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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第四章:王都の騒動

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小貴族

「この、貴族の子息の護衛なんかどうですか? 近くの森中で手ごろな魔物と戦うだけと書いてあります」


 ミルは依頼を指さし言った。仕事の日にちが今日だったのでもう時効になる前の依頼だった。報酬は金貨一〇枚。まあ、貴族の愚痴を聞いて精神を病む可能性があるのを考えると安いかもな。


「最近、仕事をしてないし、肩慣らしには丁度良いかもね」


 僕はDランクの依頼を選び、受付に持って行った。了承され、貴族の家がある場所を教えてもらう。


「郊外の貴族だから、やっぱり小貴族だね」


「キースさんも貴族になっちゃいましたし、ぐちぐち言われたら貴族ですけどっ! って言ってやってください!」


 ミルは僕の背後に隠れながら強い口調で話した。


「はは。まあ、僕の心は鍛えられているから大概のことを言われても、問題ないよ。死ななければどんな仕打ちを受けてもどうってことない」


 僕は肩に乗っているアルブの顎を撫でながら呟く。


 僕達は郊外に移動し、家は広いが整備が行き届いていない屋敷の前にやって来た。お爺さん執事が門前に立っており、箒で掃除をしている。


「すみません。依頼書を見て来ました」


「依頼書……。もしかして、冒険者の方ですかな?」


 執事さんは僕たちに気づくと箒と塵取りを置き、僕たちに頭を下げてきた。


「依頼を受けていただき、大変ありがとうございます。騎士すら雇えぬ状況ゆえ、とても助かります」


 執事さんの姿勢を見る限り、性格が悪い貴族ではなさそうだ。


 執事さんから話を聞き、今回の依頼内容を把握した。


「依頼内容を確認すると、王都から出て、子息の方と西の森に行き、Eランクの魔物を倒す補佐をすると言うことで構いませんか?」


「はい。その通りです。旦那様が倒れ、奥様はすでに他界され、三人兄妹の長男であらせられるクルス様はまだ六歳……。時期頭首となられるには幼すぎて……。食べていくだけで背一杯の状態でして、学園に入るための学問や稽古もままならず……」


 執事さんはペラペラと内部事情を話しまくっているが良いのだろうか。まあ、相手が貴族じゃないから問題ないと思っているのだろう。別に僕が何かするわけじゃないが、弱小貴族を食う貴族もいると言うし、それを危険視しているのはわかる。


「とりあえず、クルス様と言う方が成長のために魔物と戦いたいとおっしゃっていると」


「はい……。やめた方が良いと何度も言っているのですが、どうしても聞いてくださらず、渋々冒険者の方々に依頼を出したしだいでございます」


「わかりました。いったんクルス様に合わせてください。時間もありませんし、移動しながら話しましょう。この状況だと、馬車もないようですし、こちらで用意します。ミル、馬屋から馬車を借りてきてくれる」


「了解です」


 ミルは馬屋に向かい、馬車と馬を借りてきた。


 執事さんと貴族の長男であるクルス様は革製の鎧と短い剣を右腰に掛け、屋敷から出てきた。


「きょ、今日はよろしく頼む」


 クルス様は僕達の髪色を見ても何も言わず、頭を下げてきた。どうやら相当いい子のようだ。


「はい。今日はクルス様の護衛をさせていただく、キースと言います。よろしくお願いします」


 僕は頭を軽く下げる。


「初めましてキースさんと同じく、護衛を付溜めさせていただく、ミルと言います」


 ミルは頭を軽く下げ、クルス様に挨拶した。


「よ、よろしくお願いする」


 クルス様は頭を下げ、ミルにも挨拶を返した。やはりよく教育された少年のようだ。


「じゃあ、行きましょうか」


 僕はクルス様を荷台に乗せ、ミルに荷台に乗ってもらう。僕が御者として移動することにした。


「えっと、僕、敬語を抜いて話すのが苦手なので普通に敬語で話してもいいですか?」


 クルス様は僕たちに話しかけてきた。


「じゃあ、僕たちも話しやすいように話しますね。クルス君と言ってもいいですか?」


「は、はい。構いません」


 クルス君はコクリと頷いた。短めの藍色髪が靡き、微笑む顔が良く見える。


「クルス君はなんで魔物と戦いたいの?」


 ミルはクルス君に直接訊いた。


「その……、焦ってて……。お母様が病気で亡くなって、お父様の方まで……。もし、お父様が目を覚まさなかったら僕が皆を守らないといけないから……、早く強くなりたくて」


「なるほど。クルス君のお父さんは病気なのかな?」


「病気だと言われました。もう、長くないって……」


「今すぐ戻ろうか。まだ生きているのなら、助けられるかもしれない」


「え?」


 クルス君は目を丸くしながら驚いていた。


 僕は森に行かず、クルス君の家に戻った。


「えっと、お早いお帰りですね……」


 執事さんは口を半開きにしながら呟く。


「すみません、執事さん。クルス君のお父さんに合わせてもらえますか?」


「ええ……」


 執事さんは何が起こっているのかわかっていないようだった。


 僕はクルス君のお父さんが眠っている寝室に入った。

 クルス君のお父さんは苦しそうな表情で、汗が酷い。

 手に触れ『無菌』で悪い菌を消す。良い菌も消えてるかもしれないが、悪い菌が消えたのなら万々歳だ。苦しそうにしていた彼は心地よさそうな寝息になる。


「よし、これで問題ないかな」


 僕はクルス君のお父さんの病気を治した。臓器を新たに入って来た悪い菌に傷つけられる前に『無傷』で治す。これで病気になる前の状態に戻ったはずだ。


 僕は寝室を出てクルス君に合う。


「えっと、お父様は……」


「もう、心配ないと思うよ。あとはゆっくり療養すれば完治する」


「えっ! ほ、本当ですか!」


 クルス君は目を大きく見開き、叫んだ。


「うん。もう、焦る必要はない。でも、せっかくだから魔物と戦いに行こうか。帰って来た頃に目を覚ましてるかもしれない」


「は、はいっ! よろしくお願いします!」


 クルス君は大きく頷いた。


 僕たちは馬車に乗り、西の森に向かう。


「僕、魔物と戦ったことないんですけど、戦えますかね?」


 クルス君は西の森の中で僕に訊いてきた。


「じゃあ、僕と打ち合ってみようか」


「よろしくお願いします」


 クルス君は頭を下げ、僕に剣を向ける。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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