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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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ウィリディス領の実態

「大量の借金……」


「アルラウネが襲来してから家畜は育てられなくなった……。広い土地のそこら中にマンドラゴラが生えてるからな。取れりゃ大金だが、簡単に取れる方法は未だに見つかっていない。雑草みたいに市街地にも生える始末だ。駆除するために緑色の勇者が動いているが手が回るわけがない。大金を払って駆除業者にお願いするしかない。薬草は施設栽培になり、農業は縮小、唯一残っていたのが観光業だが……他領の者を入れると言うことは犯罪が増えると言うこと」


 僕は魔力の放出を止め、学園長の話をしっかりと聞く。

 悪い人は初めから悪い人じゃなかった。何か影響があって悪い人になったのだ。きっとこの学園長も今は悪だが、昔は善人だったはず。だって、先生になりたいなんて善人の考えでしかないじゃないか。


「ウィリディス領の経済は破綻しかけている……。一年前の時点でとっくに限界だったんだ。そこにビオレータ王女殿下の政策が入った。多額の借金を無理やり背負わされたが一年は持った。ただ、その借金の利子と前から借りていた金の利子。すべての借金は領民で働いている者達の税金から出される……。働いても働いても返せる額じゃない……。そんな状況で他の領土の子供の面倒が見れるか!」


 学園長は握り拳を作り僕に殴り掛かって来た。


 僕は片手で止め、軽くひねる。


「いだだだだだっ!」


 学園長に実力行使をするだけの力は無かった。


「……はぁ。この問題はこの学園の制度を変えるだけじゃどうしようもなさそうですね」


 僕は学園長の手首を掴み『無傷』で治療した。


「だからと言って子供達に対価を払わないのは犯罪です。今までもずっと払っていないんですよね。それが知られたら学園長は首でしょう。そうなりたくなかったら明日からでも子供達にお金をあげてください。時間をかけてお金を稼いでいる子共たちにとって勉強よりもお金の方が今は大事なんです」


「ちっ……」


 学園長は立ち上がり、椅子にドカッと座った。


「ウィリディス領はもう終わりだ。またアルラウネが来るなんて言う噂もある。今更子供達に金を払ったところで大量の死者が出て崩壊するんだよ。今の緑色の勇者じゃアルラウネに勝てるわけがない……」


 学園長は二〇年前のアルラウネ襲来を経験しているのか、葉巻を吸う回数が増えていた。指先が震え、顔が青くなっているように見える。


「学園長はアルラウネを見た覚えがあるんですか?」


「ああ……。二〇年前、私が四〇歳ごろの時だ……。忘れもしない。領土の西側から化け物の叫び声が聞こえたあの時のことを……」


 学園長は顔面を蒼白させ、嘔吐した。


「はぁ、はぁ、はぁ……。未だに思い出しただけで……このざまだ。耳鳴り頭痛、吐き気。耐性が無い者は何百キロ離れた場所で叫び声を聞いただけで気分が悪くなる。すぐに耳を塞ぐように指示を出したが、耐性がない子共は失神し、脱糞、失禁で泡まで吐いていた。ほんとこの世の終わりだと思った……。うぐぅっ」


 学園長はまたしても吐いた。


 僕は持っていた精神安定薬を学園長に渡す。


「たく……。持ってるならさっさと出しやがれ」


 学園長は僕が渡した薬を飲み、少し落ち着いた。やはり、精神安定薬の効果は本物のようだ。


「忠告しておいてやる……。さっさと王都に帰んな。ギルドがアルラウネの襲撃時、叫び声を叫び声で相殺するなんて言う装置を持っているから安心しろなんて言っていたが、あれは二〇年前の品だ……。対して技術は発展していない……。なんせ、技術を発展させるための金はないからな。はっ、全く馬鹿らしい……。耳栓でどうにかなるわけないだろうに」


 学園長は葉巻を吸いながら仕事机の上に乗ってある一枚の絵を見る。


「孫が描いた絵だ……。画伯だろ。まあ、娘ともども二〇年前に死んだがな……。今でも捨てられずに残ってるんだ……」


 学園長は額縁に入れられた小さな絵を見せてくる。


「アルラウネの影響ですか?」


「ああ……。アルラウネの声を近くで聞いていたんだ。当時の緑色の勇者曰く、即死だったそうだ」


「そうですか。確かに悲しい話しですが、今はその話をしていません。話しをすり替えないでください。そもそも、二〇年前のその絵が本物かどうかも怪しいですし、悪人の言葉は信用できません」


「ちっ、無駄に用心深い奴だな。まあ、今の話しが本当か嘘かどうかはどうでもいい。だが、忠告はしたぞ。この地にアルラウネが現れて声を聴いた瞬間に即死しても知らないからな」


「用心しますよ。逆に、学園長も死なないように気を付けてくださいね。死人では犯罪行為を話せませんから」


 僕は学園長に頭を下げ、部屋を出ていく。扉を閉めた。


「キース、どうだった?」


 シトラは僕のもとに近寄って来た。


「どうも、僕達が思っているよりもウィリディス領は深刻な問題を抱えているらしい。今、他の領土から来た子供達の面倒を見れるだけの余裕はないんだってさ」


「なにそれ。ただの言い訳じゃない。そんな話を聞かされておめおめと戻ってきたの」


「本当か嘘かわからない。一応、子供達にお金を払うようにお願いした。あと、これは犯罪だからもし、次にこのようなことがあったら犯罪だとして報告する。そう言う口約束をした」


「はぁ……。お人よしね……。力で捻ってやればよかったのに」


「力で解決できる問題じゃなさそうなんだよ。複雑に絡み合って今のウィリディス領がある。もう、限界はすでに超えているらしい。観光業でギリギリ成り立っているんだって」


「……そこまで?」


 シトラは苦笑いを浮かべた。


「もう、ルフス領とどっこいどっこいじゃないですか。いや、ルフス領の方が税金が低くてマシですかね? いやぁ、食事があるこっちの方がましですかね……」


 ミルは腕を組みながら考え込んでいた。どっちがマシとか、そう言う話ではない。


「ルフス領は僕達が倒したブラックワイバーンのおかげで借金が帳消しになった。なら、ウィリディス領でも同じように借金を帳消しにできるだけのお金を儲ければいい。最大の危機は最大の好機。全く持ってその通りだ」


 僕はアイクさんに教えてもらったことを再度思い出す。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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