度重なる地震
「だ、だめぇ……。か、体に力が入らなくて……。逃げられないのぉ……」
「逃がしたりするもんか。もう、シトラは絶対に逃がさない」
僕は微かな意識の中、シトラをぎゅっと抱きしめる。
「き、キース、もう、これ以上……、焦らさないで……。か、体、熱すぎて……溶けちゃう」
「……わかった」
僕はシトラを放し、体を洗った。
僕が一番に出て、体を乾かしたあとに浴衣を着る。寝室に移動すると赤色の布団が両端に置いてあり、真ん中に紺色の布団が置かれていた。枕元に薬包紙に包まれた品と紙が置かれていた。
「……お酒の飲み過ぎで立ちにくい時に良く効く薬です。夜のお供にどうぞ」
ご丁寧に薬の購入先や作り手などが乗った保証書も付いていた。さすが高級店。
僕は一応毒物かどうか調べるために一つまみ口に含む。苦いが『無毒』で消えることはなかったので安全な品のようだ。
今日は飲み過ぎてしまったので酔い冷ましのつもりで服用する。
「すぅ、はぁ……。なんか、ムカムカがすっきりした感じがする……」
歪んでいた視界は正常に戻った。加えて下半身に血流が向かう。
僕は歯を磨き終えすでに寝る準備が出来ていたので、布団に寝転がる。四つ角に置かれた黄緑色の光を発生させている魔道具が眠気をじんわりと誘って来た。
僕が布団に入ってざっと一五分後。寝室の襖が開く。
「はぁ、はぁ、はぁ……。も、もう、やばいです……。部屋の真ん中にぼくの超カッコよすぎる夫がいるのを見るだけで体が……」
「も、もう、いつも通りでしょ……。さっさといったいった」
ミルの背中をシトラがグイグイと押し込む。両者共に浴衣姿だ。
化粧品の効果か、肌がつるつるで赤子のようにきめ細かい。
シトラとミルは薄い赤色の布団に入る。
「キースさん、今日も楽しかったですね……」
ミルは僕の方を見ながら話し掛けて来た。
「うん。大聖堂に行って神様にしっかりと祈れてよかったよ」
「キースは神に好かれてそうだし、これからも心配いらないわよ」
シトラも僕の方を向き、話し掛けてくる。
「シトラとミルだって神に好かれているはずだよ。じゃなかったらここまで生き残れていないはずだ」
「はは……、それもそうね」
シトラとミルはゆっくりと動き、藍色の布団に入って来た。そのまま僕の腕を掴み、脚を太ももに乗せてくる。すぐに寝かせてもらえるわけじゃなさそうだ。頬にキスしてきたと思ったら僕の体を撫でてくる。
僕も仕返しに撫で返す。
頬のキスから耳に向かい、軽く虐めてくる。
僕の名前を言ったり、好きと言ったり、耳の中がぞわぞわするようにわざと吐息多めの声で呟くのだ。僕がいつもやっているからお返しにしてきているのだろう。
やる気を掻き立てられると二人はすでに準備万端だ。
僕は上半身を起こし、シトラとミルと太ももに座らせる。太ももに熱湯でも掛けられたのかと思うほど熱い何かが付着して浴衣が湿る。淡い光りの中、浴衣が少々はだけている二人を見た。
「はぁ、はぁ、はぁ……。キースさん……」
「はぁ、はぁ、はぁ……。キース……」
「二人共。凄く綺麗だ」
僕は二名の口を塞ぎながら、着崩れた浴衣を二人が怒ってしまいそうなくらいじっくりとはだけさせていく。
準備を短時間で終わらせるより、長時間かけた方が満足度が大きいと知っているので二人がどれだけ急かしてきてもじっくりと可愛がる。
日をまたがず、終わらせることも明日辛くならないようにするためには重要だ。僕が不完全燃焼でも二人が満足してくれたのなら、それで十分。
「ミル、シトラ。可愛がらせてくれてありがとう。凄く楽しい時間だったよ」
「き、キースさんが、女性の扱い方に慣れてきちゃってますぅ……。て、手慣れ過ぎて長時間の可愛がりが本当に生きた心地がしません」
「もう、本当にギリギリを攻めてくるんだから……。私達を知り尽くされちゃっているのよ」
「これでよく眠れるんじゃないかな?」
「はい。朝までぐっすり眠れます。今にも寝ちゃいそうです……」
ミルはうとうとし始める。
「我慢は禁物だから、さっさと寝るわ。キースも早く寝なさいよ……」
シトラは僕の手を握りながら眠る。少しでも僕を感じていたいらしい。
僕はシトラの手を優しく握り、一晩中離す気はない。光を放っていた魔道具は自然に消えた。時間で光り方が変わるのかな。
僕は目を瞑り、しっかりと眠る。次の日に疲れを残さない。
何時頃だろうか。身が揺すられる。
「う、うぅん……」
僕は目を覚まし、シトラとミルが体にくっ付いているとわかった。
「き、キース。ま、また、揺れてる……」
シトラは尻尾を丸め、恐怖していた。
「な、なんか、地震が多くないですか……。何でこんなに地震が起こるんですか……」
ミルも身を震わせ、僕から離れようとしない。
「安心して二人共。たとえ、大きな地震が起こっても僕が二人を守る。魔物や勇者に攻撃されるのと比べたら、地面が揺れる地震なんて大した攻撃じゃないよ」
「そ、そうは言っても……」
シトラ達は獣族なので感覚が鋭く、刺激を敏感に受け取ってしまう。戦いの時に有利な能力だが、日常生活では少々感じすぎてしまうため、辛そうだ。
「はぁ、せっかくいい気分で寝ていたのに……」
「そうね……。もう、さっきと同じ感覚で寝付けないわ」
ミルとシトラは互いにため息をつき、地震の恐怖に震える。
「二人共、僕が絶対に守るから安心して。なにがあっても守る」
僕はミルとシトラを優しく撫でる。
「はわわ……。凄い、一瞬で安心感が……」
ミルはすぴーっと眠り始めた。
「そ、そうね……。もう、眠たくなってきちゃった……」
シトラもグーっと眠った。
「よかった」
僕は二人が眠ったのを見たあと、瞑想をしながら起きていた。
朝日が昇って来た頃、僕は立ち上がり、日の光を浴びる。地震が再度発生することはなく、運が悪かっただけだと考える。不確定なことに恐怖しているのは精神を疲れさせてしまうのでやめておいた方がいい。もちろん、頭の片隅に情報はあるので、ぱっと思い出して行動できるはずだ。
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