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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第四章:王都の騒動

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勇者順位戦の宴

「では、皆の者。宴の用意だ!」


 国王は立ち上がり、橙色と藍色の花火を打ち上げさせた。まだ明るい空に二色の花火が咲き、国中の者にどの領土が順位戦で優勝したか知らせる。


「いやー、まさか同率一位になると思わなかったよー」


 イリスちゃんは満面の笑みを浮かべ、花火を見上げていた。


「そうだね。でも、ビオレータ様は橙色の勇者よりも藍色の勇者の方が嫌いみたいだね」


「あはは……、そうだね。お父様の命令は流石に逆らえなかったみたいだし、今年も楽しい年になりそう!」


 イリスちゃんは立ち上がり、藍色の葡萄酒と橙色のオレンジリキュールを選び、手に持った。僕は橙色のオレンジリキュールが入ったグラスを持つ。


「では、皆の者、グラスを持ったか」


 国王は藍色の葡萄酒と橙色のオレンジリキュールを両方入れた聖杯を持ち、高く掲げる。


 他の領土の者達もグラスを持ち、掲げていた。


「今年が良い一年になるよう、願って……。乾杯っ!」


 国王は大きな声を上げる。


「乾杯っ!」


 各領土の者達が大きな声を上げ、他の勇者たちもグラスを持って叫んだ。


 皆、グラスに入ったお酒を飲み、勇者順位戦の宴が行われる。


「では、各勇者と参列者は王城に入って用意された品々を堪能せよ」


 国王は聖杯に入ったお酒を飲み切り、黒いマントを靡かせて特等席をあとにする。


「ここにおる者も王城に入れ。勇者たちをもてなすぞ」


「はいっ!」


 僕は皆につられて声を上げてしまった。お酒が弱い僕はさっさと帰ろうと思っていたのに……。


 僕達は王城に移動し、広間で各勇者と会う。

 フレイは僕のことを知らないから、僕を知っている勇者はライアンとプラスさんの二名。まあ、あまり会いたくないけど……ルフス領のギルドマスターであるハイネさん、ルフス領の領主イグニスさんは僕を知っているはずだ。

 他に僕を知っているのはクサントスギルドのべニアさん、クサントス領領主のジンレオさん。話せる相手は数名しかいない。フレイとだけは絡まないようにしないと。


「皆の者、去年はよく自身の領土を守り切った。加えて今年もよろしく頼む。ルークス王国が栄えているのはほかならぬ皆のおかげだ。国民を代表して感謝する。今日は食べて飲んで楽しんでくれ」


 国王は階段に立ち、多くの者の前で挨拶をしていた。


 勇者や各領土のお偉いさんたちが話合い、社交辞令が終わった後、息が抜けた者達の様子が明らかになる。


「フレイ様、今年も一緒に過ごしましょう」


 ビオレータはフレイの腕に抱き着き、見た覚えもないくらい笑顔で彼を部屋に連れ込む。


「はぁー、ほんと毎回いい男が取られちゃって仕方ないわー。ジョールちゃん、一緒に飲まなーい」


 紫色の勇者であるポイニーさんはグラスを持ち、胸を弾ませながら一人でいる黄色の勇者であるジョールさんのもとに向かう。


「あ、いえ……。俺は別に……」


 ジョールさんは戦いの場じゃないと物凄く静かだった。


「もー、硬いこと言わないの。ほらほら、国王が戻って来てフラーウス領も景気が良くなって来たんだからお酒もたくさん飲んじゃないさい。こういうところでぱーっとやって会話力を付けないと勇者なんてやっていけないわよ」


 ポイニーさんはジョールさんの肩に腕を回し、お酒を進めた。


「じゃ、じゃあ、失礼して」


 ジョールさんはお酒を飲み、ポイニーさんに可愛がられていた。


「まったく、私は子供じゃないってのに。どいつもこいつも子ども扱いしてきやがって」


 青色の勇者キュアノさんはお酒を飲んでいるかと思いきや、リンゴジュースを飲んでいた。ケーキやお菓子を口いっぱいに含み、モグモグ食している。とても子供っぽい。


「いやぁー、大臣、良いお腹ですねー。夢がいっぱい詰まっていますよ。あ、官僚の方々、ご無沙汰しております。今後ともよろしくお願いいたします」


 藍色の勇者であるルラキさんは位が高い者達に挨拶をしまくっており、顔を広げていた。


「そこにいる赤髪のお姉さん、そんな暗い顏してどうしたんですか。俺が話でも聞きますよ」


 橙色の勇者であるライアンはお酒を持ち、一人でいたルフス領のギルドマスターであるハイネさんに話しかけた。


「はぁー。また全敗しちゃった。ううぅ、また回復だけが取り柄の駄目勇者なんて言われる」


 緑色の勇者であるプラスさんは負の雰囲気を発しながら独り言をブツブツと呟いていた。


「勇者にも個性があるんだな……」


 僕は間近で勇者を見て同じ人間だと言う事実を思い知らされた。どこか、孤高の存在だと考えていたがそうではなく、彼らも普通の人間なのだ。


 僕はアルブを撫でながら『無視』を使い、椅子に座って一人で食事をしていた。

 白髪の僕は良くも悪くも目立つので、影を限りなく薄くし、存在感を消す。


「あれぇー、キース君、キース君。どこに行っちゃったの~」


 イリスちゃんは僕の存在を感知できず、広場を漂っていた。


 僕はお酒は一杯までと決めているのでオレンジリキュールをチビチビ楽しみながら食事を進める。どれもこれも美味しい品ばかりで手が止まらない。


「キース君、そこにいるよね」


 イリスちゃんは僕が座っている椅子の前で仁王立ちをしながら言う。

 僕は彼女の手に触れて『無視』の対象に加えた。


「よくわかったね」


「そりゃあ、沢山の皿が積み重なってたからね。社交場で料理を一杯食べるなんてキース君くらいだからさ、気づいた。はぁー、よかった。夫を見つけられなかったら妻失格だよ」


「まだ、結婚してないけどね」


「結婚するんだから、一緒でしょ。もぅ、釣れない旦那様」


 イリスちゃんは僕の肩に頭を乗せ、くっ付いてきた。


「イリスちゃん、酔っぱらってる?」


「ちょっと」


 イリスちゃんは微笑み、人差し指と親指で小さな隙間を作る。


「じゃあ、暴走しないように僕が引き留めておかないとね」


 僕はイリスちゃんの肩に手を回す。


「もぅー、これじゃあ離れられないよー」


 イリスちゃんはニヘニヘ顔を浮かべる。


 僕はフォークでケーキを取り、イリスちゃんに食べさせる。イリスちゃんは美味しそうに食し、僕にも食べさせてきた。ミルとシトラがいたら確実に怒られるが、別に悪いことをしているわけではない。食事を楽しく取っているだけだ。


 宴が始まってから二時間くらい経った頃、お酒が回った者達が騒ぎ出した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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