橙色の勇者対藍色の勇者
「吠えても当たらないよ。ほらっ!」
ルラキさんはフレイの攻撃を完璧に躱したあと、開いた腹に『聖火の剣』を当てる。その瞬間、チラチラと言う光が一瞬見えた。すると強烈な爆発が起こり、フレイは軽々と吹っ飛ばされる。
「くっ! 『赤色魔法:フレアバースト』」
フレイは背後から炎を出し、場外になるのを防ぐ。だが……。
「『赤色魔法:フレアバースト』」
フレイが止まったころ、ルラキさんは『聖火の剣』の穂先をフレイの腹に当て、詠唱を呟いた。穂先に魔法陣が生まれ、剣の中に含まれている魔力が全て吐き出された。あまりの超火力にフレイの体が見えなくなった。
「ぐあああああああああああああああああっ!」
フレイは強烈な一撃を受け、場外に出て壁に勢いよく衝突。そのまま気絶し、前に倒れ込んだ。
「うん、いつもと同じだ。挑発に乗ってくれて助かるよ。頭がもう少しよかったらなー」
ルラキさんは剣を鞘に納め、試合場から出る。あまりの余裕にフレイが遊ばれていたとしか思えない。
「勝者、藍色の勇者ルラキ・カエルレウス。準決勝、第二試合。橙色の勇者ライアン・ハートフル対青色の勇者キュアノ・ニウェウス。両者、中央に集まれ」
国王は声を上げ、次の試合に流す。ビオレータは歯を食いしばり、手の平から血が出そうなくらい力を込めていた。ライアンよりルラキさんの方が嫌いなんじゃないかと思うくらいだ。
「いやぁ、また女か。やり辛いな」
ライアンは橙色のマントを靡かせながら中央に移動した。
「女だからって手加減はいらない。本気で来なさい。じゃないと氷漬けにして心臓を止めるわ」
キュアノさんは青色のマントとツインテールを靡かせながらライアンを脅す。フレイとルラキさんが会場の気温を上げたせいで強い風が巻き起こっていたのだ。
「でも、女は殴れないし……」
「だから、そんなこと気にしなくていいって言ってるの。子どもや女扱いされるのが嫌いだから、男が相手だと思って戦って」
キュアノさんは目を細めながらライアンを威圧する。でも、体が小さく可愛らしいので猫のように怖さがない。
「まあ、キュアノがそう言うなら……」
ライアンは髪を掻きながら呟いた。
両者が静まった瞬間、ビオレータは聖なる鐘を鳴らした。
「『青色魔法:絶対……』」
「神速」
ライアンは身体強化を行わず、キュアノさんが詠唱を言っている間に懐に入った。そのまま右拳をキュアノさんが持っている杖に打ち込む。あまりの早業に目で終えた人物は何人いただろうか。
ライアンの体は橙色の魔力の影響からか、別に身体強化をしなくても強い。じゃないとギルドマスターは身体強化有り、ライアンは魔法無しで戦えない。
「嘘、早……。うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
杖を一瞬で奪われたキュアノさんは思考停止し、ライアンに胸ぐらを掴まれた後、場外に投げ飛ばされる。あっという間に場外に出され、試合が終了した。
周りがざわついており、ライアンのやってやった感満載の顔にイラついているビオレータは歯を食いしばっている。
去年はフレイかルラキさんに負けたライアンは一年で相当強くなっているらしく、王族の方や貴族の面々も唸っていた。
「他の順位が決定した後、決勝戦に入る。藍色の勇者ルラキ・カエルレウス対橙色の勇者ライアン・ハートフルはそれまでに心の準備をしておくように」
国王は声を上げ、二名に知らせた。
「うう……。一瞬だった……」
キュアノさんは場外で四つん這いになっていた。あまりに一瞬で終わってしまったがために、怒りの言葉も出ないようだ。
「大丈夫だったか? 頭とか打ってない?」
ライアンは弾き飛ばした杖を持ち、キュアノさんに手渡す。
「いやあー、全体氷漬けにされる前に倒さないと勝てないと思ってさ。女はやっぱり殴れないし、投げてごめんな」
ライアンはさんさんと輝く日のような満面の笑みを浮かべ、倒れているキュアノさんに手を差し伸べる。
「たく……。調子が狂う……」
キュアノさんはライアンの手を握り、立ち上がった。
「私、藍色の勇者が嫌いだから勝ってきて」
「おう、任せとけ。今年の俺は一味違うぜ」
ライアンはキュアノさんとしっかりと握手をして笑いあっていた。
――僕と戦っていたライアンが勇者順位戦で二位になっちゃった。
準決勝のあと、プラスさんとポイニーさん、ジョールさんの戦いが行われた。三名が戦い、プラスさんが二敗、ポイニーさんが一勝一敗、ジョールさんが二勝という結果になり、七、六、五位が決定した。
フレイとキュアノさんが戦い、魔法の打ち合いとなった結果、魔力量が多いフレイが勝ち、四位と三位も決定した。
「ただいまより、勇者順位戦、決勝戦を行う。藍色の勇者ルラキ・カエルレウス対橙色の勇者ライアン・ハートフルは中央に集まれ」
国王は声を上げ、勇者を呼んだ。
「やっとお前と戦えるのか。ほんと楽しみだぜ!」
橙色の髪とマントを靡かせているライアンは拳を手の平にぶつけ、意気揚々と微笑む。
「僕はあなたと一番戦いたくなかったですけどね。何を隠そう、僕、格闘術が苦手なんですよ」
「ほぇー、ルラキは何でもできると思っていたが、そうじゃなかったのか。まあ、別に魔法をガンガン使ってもらって構わない。本気でやり合おうぜ!」
ライアンは全身から橙色の魔力を吹き出す。僕と戦ってから魔力と大分順応しているようで、以前より強くなっていた。
「一年でこれだけ成長出来るのも珍しいですよ。ライアンさん、何度か死にかけました?」
「あー、そうだな。バカみたいに強い魔物と戦いまくってた。あと、生きるか死ぬかって言う最高の試合をしたぜ。ああ、楽しかったなー。ルラキも同じくらい楽しませてくれると思ってる。最高の時間にしよう!」
ライアンは誰が聞いても戦闘狂の発言にしか聞こえない言葉をルラキさんに掛けた。
「はは……、僕も楽しめたら良いんですけど……」
ルラキさんは苦笑いを浮かべた。楽しめないとでも言いたげだ。
「ただいまより、勇者順位戦、決勝戦を開始する」
国王が声を上げた後、ビオレータは聖なる鐘を鳴らした。
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