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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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魔法を使わずに己を鍛える

「アルブ、シトラにずっとついていてほしい。もし、僕が近くにいない時にアルラウネが現れたらシトラを守って。ミルは僕が守る」


「きゃぁ~! キースさん、カッコイイ~!」


 ミルは高い声を発しながら僕に抱き着いてくる。


「わかりました。シトラさん、何かあれば耳に入る音を消します」


 アルブは僕の肩からシトラの腕に向って飛んだ。


「ええ、お願いね」


 シトラはアルブの頭を撫で、微笑みかける。


 僕達は学園から出て家に帰った。

 夕食を得てからお風呂に入り、シトラとミルを寝かせた後、僕は勉強をしながらフルーファとアダマスを振るった。


 アルラウネがいつ来るかわからない。もしかしたら誰もが寝静まった夜かもしれない。そんな恐怖を感じながら眠る者達を僕なら少なからず守れるかもしれない。

 かもしれないと言う想像ばかりだが、その時が来た時のために今はただただ鍛錬を続ける。

 僕がアダマスを振るっていると、一人の女性が白い冒険着を着た状態で山を登って着ていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お、おはようございます」


 緑色の髪を後頭部でまとめ、ポニーテールを作っているプラスさんが頭を下げてきた。


「おはようございます。覚悟は決まったんですね」


「はい。私はやっぱり強くなりたいです!」


 プラスさんはコクリと頷き、強くなる覚悟を決めてきた。


「じゃあ、その覚悟を教えてもらってもいいですか」


「私は、強くなって領土の皆を守りたい。強くなって勇者順位戦で上位に入り、経済を回復させたい。誰からも認められる緑色の勇者になりたい!」


 プラスさんは僕の目の前で大きく叫び、強くなりたいと言う気持ちを伝えてくれた。


「わかりました。じゃあ、強くなりましょう。僕も初めは弱かった。何も抵抗できず、大切な者を奪われ、追い出され、殺されかけた。でも、師匠に会って力とは何かを教わって今、生きています。僕が師匠から教わった。強くなる神髄をプラスさんにも教えます」


「は、はい!」


 プラスさんは背筋を伸ばし、胸を張る。


「魔法に頼らず、己を鍛えろ、です」


「魔法に頼らず、己を鍛えろ……」


 プラスさんは目を丸くし、僕の発言を繰り返した。


「はい。それが僕の師匠から教わった全てです。それ以上でも以下でもない。魔法に頼らず、己を鍛える。それだけです。ただ、それだけ言っても意味がわからないと思うので、とりあえず走りましょうか」


「とりあえず走る……」


 プラスさんは苦笑いを浮かべながら目をぴくぴくさせていた。


 僕はプラスさんを連れて森の中を全力で走る。


「はぁ、はぁ、はぁ……。な、なにあれ。どうなっているの。もう、人間の動きじゃないよ」


「プラスさん、もう、一〇週の差が付いていますよ。沢山走って体力を付けます。無理やりついて来てください」


 僕はプラスの横を通り、森の中を駆けまわる。自然の障害物を一瞬で見極めて最短距離で全力疾走をした。


 一時間ほど走っていると。


「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ、はぁ、あはぁ……」


 プラスさんは瞳孔が上を向き、背筋が曲り切って大変辛そうな表情を見せている。だが、もっと走ってもらう。

 僕だって弱い時は走っている途中に嘔吐して気絶しても、無理やり走ったのだ。


「頑張ってください。プラスさん。あなたは緑色の勇者なんですよね。さっき、領土の皆を守りたいって言ったのは嘘ですか? 強くなって皆に認められたいんじゃなかったんですか? 死ぬ気で走ってください」


 僕は覚悟を決めて来たと言うプラスさんに向って結構きつめの鍛錬を強要した。

 前、クルス君を指導した時よりも明らかに厳しくしている。なんせ、相手は六歳児ではなくすでに成人している緑色の勇者だ。初めからこれくらいこなしてもらわないと勇者順位戦で上位に食い込むことは多分出来ない。


「グぇえええ……」


 プラスさんは走っている途中に倒れ、四つん這いで嘔吐した。森の養分になるので問題ないだろう。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ひ、ヒール……」


 プラスさんは自分の胸に手を当てて回復魔法を使おうとした。僕は言ったはずだ『魔法に頼らず、己を鍛える』と。


 プラスさんの背中に手を当て、緑色の魔力を吸い取る。


「あ、あれ……。ま、魔法が発動しない……」


「プラスさん。言いましたよね。魔法は使ってはいけません」


「う、嘘……。こ、こんな状況になっても……」


「僕が言っているのは己で魔法を使ってはいけないと言うことです。何かあれば僕がプラスさんの魔力を使って回復してあげますから、安心してください」


 僕の体の中に、プラスさんの緑色の魔力が含まれているので、回復魔法が使えるようになっていた。


「わ、わけわかんない……。く、狂っていますよ……」


 プラスさんはプルプル震える脚で無理やり立ち上がる。


「立てたじゃないですか。ほら、走るだけです。魔法を使わずに、己を鍛えるだけ。とても質素で効率がいい。プラスさんは僕に話しを聞けばすぐに強くなれるとでも思っていましたか? 残念ですけど、すぐに強くなる方法なんて存在しませんよ。地道な努力以外に強くなる近道はありません。ほらほら、早く走ってください。巨大なドラゴンに襲われているとでも思って」


 僕は大量の無色の魔力を放出し、プラスさんを威圧する。


「くうううっ! うわあああああああああああああああああっ! 化け物っ!」


 プラスさんは大泣きしながら僕から逃げるように走る。


「はは……。化け物とはひどい言い方ですね。でも、まだまだ走れそうで何よりです」


 僕はプラスさんを威圧しながら追いかける。

 ざっと一時間が過ぎ、プラスさんは限界を迎えたのか、森の中でばたりと倒れた。衣服の下半身がビチャビチャに濡れており、どうも漏らしている模様。


「す、少しやりすぎたかな……」


 僕はちょっとした罪悪感に苛まれるも全力を出し切ったプラスさんを抱きかかえ、家に戻る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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