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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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買われない理由

「に、虹硬貨八枚……」


 シトラは苦笑いを浮かべながら言う。自分でもやっちゃったと思っているような顔だ。


「ふっ!」


 僕はシトラの額に手刀を食らわせる。


「痛い……。うう……。本当は虹硬貨一〇枚するのよ。小屋付きで二割もお得なんだから。あと、売ろうと思えば売れるし、減っているように見えて、実は減ってないみたいな……」


「シトラの謎理論は置いておいて、小屋を見に行こう」


 僕達は小山の上に立っている小屋に到着した。小屋と言う割に大きいし、四部屋くらいありそう。他の場所よりも標高が高いので、ウィリディス領を一望できた。息を飲むほど綺麗な景色が広がっている。


「うわ、この景色は凄いな……」


「でしょでしょ。中も凄いんだから」


 シトラは鍵を使って玄関を開け、中に入る。


 入口は広く、開放的だ。入ってすぐに広間があり、四人用の食卓と椅子が四脚置いてあった。暖炉もあり、冬でも問題ない。窓が広く、庭を見渡せる。なんなら、ウィリディス寮の綺麗な街も見放題だ。城壁の奥も見ようと思えば見れるため、お得感が強い。


「こんな良い景色を見ながら食事ができるなんて最高だね」


「景色は飽きないし、綺麗な風景が見られたら心が落ち着くから良いと思ったの」


 僕は居間から、別の部屋に移動する。

 広い寝室と思われる場所に入ると、大きなベッドが置かれていた。普通に四人以上で寝られそうなくらい大きい。カーテンが閉められており開けると東からの日が一気に入って来た。

 朝、ここで目を冷ましたら気持ちいだろうと優に想像できる。加えてガラス窓が広く、庭に咲いている花々の景色を一望できた。池もあり心が落ち着く。


「なにここ……。景色を見てくださいってお願いされているみたいなんだけど……」


「ここを作った人はウィリディス領が好きすぎて全方位を見渡せる作りになってるの。ウィリディス領自体平坦な土地だからここの標高は八〇メートルくらいだけど、全然見渡せちゃうのよ。周りからは木々が邪魔で見えないようになってる。よく考えられてるわよね」


「ウィリディス領が好きすぎる人が作ったのか……。なっとくするくらい良い場所だね」


 寝室を出てお風呂場に向かうとまたしても広い窓があり、景色が一望できた。西側にあり、落ちていく日を眺めながら穏やかなひと時を過ごせるわけだ。


「一応客室もあるし天井裏もあるわ。星も綺麗だから、見ようと思えば見れるようになってる。凄い手の込みようの家なのに金貨八〇〇枚は安いでしょ!」


 シトラは大きめの声で言う。普通に高い気もするけど……。


「ここの家が買われない理由がわかった。ここの土地代が高すぎて誰も買わなかったんだ」


「正解!」


 シトラは親指と人差し指で丸を作った。


「立地よし、周りの騒音無し、広い庭、広い寝室、防犯はあまり高くないけどキースがいれば問題なし。貴族は無駄に山を登りたくないらしいし、一般使いしにくいっていう理由で買われてない所を私が手に入れたわ!」


 シトラはいい買い物ができたらしく大変喜んでいた。


「家具も全部高級品なのに着けてくれたの。だから買い替える必要もないし、ほぼ新品だから人の匂いも付いてない」


「確かに、誰かが使った形跡がありませんね」


 ミルはベッドの匂いを嗅ぎながら呟く。


「ここを作った方が住む前に亡くなっちゃったんだって。隠居生活を送ろうと思っていたらしいんだけど、持病が悪化したみたい。子供夫婦は手入れが面倒だって言うし、早く手放したかったらしいの。だから、土地を二割引きにしてくれたわけ」


「へぇ、色々な経緯があってここが買えたんだね……。とりあえず、安心して住める場所が見つかってよかった。荒らされていない形跡を見るに、ウィリディス領の人間性があってこその家だね」


「そうね。ルフス領とかだったら普通に森の中に人が良そうだものね……」


「いますね……。無断で入って来た奴を売り飛ばそうとする輩とか、絶対いますよ」


 シトラとミルはブツブツ言いながら表情をこわばらせる。


「じゃあ今日は家の掃除と庭の手入れをしようか」


「そうね。見た目は綺麗だけど、埃は被ってるっぽいし、掃除は必要ね」


「頑張りましょう!」


 シトラとミルは服装を整え、家の中を掃除する。


 僕とアルブは庭の手入れを行った。


「ニクス、倉庫に薬草の種があるみたいだから、栽培してみたら。ウィリディス領では野菜を育てるより薬草を育てる方が一般的らしいわよ」


 シトラは窓を開けて庭にいる僕に話しかけて来た。


「へぇー。なるほどね。やってみようかな……」


 僕は庭に生えていた雑草を抜き、アルブに食べてもらったあと倉庫に向かった。どこかのお金持ちが隠居生活を送るために色々準備していたらしいが使えずじまいだったらしく、本当にもったいない。

 僕がありがたく使わせてもらうので、鎮魂してほしい。


「えっと、薬草の種の種類は回復草と解毒草、解麻痺草、解熱草、あらかたそろってる。日当たりが良い場所に回復草と解熱草でしょ、暗い場所に解毒草と解麻痺草って感じで植えたら良いよね。その前に土を耕さないとな」


 僕は桑を持ち、日差しが良い土地と日差しが悪い土地を見つけ土を耕した。その中に倉庫内に置かれていた薬草用の肥料を混ぜ込んでいく。しっかりと混ぜ込んだら数日待つ必要があるらしい。


 畑を耕しただけなので、特に疲れることもなくいい汗を掻いた。


「ふー。農家になった気分」


 僕は一仕事終え、部屋に戻った。


「あ、キースさん、お疲れさまです」


 ミルは頭に布を巻き、拭き掃除を行っていた。


「シトラとミルもいったん休憩にしよう」


「そうね。ずっと掃除しちゃっていたわ。休憩も大事よね」


 シトラはメイド服で掃除しており、仕事状態に入ってしまっていた。


 僕達はキッチンに置かれていたポットに蛇口をひねって水を入れ、魔石コンロで火にかける。蛇口をひねると地下水がくみ上げられる仕組みがあり、天然水だそうだ。

 山に降った水がろ過されてたまるらしく、無料だと言う。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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