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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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学園の勉強

「こっちね」


 シトラはプラータちゃんの匂いを嗅ぎつけたらしく、歩きだした。やって来た場所はウィリディス領にある学園だった。


「……」


 茂みから学園の中を除くと庭に植えられた大量の草花を手入れしているプラータちゃんの姿があった。そのまま見続けていると、庭や園舎、トイレの掃除もこなしている。


「プラータちゃん、滅茶苦茶働き者です……。周りに他の生徒がいるのに……」


 ミルは目が悪いが、耳で何となく状況を察していた。


「丁寧な仕事ぶりね。メイドに向いているわ……」


 シトラは耳と尻尾を立たせている。


「でも、やっぱり元気が無いよ……。打算的に仕事をしているみたいだ。好きな花に触れている時もため息ばかりついてる。疲れているのかな」


 僕達はプラータちゃんの仕事ぶりを見ながらずーっと身を隠していた。多くの学生が帰り、日が落ち始めてきた午後六時頃。


「プラータちゃん、仕事は終わったかな~」


 教師っぽい服装をした緑髪の若い男性がプラータちゃんの近くにより、話し掛ける。


「は、はい。終わりました」


 プラータちゃんは視線を下に向け、少々怯えるように呟く。


「そう~。じゃあ、特別授業を開くから教室に来るようにね」


「はい……」


「どうしたの、今日はいつもより元気ないね~。昨日も元気がなかったけど、何かったの?」


「いえ、別に大したことじゃないので……」


 プラータちゃんと教師は教室に入って行った。他の場所からも学園で仕事をしていたプラータちゃんと同い年くらいの子達が教室に入って行く。


「長時間仕事をさせてから勉強を教えるのか。対価の代わりに勉強を教えるって感じかな」


「そうですね……。無料で教えるって言ったら聞こえはいいですけど、労働させてから勉強を教えるって言ったらなんか、聞こえが悪いです」


 ミルは目を細める。


「まあ無料は一番恐ろしいって言うし労働と勉強の対価が等しければいればいいんだけど」


 シトラも目を細め、勉強の内容が気になる様子だった。


「潜入しようか」


 僕はシトラとミルの手を繋ぎ『無視』を使って学園の内部に侵入する。


 プラータちゃんが入って行った部屋の前にやってくるも扉が閉まっているので、開けて入ることはできない。


 隙間から内部を除けないか試みる。


「じゃあ、ここの計算問題を解いてみようか~。解けなかったら掃除の報酬は割り引くからね~。ちゃんと勉強していれば解けるはずだよ」


 学園の先生らしき者が黒板に問題を書き、子供達に解かせている。だが、解けなかったら報酬を割引くなんて。


 問題の内容は初等部程度だった。だが、手が止まっている者が多い。ちゃんと勉強していないからか。はたまた、教えられていないからか……。


「じゃあ、プラータちゃん、問題は解けたかな?」


「と、解けませんでした……」


「そうー。じゃあ、一時間分の報酬は無かったことになるから。他の子にも聞いてみるか」


 先生らしき者は別の子供にも聞いた。だが、その子も答えられなかった。先生は全員に聞いて回るが、誰も解けていなかった。


「なに、誰も解けないの? はぁー、全然勉強していないんだね。全員報酬は一時間分無しね。せっかく勉強したのに忘れたら何も意味がないでしょ。やっぱり他領の子供は頭が悪い。こんな簡単な計算もまともに出来ないなんて。じゃ、次の問題に行くよー」


 先生らしき者は問題の解説もせず、次の問題に移り、またもや問題を子供達に解かせ、間違ったら仕事の報酬を減らした。

 頭の血管が切れそうになるのをこらえながら、僕は授業が終わるのを待つ。


 授業が始まってから一時間が経った。


「はぁー。誰も勉強していないんじゃ、授業しても意味がないね。全員の報酬も全部無くなっちゃったし、今日はこれでおしまい。明日までにちゃんと勉強してくるように」


 先生らしき者は黒板に問題を書くだけ書いて何も解説することなく教室を出て行った。


「……うぅ、学園ってこんな場所だったのかな。僕達何のために働いているんだろう」


「問題が全然解けない……。勉強って何をしたらいいの」


「先生、またなにも教えてくれなかった。僕達がバカだからかな……」


「こんなの全然楽しくないよ……。こんなことならお金が貰える仕事の方がましだよ……」


 子供達は扉から出ていき、それぞれ帰っていく。


「プラータちゃん、なにを書いているの……」


 子供の一人が教室の前の席で座っているプラータちゃんに話し掛けた。


「今度、問題の答えをプラスさんに訊いてくる。プラスさんなら答えてくれるはずだよ」


「でも、自分で考えるのが勉強だって教えてもらったじゃん」


「自分で考えてもわからないんじゃ意味ないでしょ……。私は少しでも頭が良くなってお花屋さんになるの。私を助けてくれた人との約束なの。ルフス領じゃ、仕事をしても毎日料理が食べられなくて勉強なんて出来なかった。でも、ここなら温かい料理が食べられるから、勉強できる……」


「なんで、そんなに頑張れるの……。もう、掃除だけで疲れて勉強どころじゃないよ……」


「昨日、私を助けてくれた人に会ったの。助けられてから二年も経っていないのにその人は宣言したことを叶えてた。二年前と雰囲気が全然違ったけど、心は全然変わってなくて凄い努力したんだなってわかって……。私、恥ずかしかった。なにがシトラさんに負けないだ。お腹が空かない暮らしが出来て満足しちゃってた。だから私ももっと頑張ろうって思ったの」


 プラータちゃんは顔をくしゃくしゃにしながら、つたない文字と数字を紙に書きうつしていた。文字が書けなかったのにプラスさんに教えてもらい書けるようになったのかもしれない。


 プラータちゃんは黒板に書かれた問題を書き写したのち、粉を取る布が付いた道具で綺麗になるまで掃除していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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