアンの手加減した状態と同じくらいの相手のはずですから、毎日勇者順位戦の初戦だと思って戦ってください」
「私の鍛錬にもなるし、丁度良いわね」
シトラは結構乗り気だった。
「うぅ……。あの初戦は今でも夢に見るくらいなんですけど……」
プラスさんはしり込みしていた。潜在能力は高いのに、根性がへなちょこすぎて自分の本領が発揮できてないらしい。
「プラスさん。暇があればシトラと戦ってください。朝、昼、晩、いつでもいいです。最低一日一回、全力を出し切るまで行ってください。その際、魔法は使わないように。専用武器の使用は許します。八日に一回はお休みにしますから、一緒に頑張っていきましょう」
「うぅ……。はい……」
プラスさんは頭を縦に動かし、僕の話を了承した。
僕達は一緒にテーブルを囲み、朝食にする。
「うわぁ~。シトラさんが料理を全部作ったんですか」
プラスさんはテーブルに並んだ料理を見て目を輝かせている。サイコロステーキ、ソーセージ、肉と野菜炒めなどが山盛りになっている。
「はい。お口に合うかわかりませんが、肉多めの料理にしました。お替りもあるので、沢山食べてください」
「ありがとうございます。いただきます!」
プラスさんは両手を握り合わせ、神に感謝した後、料理をモグモグと食し始めた。鍛錬の後は食べる。これもアイクさんから教えてもらった強くなるための秘訣だ。大盛り料理をしっかりと食してもらい、体力をつけてもらう。
「うまぃいっ!」
プラスさんの口にシトラの料理は合ったようだ。妻の料理をおいしいと言って食べてくれるお客さんがいるのは何とも言えない高揚感がある。
「じゃあ、僕とミルは仕事に行ってきます。プラスさんも時間を見計らってここに来てください。いつでも歓迎します」
「はい! 美味しい料理を食べたら元気になりました! シトラさんと一戦して行こうと思います!」
プラスさんは握り拳を作り、やる気をみなぎらせていた。身体の回復は早いみたいだ。
僕とミルはウィリディスギルドに向かう。
「キースさん。緑色の勇者を強くしてどうするんですか?」
ミルは僕に訊いてきた。
「どうもこうもしないよ。強くなりたいと言うのは誰もが持つ気持ちだ。僕は手助けするだけ。まあ、言うなればアイクさんみたいなことをしているだけだよ。アイクさんは僕の人生で一番憧れている人だから、僕もあんなカッコいい大人になりたいなと思って」
「なるほどー。アイクさんの真似事だったんですね。でも、確かにアイクさんはカッコいい男性でしたね。心が熱かったですし、優しかったです。アイクさんとなら、一緒にお風呂に入れちゃいましたからね」
ミルはアイクさんを思い出し、微笑みを浮かべていた。
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