酔っぱらった夜
「ポイニーさんのおっぱい、ものすごく柔らかーい」
酔っぱらったジョールさんはポイニーさんに抱き着き、子供のように笑っていた。
「うーん、案外可愛いね。私好みだ」
ポイニーさんは舌なめずりして、毒蛇のような細く冷徹な視線でジョールさんを見ていた。少々怖い。
「はぐ、はぐ、はぐ。もぐもぐもぐ。もっとお菓子食べたい。もっとお菓子持ってこーい」
未だにお菓子を食しているキュアノさんはメイドたちに声を上げていた。あれだけ食べて太らないのは逆にすごいな……。
「ライアンさん……。私……、酔っぱらっちゃいました。今日は離れたくありません……」
ハイネさんはライアンに抱き着き、乙女の顔をしていた。
「まったく、そんな顔をするなよ。慰めたくなるじゃねーか」
ライアンは優しいので頼まれると断れない人間だ。なので、女性によくモテる。
「ううー、どいつもこいつも弱い弱いってバカにしやがって……。弱いことくらいわかってるっつーの。相手が皆強すぎるの! あんな奴らにどうやって勝てっていうのよ!」
プラスさんはお酒が周り、口が達者になっていた。勇者をしていると色々あるのだろう。負の雰囲気を出し続けながら、お酒を飲んでいた。
「スージア先輩、お久しぶりです。いやー。ご結婚おめでとうございます。とてもおめでたいですね。僕も結婚式に呼んでくださいね」
ルラキさんは未だに話しを広げていた。よく回る口だなぁ……。
「あー、キース君、私、酔っぱらっちゃったー。お部屋で休みたい気分……」
いつもは真っ白な頬をほどよく褐色に染めたイリスちゃんは僕の体に身を擦りつけてくる。
「じゃあ、お部屋に連れて行こうか?」
「一緒に寝てくれる?」
「寝ないよ。僕は帰らないといけないからね」
「むぅー、そこは泊って行っていい? っていうところだよー」
イリスちゃんは僕の体をゆすり、子供のようにぐずる。
「イリスちゃんの部屋で寝たら、イリスちゃんが脱いじゃうでしょ?」
「あ、あの時のことは忘れてよー」
イリスちゃんは頬を先ほどより赤らめ、僕の体を大きく揺する。
「うーん、ちょっと難しいかな。あんな綺麗な景色は見た覚えが無いからね」
僕は微笑み、イリスちゃんをからかう。僕もお酒が少々回っているようだ。
「うわぁーん、キース君のいじわるー」
僕達はほろ酔い状態で楽しい食事を過ごした。
四時間もすれば、皆出来上がり、お酒が沢山消費された。
僕は一杯しか飲まなかったので酔いが軽く冷めて来た頃だ。料理よりもお酒が無くなり、宴っぽくなっている。残って食事をしている勇者もいれば、広間からいなくなっている勇者もいた。皆、どこに行ってしまったのだろうか? まあ、あまり考えないでおこう。
「すぅー、すぅー、すぅー。キース君、すきぃ……」
イリスちゃんはお酒を沢山飲み、酔っぱらって眠ってしまった。このままだと危ないので、僕は彼女を部屋に連れて行き、ベッドに寝かせる。
「キース君、お休みなさいのちゅっして……」
イリスちゃんはトマトのように赤い顏で子供のようにおねだりしてきた。
「はいはい、わかったよ。お姫様」
僕はイリスちゃんにお休みなさいのキスをした。
「えへへー。ありがとう。はぁー、幸せ過ぎて寝たくなぃ……」
イリスちゃんは瞼を閉じ、寝息を立てて眠りに落ちる。
「じゃあ、またね、イリスちゃん」
僕はイリスちゃんの寝室から出て、王城をあとにする。
夕食までに家に着いた。
「ただいま」
僕は家の扉を叩き、声を出した。
「キースさん、お帰りなさい。酔っぱらい過ぎずに家に帰って来れたんですね」
満面の笑みを浮かべたミルが扉を開けた。すぐに僕にむぎゅっと抱き着き、細長い尻尾をうねらせる。
「お酒は一杯しか飲んでない。そういう約束だからね」
「約束をしっかりと守れるキースさんはやっぱりいい夫ですー」
ミルは僕に抱き着きながらお尻を左右に振る。なんて子供っぽい仕草なんだろうか。
「あぁー、キースさんのにおいを嗅いだら、むずむずしてきちゃいました」
「ははーん、ミル、今日はもうお酒を飲んでるでしょ」
僕はミルの鼻を指先で突き、赤らんでいる頬を撫でる。
「えへへー、今日は奮発してシトラさんと美味しいお酒を空けちゃいました」
ミルは微笑み、僕に撫でられて喉をゴロゴロと鳴らす。酔っぱらった猫は大変甘えん坊なので大変だ。
「まったく、お酒を飲み過ぎたらミルは簡単に発情しちゃうんだから節度を持って飲まないと駄目だよ」
僕はミルの尻尾の上あたりを優しく摩る。
「あぁ……、き、キースさん、駄目です……。そこ、刺激されちゃったら……」
「ミルが好きな所、僕はもうほとんど知っちゃってるんだよね」
ミルの耳元で優しく囁いた。耳もミルの弱点だ。
「はわわ……。ら、らめぇ……」
ミルはヘロヘロになり、腰を抜かす。少し焦らしてあげるととても満足してくれるので、ある程度時間を置く。
「もう、帰ってきて早々にミルちゃんを溶かさないの」
シトラは椅子に座り、グラスに葡萄酒を入れ、チーズと共に美味しくたしなんでいた。
「シトラ、ただいま」
僕はミルを抱きあげて家の中に入り、テーブルに向かう。
「お帰りなさい。勇者順位戦はどうだった?」
「ライアンと藍色の勇者ルラキさんの同率一位だった。すごく珍しい結果みたい」
「へぇー、ライアンが一位ねー。つまり、ライアンに勝てそうだったキースも実質一位ってことなんじゃないかしら?」
シトラは葡萄酒を口に含み、チーズを口に含む。その姿が妙に色っぽい。熱った頬と汗ばんだ首筋が大人っぽさを醸し出していた。
「酔っぱらうとシトラの可愛さが二倍くらいになってる気がするよ……」
「あっそ。素面で可愛さが二倍にならなかったら意味ないじゃない」
「そうかな……」
僕はミルを椅子に座らせる。その後、椅子に座っているシトラの背後からぎゅっと抱き着いた。
「なによ。一杯しかお酒を飲んでないのに、結構酔ってるわね」
「いやぁ……、そんな酔ってないよ。もう、冷めてる。でも、シトラのにおいを嗅いだら、やっぱりまだ酔ってるってわかった」
僕は酔うとシトラに甘えたくなる。彼女の温もりを感じ、心が休まるのを得ると言うのがとても心地よいのだ。
「ありがとう、シトラ。元気になったよ」
僕はシトラから離れる。
「もう、後ろから抱き着いただけで満足なの……?」
シトラはむすっとした表情で呟く。加えて体を横に向けた。
「シトラは優しいね」
僕はシトラに前側から抱き着き、心の安らぎを得た。もう、ずっと抱き着いていられると思うほど心地よい。
シトラも僕に抱き着き、互いに心を暖める。
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