依頼の報酬
「王都に住む藍色の髪を持つ子供の学費は国が払ってくれるそうです。なので、僕も学園に通えるんですけど……。自信が無くて……。キースさん! 僕の師匠になってください!」
「ぼ、僕がクルス君の師匠……。ええ……。白髪の僕を師匠にするなんて、変わってるね」
「あの数のゴブリンを瞬殺なんて……。白髪とか関係ないです! 僕はキースさんに師匠になってもらいたいんです!」
クルス君は物凄い熱量で僕に話しかけてきた。
「……まあ、丁度冬の時期だし、列車も止まっちゃうからクルス君の学園が始まるまで、面倒を見ようか。会ったのも何かの縁だし、僕たちはそんなにせかせかしてないから。ミル、別にいいよね?」
「はい! キースさんが決めたのなら、ぼくは構いません!」
ミルはゴブリンの耳を回収しながら、言う。
「えっとえっと、無料と言う訳にもいかないですし、お金の面はどうにかします!」
クルス君は顎に手を置きながら精一杯考えていた。
――まだ六歳なのに、報酬のことまで考えられるなんて凄いな。
僕はクルス君の熱意に負け、戦い方を教えることとなった。
ゴブリンの耳を回収し終わった僕たちは馬車でクルス君の家まで移動する。
「クルス様! 旦那様が!」
門の前にいた執事さんは僕たちの姿を見るや否や、大声を出す。
「え……」
クルス君は顔を曇らせた。
執事さんに連れられ、僕たちは寝室に向かう。
「クルス……。私は……生きてるのか?」
藍色髪の男性は上半身を起こした状態でベッドの上に座っていた。
「お父様……。う、うぅ……。うわあああああああっ!」
クルス君はベッドの上に飛び乗り、血まみれの状態で彼のお父さんに飛びついた。
「む、この臭いはゴブリン……。なぜ、クルスの服からゴブリンの血が……」
「お父様。僕、今日初めてゴブリンを倒しました!」
「な……。モンズ、どういうことだ」
ベッドの上にいる男性は執事の方を睨む。
「クルス様はこちらにいらっしゃる冒険者さんと共に、西の森に行ったのです。旦那様の容態が悪く、少しでも強くなりたいと」
「クルス、そう言うことか。よくやった。それでこそ、我がテイルズ家の男児だ」
男性はゴブリンの血が付着したクルス君を抱きしめ、しっかりと褒めた。ドロウ公爵とは大違いだ。
「だが、なぜ、私の病が治った。もう、手遅れだったのだろう」
「こちらにいらっしゃいます、冒険者さんが秘薬を使ったそうです」
僕は能力を隠すため、秘薬を使ったと言うことにしておいた。その話を執事さんが伝える。
「秘薬……。なぜ、そのような貴重な品を私に……」
「あなたが死ぬと、困るものが多いからです。例え小さな貴族だとしても役割がある。子供も小さい、領地の者も不安になる。そんなことを考えたら、助けないわけにはいきませんでした」
――それっぽいことを言っておかないと納得してくれなそうだ。ただの気まぐれなんて言えないもんな。
「そうか……。なんてお礼を言ったらいいか。本当にありがとう。出来る限りの恩返しをして行きたい。えっと名前は……」
「キース・ドラグニティと言います」
「キースか。私の名はドマリス・テイルズ。よろしく頼む」
「お父様! 僕、キースさんの弟子になることにしました! 毎日、キースさんに報酬を与えてくれませんか!」
「な、なに? 師匠だと……。だが、教師を雇うほどのたくわえが無いのだが……」
「そこを何とか、お願いします! 僕、キースさんに剣を習いたいんです! ほかにもいろんなことを教えてもらいたいので、お願いします!」
クルス君は頭を下げた。
「むぅ……」
ドマリスさんは腕を組み、考え込んでいた。
「旦那様、先代が集めておられた魔導書を与えるのはどうでしょうか?」
「魔導書か。確かに何冊かあったな。キース殿、今、クルスの教育費として手渡せる現金がこの家に無い。家の図書に置かれている古い魔導書は物好きに売れば金貨五〇枚はくだらないはず。どうか、手を打ってもらえないだろうか」
「古い魔導書なら、この家の大切な資産なのではないですか?」
「良いんだ。クルスがここまで自分がしたいことを伝えてきたことはない。この子がしたいことをさせてやりたいんだ」
ドマリスさんはクルス君の頭を撫でながら言う。
「わかりました。生憎、金品に困っていないので、魔導書で手を打ちましょう」
「ありがとう。秘薬のお礼も必ずさせてもらう」
ドマリスさんは頭を下げた。
「では、キース殿、今日の依頼は誠にありがとうございました」
執事さんは依頼書に印を手書きし、依頼達成となった。
「キースさんっ! 明日からよろしくお願いします!」
クルス君は頭を下げ、微笑んだ。
「うん。明日から頑張ろう」
僕は正式にクルス君の指導者となった。僕に、そんな大役が出来るだろうか。
僕はミルと共に冒険者ギルド本部に向かい、依頼達成の報告を行う。
ゴブリン八〇体の討伐料として金貨八枚、どうやら王都の近くではゴブリン一体銀貨一枚らしい。羽振りがいいな。あと依頼の報酬金貨一〇枚を貰い、ゴブリンが増えていると伝えて家に帰った。
「ふぅ、シトラ、ただいま。明日から三月末まで、王都で過ごすことになった」
「お帰りなさい。キースなら、すぐにでも出て行きたがると思っていたけど、どういう風の吹き回し?」
シトラは僕が手渡した革袋を手に取り、首をかしげる。
「いや、今日の依頼を受けた小貴族の子がすごくいい子でさ、来年の四月から学園に通うそうなんだけど、王都から来たのに何もできなかったら恥ずかしいからって、戦いの指導をすることになった」
「金貨一八枚……。渋い依頼をして来たのね。でも、金貨四〇〇枚を一気に持って来られるより安心するわ。にしても、キースが指導者って……。大丈夫なの?」
「僕はアイクさんに教えられたことを教えるつもりだよ。魔法に頼るんじゃなくて、己を鍛えろってね。だから、剣の振り方とか、体力の増強とかを中心に置こうと思ってる」
「なるほどね。確かに、体が出来ていれば、どんなことにも提要できるものね。で、肝心の報酬は?」
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