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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第四章:王都の騒動

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必要なのは学

「こちらがご注文いただいた白金の指輪になります」


 三個のリングケースに入った銀色の質素な指輪が、女性が持つ黒い板に乗り、僕の目の前にあった。指輪の裏に名前が彫られており特注品だとわかる。


「ありがとうございます」


 僕は三個のリングケースを受け取り、ウエストポーチに入れる。そのまま家に帰った。家に着くや否や、夕食の準備がされており、良い匂いを嗅いでお腹が鳴る。


「ただいま」


「お帰りなさい。夕食の準備はもうできてるから、いつでも食べられるわよ」


 シトラは今朝のことを根に持っていたのか、僕が返ってくる前に夕食の準備を終わらせておいてくれたようだ。そう言うところがたまらなく好きだ。


「家に帰って来たら夕食がすぐに食べられるっていいですね。今日はぼくもお腹ペコペコです」


 ミルはお腹を摩りながら言う。彼女はクルス君の妹と弟の指導をしていた。まあ、一緒に走って遊んでいただけだが……、遊びも鍛錬と変わらない。


「えっと、シトラ。今日はお土産があるんだ」


 僕は手洗いうがいをしてから、ウエストポーチに手を入れ、三個の箱を取り出す。机の上に置き、箱を開けて指輪の裏側に掘られている名前を見た。シトラの指輪が入っていると確認し、立ち膝になる。


「お土産?」


「シトラ、愛してるよ」


 僕はリングケースを開け、白金の指輪を見せる。これなら水仕事や他の仕事をしている時も身に着けられるはずだ。質素だが、それが故に使いやすい。


「う……、な、なになに……。私の心臓、破裂させようとしてるわけ」


「いや、ただの愛情表現だから、気張らずに受け取って」


 僕は指輪を取り、シトラの左手の薬指にすっと入れた。指の太さは完璧で緩くもきつくもない。レッドダイアモンドが付いた指輪はシトラが首飾りにしており、汚れないようになっている。


「はわわ……。す、すごい……」


 シトラは滅多に見せない微笑み顔を浮かべながら、尻尾を振りまくり、指輪を眺めていた。


「キースさん、キースさん、ぼくも! ぼくも!」


 ミルは飛び跳ね、近寄りながら言ってくる。


「わかってるよ」


 僕はミルの指輪が入っているリングケースを持ち、彼女の前に膝立ちになる。


「ミル、愛してるよ」


 僕はミルの左手の薬指に指輪を通す。


「はわわ……。あ、ありがとうございます!」


 ミルは金色の瞳を輝かせ、左手を包み込むように胸に抱く。


「さて、僕も着けないと」


 僕は自分の指輪を左手の薬指に着けようとした。


「普通、相手が着けるでしょ。貸しなさい」


 シトラは手の平を広げる。


「そうですそうです。ぼくたちがキースさんの指輪を着けてあげます」


 ミルも手を広げる。


「じゃあ、お願いするよ」


 僕は両者に指輪を預けた。


 シトラとミルは指輪を二人で持ち、僕の左手の薬指に付ける。


「ああ……、ぼくたち本当に家族になっちゃいました」


 ミルの華奢な手が僕の手を握る。


「そうね……。なっちゃったわね」


 シトラも僕の手を握っていた。


「さあ、食事にしよう」


 僕達は指輪をはめた状態で食事をした。いつも以上に仲が深まったように感じる。おそろいの品を付けているからかもしれない。


 お風呂に入っている時、僕達が身に着けているのはネックレスと指輪、ブレスレットのみ。シトラの首に鉄首輪が付いているのが後ろめたいのだが、彼女が外したくないと言うのでそのままにしている。

 ネックレスだけでも十分綺麗なのに、お揃いの指輪があると距離がグッと近まったような感覚になる。一六歳で結婚とは遅いのか早いのか……。貴族としては普通かな。平民としては早いかもしれない。


 まだ、親になると言うことがわかっていないので、妻との子を作る気はない。両者は欲しいと言うのだけれど……、立派に育てられる気がしない。その理由を考えた時、僕は勉強不足だと思った。


「思ったんだけどさ、僕達は貴族になってしまったんだよね……。と言うか、王から膨大な土地を受け取った。その土地を開拓したり、統治しないといけない。そう考えた時、僕は学が足らないって感じたんだ」


「まあ、学園に行ってないものね。必要最低限のことをスージア様から教えてもらっただけだし、仕方ないじゃない」


 シトラは肩にお湯を掛けながら呟く。


「ぼくたちも貴族の妻になったわけですよ。そうなったら頭が良くないと何を言われるかわかりませんよ」


 ミルは僕の腕を掴みながら話す。


「だから、学園に行くのもありかなって思ったんだ。もしかしたら父親、母親になると言うことがどういうことか学べるかもしれない」


「なるほどね。でも、この歳で学園に行くなんて誰もいないわよ。早い子は六歳から学園に入るんだからね」


「僕達は来年で一七歳でしょ。高等部の卒業資格を取って大学に行くって言う手もある」


「はぁ……、今まで勉強なんてほぼしてこなかったのに、高等部の卒業資格なんて取れるわけがないでしょ」


「やってみないとわからないよ。僕は出来ると思ってる。別にシトラとミルに供用するわけじゃないから、二人は自分で考えてみて」


「うう。そうね。バカは痛い目を見ると知っているし、学があってこしたことはないわよね」


「ぼく、キースさんの為なら、いくらでも勉強します! 記憶力は良い方ですし、頑張れは何とかなりますよ!」


「大学に入学するために必要な高等部卒業の資格はどこの学園でもいいはずだ。スージア兄さんに訊いていい場所を紹介してもらおうか。旅をしながら勉強して一八歳になったころ、大学に入学する。なんか、楽しそうじゃない?」


「まあ……」


「キースさんと学園生活なんて、良い響きすぎますっ!」


「アルブのことも調べたいし、将来、子供が出来た時に誇れるような父親になりたい。そのために必要なのは学だと思うんだ。強いだけじゃ誰も付いてこない。シトラとミルを守るためにも、あとイリスちゃんの夫になるのだから、学びは必須だ」


「はぁ、そんなこと言って夜中ずっと勉強しないでよ。ちゃんと寝てくれないと体に悪いわ」


 シトラは僕のやりすぎ度合を知っているのか、釘を刺してくる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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