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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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春の日

「えっと、危険なことに簡単に首を突っ込んでごめん。とりあえず謝っておく。シトラとミルが僕のことを心配してくれて物凄く嬉しい。ありがとう。だからこそ、僕はシトラとミルの夫に恥じない生き方をしたい。助けを求める者を見殺しにするような人間に成り下がる気はない。二人の妻を残して死ぬなんて罰当たりな夫になる気も無いよ。だから、安心して」


 僕は膝立ちになっているシトラの頭を撫で、ギュッと抱きしめる。


「まったく……。人が良すぎるのよ。なんで、最悪な環境で育ったのにそんな性格が良いの」


「うーん、シトラに惚れてほしかったからかな」


 僕ははにかみながら伝える。


「……もぅ、バカ」


 シトラは僕の策略にまんまと嵌り、妻になっていた。


「ぶーぶーぶー、シトラさんばっかりいい思いをしてずるいですー」


 ミルは頬を膨らませ、悪態をついている。ほんと嫉妬深い子なんだから……。

 僕たちはおやつにケーキを食し、少し勉強してから僕とミルはお風呂に入った。シトラはその間に、夕食を作り、僕たちが出た頃にある程度出来上がっており皆でいただく。


 今日買って来た肉を美味しくいただき、シトラはお風呂に入った。僕とミルは食器の後片付けを行い、テーブルで勉強を行う。お風呂から上がったシトラとも一緒に勉強し、午後九時にシトラとミル、アルブは入眠。

 僕は勉強を続け、日が出てくる前に外に出て体を鍛える。


 限界を軽く超えた後、プルウィウス流剣術の基礎を徹底的にやり込む。この動きは多くの筋肉を連動させるので全身を鍛えることができた。


「良し、良い感じだ。アルラウネが出て来ても戦えるように力を少しでも上げるぞ」


 僕はブラックワイバーンに勝てたからと言って驕らない。なんなら、僕は弱いとすら思っている。なんせ、ほとんどアルブの力のおかげだからだ。

 だから、その分沢山努力して力を使いこなせるほどまで身を昇華させる。せっかく力を貸してもらっているんだ。世のため人の為、出来ることを最大限やるぞ。


 僕は出来るだけ多くの鍛錬をこなしたあと、汗をお風呂で流す。だいたいこのくらいでミルがやってくる。案の定、ミルがお風呂場にやって来た。


「キースさん、おはようございます」


 ミルはお湯に浸かり、頭を下げて来た。


「おはよう。今日もいい天気でよかったね」


「はい、雨だと外仕事は最悪ですからね。晴れてくれて嬉しいです」


 ミルは微笑み、僕におはようのキスをしてくる。少しすると、シトラもお風呂に入って来た。


 両者とも寝汗の匂いを気にしているのか、僕がお風呂に入っているとだいたい入ってくる。


「二人共、全然臭くないけど、やっぱり気になるの?」


「そ、そりゃ、気になるかならないかで言えば気になるわよ……。私達は鼻がいいし、無駄に敏感になっちゃうの」


「そ、そうですよ。と言うか、匂いのことを女の子に訊いちゃ駄目です。キースさんも臭いって言われたら嫌ですよね。ま、キースさんは今も超良い匂いです……」


 ミルは僕の体の匂いをスンスンと嗅ぎながらブツブツ言う。


「はは……、僕も二人に臭いと思われたくないからお風呂に入っているんだった」


 僕は反省し、シトラとミルに謝る。

 僕達はお風呂から上がり、パンと卵、サラダ、牛乳と言う朝食を得た。ミルと共に仕事に向かい、今日も花のマンドラゴラを大量に捕獲した。

 あまりにも大量なので恐怖心が湧いてきた。なんせ、広大な『緑の花畑』に視界を埋め尽くさんとする数の花のマンドラゴラがいるのだ。夜になったら地面から出て移動するのか、駆除しても駆除しても集まってくる。


「これだけの数が集まっていたらさすがにアルラウネが出て来てもおかしくないな」


 僕はマンドラゴラが入った麻袋を担ぎ、呟く。


「ほんと、何もしなければ物凄く良い景色なんですけどね……。この花を引っこ抜いただけで死人が出る可能性があると思うと物凄く恐怖です……」


 僕達は花畑を前と同じように見ることが出来なくなっていた。危険な魔物塗れだと考えてしまうからだ。


「僕たちが駆除しつくしたらどうなるんだろう……。花がほとんど咲いていない場所になるのかな。いや、マンドラゴラがいるから多くの花が咲けないのか」


「植物たちが広がる場所にマンドラゴラが移動してくるから、普通の花が軒並み食べられちゃってるみたいですね。許せません」


 ミアは花に擬態したマンドラゴラを睨みつける。


 僕達は三日間連続で花のマンドラゴラを一〇〇本持って行った。ベルデさんはあまりの数に恐怖しており、いつアルラウネが現れてもいいように注意報を出すと言う。

 アルラウネが現れた時、放送で大きな音が鳴るようにするそうだ。同じ音の周波数をぶつけて威力を軽減させると言う対策も取られるらしい。そうでもしないと危険すぎて夜も寝られない。


 四月二六日。

 僕達はウィリディス領の中を観光する。以前の観光がシトラとミルに好評だったので、僕に対する期待が上がってしまっていた。


「キースさん、今日はどこに行くんですか?」


 ミルは以前と違う服装だった。白っぽいフリフリのワンピースを着ている。素足がさらけ出ており、少々きわどい服装だ。彼女は僕に見られて嬉しいそうだけど、僕としては周りから他の男に見られると思うと気が気ではない。


「今日はウィリディス大聖堂に行こうと思う。古い大聖堂だけど凄く魅力があるらしい。多くの者が訪れる観光場所だよ」


「へぇー、大聖堂ね……。私達は信仰してないけど、神様に挨拶でもしに行こうかしら」


「そうだね。僕も神様に色々助けてもらったし、感謝の気持ちを伝えに行こうと思う」


「ぼく、神様なんて信じてませんけど、キースさんが信じているのなら信じることにします」


 ミルは神様に願っても何も良いことが起こらなかったので神様を嫌っていた。神様がいるかどうかわからないけど、いたら良いなと思うので楽しみながら観光する。


 シトラは黄色っぽいロングスカートを履き、春物の薄桃色のセーターを着て、小物が入るショルダーバックを肩に掛けていた。とても春感が強くお洒落だ。


 僕も出来るだけお洒落をする。と言っても黒いズボンに白の長袖シャツに黒のロングコートを羽織っただけの質素な服装だ。

 左腰にアダマスを掛け、なにが起こってもいいように耳栓や精神安定薬が入ったウェストポーチをつけておく。

 左手の薬指に白金の指輪、右手の手首にブラックワイバーンのブレスレットが良い具合に高級感を醸し出していた。同じ革で作ったなんにでも会う革靴を履き、乾かした髪を蝋で固める。


「髭は中々生えてこないな……。髭があった方が僕も大人っぽくなれるのに」


 僕は鏡を見ながら髭が全く生えてこない顎を撫でる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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