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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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心を許してくれている

「お休みなさい、キースさん」


「お休み、キース。夜更かししすぎちゃ駄目よ」


 ミルとシトラは僕に軽くキスしてベッドに横たわる。

 二名が眠ったら僕はベッドから起き、勉強の続きと鍛錬を行った。シトラに夜更かしは駄目だと言われたが、集中するとどうしてもいつの間にか朝になってしまっている。


「ふぅ……。良い朝日が昇って来た」


 僕がフルーファを振るっていると、東側から明るい光を放つ日が昇り、月あかりに照らされていたウィリディス領を輝かせる。


 今は『無休』を使っているため、疲れは全く感じていない。内部に溜まっているので調子が良いのは三日が限界だ。無理をすればいくらでも起きていられるが生産性は著しく落ちる。


 僕は畑の様子を見に行き、状態を確認する。小さな雑草が生えていれば抜くし、乾いていれば水を掛ける。解毒草は土が潤っていないといけないので昨日雨が降っていたがジョーロに水を溜めて大量に与えた。回復草の方は土が湿っているので問題ない。


「よし、畑の方も終了。お風呂に入って服を着替えたら仕事に行かないとな」


 僕はお風呂にお湯を溜め、脱衣所で服を脱いだと朝風呂に入る。


「キースさん、おはようございます」


 素っ裸のミルは元気よく挨拶しながらお風呂場に入ってきて体にかけ湯をした後、僕の隣に飛び込んでくる。水しぶきが大量に舞い、僕の体に掛かった。


「ミル、行儀が悪いよ」


「えへへ、すみません。朝の勢いそのままに飛び込んでしまいました」


 ミルは後頭部に手を置き、微笑む。元気過ぎるのも問題だ。


「キースさん、チュ」


 ミルは僕におはようのキスをして来た。僕も軽く返す。


「もう、ミルちゃん。脱いだ服は洗濯籠にちゃんと入れてよね。いつも散らばってるんだから」


 シトラもお風呂場に入ってきてかけ湯をした後、僕の隣に入る。


「キース、おはよう」


 シトラも軽くキスしてきた。僕もキスをシトラに軽く返す。


 僕達は汗を流すだけなので体を石鹸で洗わず、お風呂場からさっと出た。


 僕はイリスちゃん宛ての手紙を書き、ミルは朝から勉強、シトラは朝食の準備をする。

 料理が出来た頃にアルブが起きてきて、テーブルにちょこんと座ると氷が溶けるようにべたーっとへたり込んだ。


 パンとスープ、サラダ、目玉焼きと言う朝食を得たらフルーファとアダマスを身に着ける。今日は良い天気なので雨具は持って行かず、シトラの見送りと共に家を出た。


 山道を高速で降りてウィリディスギルドまで走る。ここでしっかりと準備運動が出来るので山に家を建てるのは間違っていないかもしれない。


「おはようございます。今日は良い天気ですね」


「あ、キースさん、おはようございます。今日も来てくださってありがとうございます」


 受付の女性は僕に頭を下げ、微笑んでいた。ウィリディス領に住む女性は皆、おしとやかで人相が良い。裏表のない優しい顔をしている。不安がないからこそ、素でいられるのかもしれない。


「今日も薬草採取とマンドラゴラを狩ってきます。構いませんか?」


「はい! 願ったりかなったりです。よろしくお願いいたします」


 受付の女性は物凄く腰が低く、頭を深々と下げた。

 そこまで下げなくてもいいのに……。僕は白髪なので彼女たちにとっては格下に見る相手なんだけどな。


「よし、ミル。今日も仕事を頑張ろう」


「はい、仕事を一杯頑張って頑張って溜めまくった鬱憤をキースさんに可愛がってもらう時に発散します!」


 ミルは元気よく話した。周りに迷惑が掛かりそうなくらいだ。


「鬱憤は溜め過ぎないように。ミルの心が疲れちゃうでしょ」


 僕はミルの鬱憤を晴らさせるために頭を優しく撫で、耳の裏側を掻く。


「あうぅ……、キースさんになでなでされると……、ぼくの鬱憤が一瞬でゼロになっちゃいますぅ……」


 ミルの尻尾はピンと立ち、耳がへたり込む。とても安心感を得ていた。


「よし、十分だね。じゃあ、仕事に行こう」


「はい!」


 ミルは金色の瞳を輝かせ、元気よく返事をする。


 僕たちは『緑の森』に向かい、薬草採取とマンドラゴラの討伐を午前中に終わらせる。

 午後は勉強と鍛錬を行い、時間を有意義に使った。素材をウィリディスギルドに提出し、報酬を貰ったころ、後方から肩を叩かれる。


「はいっ」


 僕が振り向くと、頬に人差し指を当てられた。


「白髪の冒険者さん、こんにちわ」


 僕の背後に立っていたのは緑の勇者であるプラスさんだった。僕にちょっかいを掛けてくるなんて気を許してくれているのだろう。


「プラスさん、こんにちは。どうかしたんですか?」


「いや、ギルドマスターが質のいいマンドラゴラが入ったって言うから取りに来たんです。もしかして白髪の冒険者さんが取って来てくれたんですか?」


「はい、僕たちが取って来ています。マンドラゴラは危険な魔物ですし、僕なら危険なく採取することが出来るので」


「うぅ、ほんと、ありがとうございますっ!」


 プラスさんは僕の手をぎゅっと握り、感謝してきた。


「えっと、感謝されるようなことですかね……」


「もちろんですよ。もう、本当に感謝感激です。マンドラゴラの不快な音を聞かずに済むなんて最高ですよ。えっと白髪の冒険者さんは王城であった方で間違いないですよね? すみません、自信が持てなくて……」


「ちゃんと自己紹介していませんでしたね。僕はキース・ドラグニティと言います。よろしくお願いします」


 僕は跪き、プラスさんに自己紹介しながら手の甲にキスをした。


「あぁっと、私は貴族でも何でもないので気にしないでください。じゃあ、私も自己紹介します。プラス・クーロンと言います。よろしくお願いします」


 プラスさんは僕に頭を下げた。


「はい、よろしくお願いします」


 僕は立ち上がり、頭を下げた。

 プラスさんは受付に移動し、マンドラゴラの素材を受け取ってウィリディスギルドを出ていく。勇者なのにギルドの依頼を受けるわけじゃないようだ。


「ぼく、普通に無視されました……」


 ミルは頬を膨らまし、プラスさんの方を見る。


「まあ、僕と関係ない者だと思ったのかもしれない。マンドラゴラの素材が相当ほしかったんだと思うよ。だから、ミアが眼中に入らなかったんだ」


「集中したら周りが見えなくなる性格なんですかね」


 僕たちはウィリディスギルドを出て家に帰る。お風呂に入って汗や汚れ、疲れを落としたあと、シトラの夕食を得て勉強する。

 ルパとシトラと一緒にベッドに入って二名が眠るまで優しく撫でてあげた後、僕は鍛錬と勉強をする。そんな日々がただただ愛おしい。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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