ウィリディスギルド
「キースさん、ウィリディスギルドの依頼がほとんど低いランクしかありません。高ランクの依頼でもCからBランク止まりです」
ミルは掲示板を見て、僕に教えてくれた。
「危険な魔物が寄り付かないのかもしれないね。それか、難易度が高すぎると達成できない可能性があると言うのも考えられる」
「なるほど。じゃあ、ぼくたちはどの依頼にしますか? 護衛とか、薬草採取とか、そんな依頼しかありませんよ」
「薬草採取でいいんじゃないかな。僕の特分野だ」
「ぼくも薬草を見つけるの得意です」
僕達はランクが低い薬草採取の依頼を受けるため、受付に向かう。
「薬草採取の依頼を受けるんですか?」
受付の女性は首を傾げた。
「なにか問題でもあるんですか?」
「いえ……。最近、薬草が全く取れなくなってしまって、薬草不足なんです。今は施設栽培されている薬草が主流なんですけど、効果がいまいちで……。もし、天然の薬草を見つけてきてくれたなら、二倍の報酬をお渡しします」
「なるほど、そう言うことですか。見つけられるように頑張ってきます」
僕は薬草採取の依頼を受け、ミルと共に『緑の森』に向かった。北門から真っ直ぐ上に行くと森のぶつかる。ギルド員の男性に名前を言い、許可をもらった。
「よし、ミル。久しぶりの薬草採取だ。普通の人がいけないような場所を中心に探して行こう。人が寄り付かない場所に薬草は結構生えてる。ミルは鼻で薬草の匂いをかぎ分けて」
「了解です!」
ミルは手をあげ、返事をした。
僕達は冒険者手引きに書かれている群生地を抜け、普段人が立ち入らないような渓谷のてっぺんや断崖絶壁の上。渓谷の間。などなど、初心者が行けない場所をかたっぱし探す。
すると、面白いくらい薬草が見つかった。回復草、解毒草、解麻痺草、解熱草などなど、生える場所はルフス領の時と全く一緒だったので、僕の勘がさえまくっていた。
「キースさん、すごいです! ぼくにはただの雑草にしか見えません!」
「まあ、ミルは目が悪いから仕方ないね。でも、匂いは全然違うでしょ」
「はい、毒草と回復草は全然違います。毒草の方は鼻の奥がビリビリしますよ」
「危ないからあまり近寄らないようにね。たくさん採取できたし、ギルドの人達もよろこんでくれそうだ」
僕達は各種の薬草を麻袋に分けて入れておく。
「じゃあ、時間が出来たし、鍛錬をしようか」
「はい! よろしくお願いします!」
ミルは頭を深々と下げ、いきなり攻撃を仕掛けてくる。
僕はミルの攻撃を全て躱し、甘い脇腹部分に攻撃を放った。
「ふっ!」
ミルは僕を誘っていたらしく、一気に身を下げて蹴りを回避すると地面すれすれで脚を振り、僕の軸足を蹴り上げた。
僕は体勢を崩す。
「はあっ!」
ミルは体勢を崩した僕に目掛けて踵落としを繰り出して来た。
僕はフルーファの柄を握り、地面に突き刺して空中で停止し、ミルの攻撃を回避。ミルの首に脚を撒き着けて地面に向かう力を使い、前転。ミルの行動を封じながら、閉め技を決める。
「フグぐぐ……」
ミルは僕の脚を叩き、参ったの合図をした。
「ふぅ……、危なかった」
「はぁ、はぁ、はぁ……。あんな拍子の外し方、ずる過ぎます……」
ミルは息を切らし、地面に倒れていた。
「ミルの誘いが上手くて乗ってしまったよ。体制を崩された時は焦った」
「うう、ぼく、捕まったら本当に何もできません……。もっと近接戦闘を学ばないと」
「多分、長いこと戦いから離れていたから体が感覚を忘れているんだと思う」
「ですね……。今の攻撃、去年の八月ごろなら回避出来ていたはずです。体って思っているよりも早く鈍っていくんですね……。はぁ、歳かなー」
「一五歳が何を言ってるの。こればっかりは鍛錬あるのみ」
「はいっ! 頑張りましょう!」
ミルは立ち上がり、僕達は夕暮れになるころまで鍛錬した。
午後五時頃、僕達はウィリディスギルドに戻って来た。
「回復草、解毒草、解麻痺草、解熱草、体感一キログラムずつ取ってきました」
僕は各薬草が入った麻袋を受付台に乗せる。
「う、嘘でしょ……」
受付の女性は苦笑いを浮かべ、椅子から立ち上がった。
「ちょ、ちょっとギルドマスターを呼んできます!」
女性は椅子から立ち上がり、ギルドの奥へと走っていく。
少しすると緑色の長髪が特徴的で背が高い細身の男性がやって来た。服装は医師っぽく白色の白衣を着ている。だが、中身は燕尾服っぽく、ワイシャツと黒色の長ズボンを身に着けていた。
「え、えっと、えっと、初めましてウィリディスギルドのギルドマスターをしております、ベルデと申します。早速ですが、天然の薬草を拝見してもよろしいでしょうか?」
ベルデさんはペコペコと頭を何度も下げ、物腰低く話しかけて来た。
「はい、構いませんよ」
「では、失礼します」
ベルデさんは椅子に座り、麻袋に手を入れて一種類ずつしっかりと確認していた。
――ベルデさんは薬師か錬金術師か、医師のどれかかな。見方が本物だ。
「す、全て天然ものです……。こんな質が良い薬草は久々に見ました。いったいどこから」
「人が普段よりつかないような場所を探しました。薬草を探すのは得意ですし、困っていたようなので、少しでも助けになれたのなら幸いです」
「はゎわわ……。ありがとうございます! すべていい値で買い取らせていただきます!」
ベルデさんは額が受付台に当たるんじゃないかと言うくらい頭を下げた。
「量が多いので少々お時間をいただきますがよろしいでしょうか?」
「じゃあ、明日の朝、また仕事に来ますからその帰りで構いません」
「明日も来ていただけるんですか!」
ベルデさんは目を大きく開き、頭を何度も何度も下げて来た。
――この人、物腰が柔らかすぎるんじゃなかろうか。
「はい。来ますよ。なので、焦らずに査定してください」
僕は頭を下げ、ミルと共にウィリディスギルドから出た。
「なんか他のギルドマスターより優しそうな方でした」
ミルも僕と同じ感想を持っていた。
「うん、僕もそう思った。明日も仕事をすることになったけど問題ないよね?」
「はい。久しぶりに仕事をして、やっぱり仕事って楽しいなって思いました」
「そうだね。感謝されると言う行為がとても楽しいのかもしれない」
僕とミルはシトラが待つ、借宿に向かった。部屋の鍵を使い、中に入る。
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