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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第四章:王都の騒動

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勇者順位戦の結果

「『藍色魔法:重圧』」


 ルラキさんはライアンに動かれる前に試合場全体の空気を一気に重くした。

 ライアンが地面に手を付け、苦笑いするくらいだ。


「『橙色魔法:身体強化』」


 ライアンは身に橙色の魔力を纏い、重圧がかかる中、首を鳴らして普通に歩く。


「んじゃあ、最初っから本気で行くぜっ!」


「はは……、この人、やばい人だ!」


 ルラキさんは恐怖を覚えたような声を上げ、笑った。


 ライアンは重圧がかかっている中、先ほどと何ら変わらない速度で移動し、ルラキさんに向って拳を打ち付ける。


「ふっ!」


 ルラキさんは剣を抜き、ライアンの拳とぶつけた。その瞬間、剣身とアイアンナックルが衝突した。ライアンの専用武器の効果が発動し、爆発が起こるとルラキさんが吹っ飛ぶ。


「くっ! 爆発……。めんどくさいなぁ! 『藍色魔法:軽重歩行』」


 ルラキさんはライアンと同じ速度で走り、攻めに出る。


「おらあっ!」


「はあっ!」


 ライアンのアイアンナックルとルラキさんの藍色の剣が再度衝突。


「『藍色魔法:反射』」


 ルラキさんは爆発が起こる前に詠唱を言っていた。その影響でライアンの方に爆発が飛ぶ。だが……。


「おらあっ!」


 ライアンは全く気にすることなく左手の拳をルラキさんに打ち込んだ。ルラキさんの顔に拳が当たった瞬間、魔法が発動し、爆風が反射するものの拳に関与されなかったため頬に直接打ち込まれた。


「ぐふっ!」


 ルラキさんはライアンの拳によって、軽々吹っ飛んだ。

 ライアンは僕の獣拳を食らってもぶん殴ってくるので、並大抵の反射攻撃では止まらない。


「くっ! おっもい拳……。僕、誰にも殴られたことなかったのに!」


「ははっ! 相当優等生なんだな! 俺は彼女に毎日殴られてるぜ!」


「それって彼女って言わなくないですか……」


「俺は彼女だと思ってるんだがな~。相手もたまに好きって言ってくれるんだぜ」


 ライアンはすっとぼける。


「『橙色魔法:身体強化』」


 ルラキさんは体に橙色の魔力を纏い、ライアンと互角以上の攻撃速度を見せる。


「そんなに魔力を使っても大丈夫かっ! すぐばてられたら興ざめだぜっ!」


 ライアンはルラキさんの剣にアイアンナックルを上手く当て、爆発を起こす。


「生憎八分だけなんで! 魔力全開でギリギリ行けそうです!」


 ルラキさんはライアンと戦うのが初めてなのか、ものすごく楽しそうに戦っていた。

 自分の実力が出せる相手と言うのは心躍る。僕も体感しているので彼の気持ちはよくわかった。

 

 ルラキさんは自分と対等に戦える相手がおらず退屈していたのだろう。だから、今は凄く良い笑顔で笑っていた。だが、魔法ではなく身体能力に振り切ったライアンの強さに押されている。

 

 ルラキさんは七色の魔法を全て使える。加えてどれもこれも勇者を陵駕するときたもんだ。魔力量が多いフレイの攻撃も全く同じ属性で返していたと考えると頭がおかしい。

 橙色魔法の身体強化もライアンと同じくらい上手く使いこなせているが、ライアンの練度に比べるとまだ甘かった。ライアンの体が橙色魔法と順応しており、橙色魔法を使うための体だ。逆にルラキさんの体は橙色魔法を使うために順応していない。彼の体は髪色からして藍色魔法を使うための体だ。


「おらあっ!」


「はあぁあ!」


 ライアンとルラキさんの戦いは攻撃が何度も何度もぶつかり合い、衝撃波が辺りに大きく広がり、皆が息を飲んだ。八分間などあっと言う間に過ぎ、両者の拳が互いに両頬を打ち付け合ったあと吹っ飛んで地面を擦り転げる。八分が経った瞬間、ビオレータが聖なる鐘を鳴らし、試合の終了を知らせた。


 ライアンは二足立ち、ルラキさんは膝立ちになっており、今にも倒れそうだ。魔力を全開で戦った結果だろう。


「まさか、決勝戦で判定勝負になるなんて……」


 僕は橙色の勇者と藍色の勇者でどちらが一番か決めなければならなかった。


「ううーん、どうしよう……。どっちも頑張ってたしな」


 僕は迷っていた。どちらに札を上げればいいのか。橙色の旗と藍色の旗を一本ずつ渡され、どちらか上げなければならない。


 ――ライアンは攻撃を食らいまくっていた。逆にルラキさんは攻撃を回避していた。でも、最後に余裕がありそうだったのはライアン、ルラキさんの方がばてていた。本当に難しい。


 僕は周りを見る。ビオレータはどちらも嫌いだからか、どちらもあげたくないと言いたそうな表情を浮かべている。国王やテリアさん、イリスちゃん、スージア兄さんも迷っていた。


 僕達は一斉に旗を上げた。僕は橙色の旗を上げた。イリスちゃんも橙色の旗。国王とスージア兄さん、テリアさんは藍色の旗を上げていた。ビオレータはどちらの旗もあげなかった。


「ビオレータ、旗を上げなさい」


 国王は小さな声を出し、伝える。


「私が上げたら引き分けになってしまいます。どこの馬の骨かもわからない白髪が入ったせいで」


 ビオレータは僕の方を向きながらいがんでくる。どうやら僕は相当嫌われているらしい。


「白髪がいなければ私はどちらかに上げていた。でも、すでに藍色の旗が三本立っている。私が上げなくても藍色の勝ちってことですわ」


 ビオレータは意地でも旗をあげなかった。


「今は六人で審査をしている。あげなさい」


 国王はビオレータに命令した。


「う……、うぐぐ……」


 ビオレータは苦しそうに橙色の旗を上げた。


「うむ。どうやら、今年は同率一位のようだな」


「ですが、お父様。同率一位なんて……」


「たまにはいいではないか。同率一位と言うことはどちらも飛躍すると言うことだ。願ったりかなったりだ」


 国王は勇者順位戦の本当の意味をよく理解していた。これはただの占いであり、同率一位なら両方領土とも成長する。勝ち負けが全ての試合ではないと理解したうえで同率一位を決めたのだろう。


「ははっ。どうやら、どちらも一位らしいぞ」


「まあ、異論はないです。実際、あと二分あったら負けていたのは僕ですし、攻撃を回避していたのが評価点に入っているみたいですから、僕が一人勝ちしていたら歯がゆい気持ちになっていました」


「いやぁー。あと八時間くらい楽しみたかったんだがな」


 ライアンは腕を組みながら笑っていた。


「いや、無理でしょ……」


 ルラキさんはライアンの発言に苦笑いで返した。


「楽しかった、また来年も戦おう」


 ライアンはルラキさんに手を刺し伸ばす。


「もちろん。どうやら僕は奢っていたみたいです。一つの能力を極めるとここまで強くなるなんて興味深い戦いでした。来年は僕も一段と成長して戻ってきます」


 ルラキさんはライアンと握手し、良い顏をしていた。両者共に楽しさを味わえたようだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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