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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第四章:王都の騒動

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仕事始め

「はぁー、元気になった。じゃあ、夕食を作るから待ってなさい」


 シトラは立ち上がり、調理場に移動した。

 僕はシトラの尻尾を追うようについていき、食材を切っている彼女の背後に抱き着く。


「ちょ、もう。今日はやけに甘えたがりね。今、包丁を使っているから危ないし離れなさい」


「僕も愛する妻のために料理を手伝うよ」


「もう、気障りな言葉を吐いちゃって相当重症ね」


 シトラの尻尾はブンブンと振られていた。


 僕はシトラと一緒に料理を作り、四人前の品を完成させた。


 ミルとアルブが居間で楽しそうにじゃれ合っており、ほほえましい。


 僕は出来上がった料理をテーブルに並べる。鶏肉の塩焼き、野菜の盛り合わせ、コーンスープ、パンという具合の夕食だ。


 皆で食卓を囲み、手を握り合わせる。神に祈ってから夕食を始めた。


 僕はグラス一杯の葡萄酒を飲む。一杯目から時間が空いていたので少量なら問題ないと判断した。

 シトラとミルも飲んでいるので、我慢できなかったのが本音だ。皆で談笑しながら夕食を楽しんだ。食事を終えたらお風呂場で体を拭き、歯を磨いて寝る準備を進める。


 寝室に入り、ベッドに倒れ込むと金色の瞳を燃やしたミルが覆いかぶさって来た。


「キースさん……、もう……、我慢できません」


「わかった。妻を喜ばせるのが夫の役割だ。任せて」


「キース……、私も忘れないでよ」


 シトラは夜になり、ベッドの上に来ると逆に甘えてくる。


「忘れてないよ。僕はずっとそばにいるから安心して」


 僕はシトラを抱き寄せる。


「うん……、ありがとう」


 シトラは僕の手を握り、微笑んだ。

 ミルとシトラが共に満足するまで僕は二名を可愛がり、軽く話し合った後、眠った。


「んー、はぁー。いやぁ、寒いな……」


 吐く息が白くなる。窓から外を見れば、雪が降っていた。そりゃあ、寒い。すぐに暖炉を付けて空気を暖める。質が良いお酒だった為、一切残っておらず、頭の中がすーっとしており気分が良い。


「んー、キースさん……、おはようございます。寒いですけど、心地いい朝ですね」


 ミルは寒いのに下着姿で布団から出る。そのまま、僕に朝一の口づけをして来た。


「これが無いと、一日が始まりません」


 ミルは微笑み、心を暖める。


「はぁー、寒い……。ミルちゃん、さっさと服を着てよ。見てる方が寒いわ……」


 シトラはガウンを羽織り、暖かい恰好をしてから僕と朝のキスをした。


「おはよう、キース」


「うん、おはよう。今日もいつにもまして綺麗だね」


「もう……、まだ酔ってるの」


 シトラは視線を背け、尻尾を振りながら居間に出た。


「ぼくもキースさんに綺麗って言ってもらいたいですー」


 ミルは飛び跳ねながらおねだりしてきた。


「ミルは綺麗と言うより、可愛いって言葉の方が似合うかな。ミル、今日も可愛いよ」


「えへへー、いやぁー、それほどでもー。可愛いって言ってもらえるのも嬉しいですね」


 ミルは満面の笑みを浮かべ、尻尾をうねらせていた。服を着替え、居間に向かう。


「ふわぁー、主……、おはようございます……」


 アルブはフラフラ飛びながらあくびをしていた。未だに寝足りないのだろう。僕はアルブを抱きしめる。


「おはよう、アルブ。眠たいのなら、まだ寝ていても良いんだよ」


「じゃあ……、主の腕の中で寝ます……」


 アルブは僕に寄り添うように眠った。


「はは、上手く使われちゃったな」


 僕はアルブを腕に抱え、赤子をあやすように背中をトントンと優しく叩く。そのまま今に移動した。イリスちゃんの手紙を読み、返事を書いて朝食を得る。


「じゃあ、ミル、今日から仕事を始めようか」


「はい。始めましょう!」


 ミルは元気よく返事をした。冒険者服に着替え、ローブを羽織る。シトラも準備を終え、僕達はクルス君の家に向かった。


 クルス君の家に来ると少年が藍色髪の先端に汗が滴るほど運動していた。


「クルス君、おはよう」


「あ、キースさん。おはようございます。今日から、よろしくお願いします」


 クルス君は頭を下げ、僕に挨拶してきた。


「うん。あと二カ月、頑張っていこう。他の生徒がどれくらいの力を持っているのかわからないから、出来るだけ強くなっておかないとね」


「はいっ! 頑張ります!」


 クルス君は大きな声を出し、新年になってもやる気は変わらずに高いままで努力を怠っていないようだった。僕も体が訛らないようにできる限り鍛錬を積んでいる。鍛錬を続けて少しずつ少しずつ強くなっていければいいと思っているので爆発的な成長は望まない。


 半日みっちり鍛錬した後は昼食をしっかりと取って体作りをする。

 昼寝を挟み、すっきりした状態で勉強し、再び眠気が一気に出てくる三時頃におやつ休憩をとってまた勉強。毎日毎日努力し、初日のクルス君と見違えるほど成長していた。

 一日一パーセントでも成長していれば、三カ月でほぼ一〇〇パーセントになる。つまり、二倍だ。一〇月から行っているとなると三月末までなので一五〇パーセントくらいかな。こんな成長を考えるほどいつの間にか三月になっているし、クルス君の魔力や顔つきが大分変っているし、時の流れは物凄く早いんだなと実感した。


「クルス君、入学式が近づいているけど、大丈夫?」


「はい、キースさんに教えてもらったことを続けて昔の僕の二.五倍は確実に強くなってるので、問題ないです。勉強も初等部を半分くらい終わらせられたので余裕が出来ました。本当にありがとうございます」


 クルス君は頭を下げ、感謝してきた。


「いやいや、感謝したいのはこっちだよ。クルス君から元気ややる気を貰えた。勉強する楽しさも知れたし、すごくいい経験になった。僕達も高等部卒業の資格が貰えるように頑張るから、クルス君もインディクム領の学園を卒業してドマリスさんの跡を継げるよう、頑張って」


「はいっ! 頑張ります!」


 クルス君は大きな声を上げ、頭を深々と下げる。


 僕達は指導した報酬として魔導書を貰う。始めは一冊だけだったがクルス君の成長や助けた報酬が加算され、三冊に増えた。


「ドマリスさん、本当に良いんですか?」


「ああ、構わない。クルスの成長を見ればこれくらい普通だ。なんなら、二度も命を救われている。何も出さないほど廃れちゃいない」


 ドマリスさんは書斎の椅子に座り、腕を組みながら言った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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