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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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危険な仕事

「でも、多くの人が困るのなら戦わないと……」


「はぁ……、キースさんは人が良すぎますよ……。ウィリディスギルドのギルドマスターもキースさんをいいように使っているだけです。キースさんがどれだけ強いから多くの大人はキースさんに無理難題を押し付けてくるんですよ。どれもこれも、キースさんが優しすぎるからです!」


 ミルは僕のことを本当に心配してくれている。だから、そのようなことを言うのだろう。


「ミル。心配してくれてありがとう。でも、困っている人がいたら助ける。それが僕の生き方なんだ。だから、少しだけ付き合ってほしい」


「うぅ……。キースさんが言うなら仕方ないですね……。アルラウネが出たらぼくも手を貸しますよ。でも、死んだら元も子もないので、出来る限りの仕事しかしませんからね」


 ミルはベルデさんの方を向き、腕を組みながら答える。


「は、はい。それで構いません。逆にありがとうございます!」


 ベルデさんは頭を下げ、ミルに感謝していた。


「えっと、今すぐに花のマンドラゴラを調べさせていただきます」


 ベルデさんは僕たちが討伐してきたマンドラゴラを査定していった。


「一本金貨一五枚で買い取らせていただきます。一〇〇本ありますので金貨一五〇〇枚になりますから、こちら大金貨一五枚をお受け取りください」


 ベルデさんは黒い板に大金貨一五枚置き、僕に差し出して来た。声を出させないようにして引っこ抜くと言う作業をしてこの大金を手に入れられるとなると、本来は相当危険な依頼なんだな。


「キースさんは需要があるのに誰も出来ない依頼をするのが本当に得意ですよね。そのおかげでぼくたちは儲けられるので万々歳ですけどね」


 ミルは大金貨七枚を僕から受け取り、ウハウハ気分になっていた。


「花のマンドラゴラを採取していれば、シトラが使った土地代があっと言う間に稼げてしまう……。えっと、マンドラゴラってなんでこんなに高額なんですか?」


「天然物は効き目が段違いなんです。魔素が減っていた去年までは全く取れませんでしたし、もともと手に入りにくい素材です。マンドラゴラで一攫千金を狙う者もいますが、絶叫を聞いて大概死にます。耳栓をつけていても天然物の声を聴くと吐き気やめまい、頭痛、重度の倦怠感に襲われ、魔法の効果が利きませんから緑の勇者などの特段マンドラゴラの声に耐性を持った者しか採取出来ないんです。マンドラゴラ採取は緑の勇者採用試験で行われるくらいですからね」


 ベルデさんは丁寧に説明してくれた。まあ、簡単に言えば、取る人が少ないから高いと言うことだ。


「じゃあ、この金額を貰っても文句は言われないってことですか?」


「誰も文句なんて言いませんよ。逆にありがとうございます。重病の患者や、怪我人、長生きしたい者などはお金を厭わず出しますから気にせず受け取ってください」


「そうですか。わかりました。では、失礼します」


 僕はベルデさんに頭を下げた。僕とミルは家に帰る途中、ケーキを買った。思ったよりも大金が手に入ったので、奮発したのだ。お肉も買い、料理に使ってもらおう。


「ただいま」


 僕は扉を開け、家の中に入った。家に着いたのは午後三時頃。


「お帰りなさい。今日は早いわね」


 シトラはメイド服姿で僕たちを出迎える。


「シトラとおやつを食べたいなと思ってさ」


 僕はケーキが入った紙箱をシトラに渡した。


「あら、気が利くじゃない。じゃあ、紅茶を入れるわ」


「あと、これも渡しておくよ」


 僕はシトラの右手に大金貨が八枚入った革袋を渡す。


「ん……。枚数のわりに重い気がする」


 シトラは紙箱をテーブルの上に置き、革袋を開いた。


「ちょ、大金貨じゃないっ!」


 シトラは僕の頭目掛けて革袋をぶん投げた。


 僕の頭に当たり、血が出そうなくらい痛い……。


「もう、毎回毎回、僕の頭を狙わないでよ……」


「ご、ごめん。驚くとつい」


 シトラは舌を出しながら謝った。まあ、可愛いから許そう。


 僕は甘々なケーキよりも甘く、シトラにめっぽう弱い。


「今回は何でこんなに儲けたの?」


 シトラはおやつの準備を終え、椅子に座って訊いてきた。


「花のマンドラゴラが大量発生していて儲けられたんだよ。まだまだ生えていたから土地代はすぐに回収できそう。でも、マンドラゴラが大量発生していたらアルラウネって言う魔物が現れる前兆らしいんだ」


「あ、アルラウネ……。危険な魔物でしょ。ルフス領の領主邸にいた時、本で読んだ覚えがあるわ。確か、ブラックワイバーンと同じくらい危険な魔物よね?」


「そうみたいだね。ベルデさん。ああ、ベルデさんって言うのはウィリディスギルドのギルドマスターのことね。その方も相当危険だって言っていた。だから、シトラも耳栓を持っていた方がいい。耳が良いから最悪、死んじゃうかもしれない」


「わ、わかったわ。耳栓を常備しておく」


 シトラは顔をこわばらせながら頷いた。


「シトラさん、キースさんはそのアルラウネが出た時に手を貸そうとしているんです」


 ミルは言わなくてもいいことをケーキを食いながら話した。


「え……。ちょ、キース、また危険なことに首を突っ込む気!」


 シトラは椅子から立ちあがり、僕のもとにずかずかとやってくる。


「そ、そりゃあ、困っている人がいたら助けるのが普通でしょ。僕が強くなったのはシトラを助けるためだけど、シトラを助けた今、他の者に力を使ったほうがいいじゃないか」


「キースが何に力を使おうと勝手だけど、キースのことを心配する者がここに最低二人いるの。大好きな夫が危険なことをしようとしていたら妻なら普通止めるでしょ。だって、怪我を負ってほしくないし、死んでほしくないもの。キースがいなくなったら私達の居場所はどこにも無いのよ!」


 シトラは僕の手を握り、少々泣きそうになりながら話す。

 シトラが取り乱すほどアルラウネと言う魔物は危険なようだ。ブラックワイバーンの本のように誇張して書かれている内容を覚えているのかもしれない。

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