王都での仕事
「ありがとう、ミル。君は強いね」
僕はミルの頭を撫でながら微笑んだ。
「キースさんの妻ですからね!」
ミルは胸を張り鼻息を吹く。僕は彼女の尻に敷かれそうだ。
「さっさと食べて元気になりなさい」
シトラも料理を運び、一言呟いた。彼女はこの国がどうなろうと知ったことではないようだ。
僕も国王に悪いが国が滅びようと、妻たちが幸せならそれでいい。そう思える。まあ、ルフス領の皆やクサントス領が無くなってしまうのは悲しいか……。
僕はミルとシトラが作った料理を食し、お腹を満たした。暖かい紅茶を飲み、ほっと一息。
「はぁー、なんか、色々片付いたら気が抜けた……」
「はは……。あ、そうそう、俺とテリアは家に戻る。俺がドロウ家の頭首になってしまったからな。ここの家はキース達に受け渡すし、三人に貸してもらった金貨三〇〇〇枚は家を立て直すために使わせてもらう。その後、随時返していく」
「わかった。それで構わないよ。丁度、家をどうしようかと思っていたところなんだ。街外れで静かだし、案外広い。気に入ったよ」
「そうか。ならよかった。明日にでも、出て行く。キース達はいつまで王都にいる気だ?」
「んー、少なくとも一ヶ月はここにいるよ。雪の状況を見て、冬はどうするか決めるかな。次はウィリデ領に行くつもりだから、楽しみだよ」
「ウィリデ領か。良いところだ。人々は温厚だし、緑は多いし、食事も美味い。治安もいい。老後はあそこに住みたいな」
スージア兄さんはすでにウィリデ領に行った覚えがあるらしく、昔を思い返していた。
「新婚旅行はどこがいいですかね?」
テリアさんはスージア兄さんに聞く。
「そうだなー。どこがいいだろうか……」
スージア兄さんとテリアさんが悩んでいたので、僕は丁度良い品を懐から出した。
「これ、クサントス領にある温泉街の高級宿の宿泊券。僕達は泊ったことがあったから取っておいたんだけど、よかったら使ってよ」
僕は祭りの景品で手に入れた宿泊券をスージア兄さんに渡した。
「いいのか? こんな良い品までもらってしまって……」
「新婚旅行にぴったりだし、良い場所だったから絶対満足できるよ。長い間いがみ合っていたし、疲れてるでしょ。温泉でゆっくりしてきたらいいんじゃないかな?」
「いいですね、温泉。スージア様と一緒に入ったら楽しそうです」
テリアさんは両手を握り、微笑んでいた。
「そ、そうだな。時間が出来たら行くか」
スージア兄さんは頬を掻きながら呟いた。
僕は出された料理をおいしくいただき、シトラとミル、アルブとお風呂に入る。
寝る準備ができたが、僕は眠らず、スージア兄さんが試合中に見せてくれたプルウィウス流剣術の稽古に取り掛かる。
スージア兄さんはイリスちゃん以上の剣の使い手だったのでなにもかも綺麗だった。僕の目の奥に基本の三種類の技がこべりついている。
今、鍛錬せずにいつすると言うのか。
マゼンタ撃斬、シアン流斬、イエロー連斬の三種類を体に覚え込ませる。奥義まで見せてくれたので、いつか、僕も使えるようになりたい。そう思いながら鍛錬を続けた。楽しくてやめられなかった。
朝日が昇るとスージア兄さんとテリアさんがトランクを持ち、家を出るところに遭遇した。
「じゃあ、キース。家に顔を出せとは言わない。だが、たまに手紙でも書いてくれると嬉しい。何か連絡があれば、こちらから冒険者ギルドに手紙を出す」
「わかった。二人共、元気で」
スージア兄さんとテリアさんは軽く頷き、中央の方に歩いて行った。
僕は二名の背中を見て、ちょっと寂しさを覚える。ここ数日間、スージア兄さんと沢山話せてよかった。今まで全然話せていなかったので良い機会だった。
「よし、僕もスージア兄さんと同じくらい剣術を上手くこなせるようになるぞ!」
「その前に朝食にするわよ」
玄関に立っていたのはシトラだった。いつの間に立っていたのだろうか。
「そうだね」
僕はアダマスの柄から手を放し、家の中に入った。
「はぁ……、キースさんとの甘い夜が無いと、身に力が入りません……」
ミルは椅子に座り、テーブルに額を付けてぐてーっと伸びていた。
「そう毎日毎日する行為じゃないんだから、シャキッとしなさい」
シトラはミルの襟首を持ち、背筋を伸ばさせる。
「はうぅ……」
ミルは背筋を伸ばしたあと、すぐにふにゃふにゃになりへたり込む。
「はぁ、キース。ミルちゃんと何か仕事をしてきなさい。そうしないと、二人はグダグダになっちゃうでしょ」
シトラは腰に手を当てながら僕に言った。
「確かに……。ここ最近、仕事をしてなかったな。でも、王都は安全だからさ、冒険者の仕事がほとんど雑用ばかリだってスージア兄さんが言ってた。報酬もあまり期待できないよ」
「人助けが出来れば本望でしょ。お金なんて二の次、三の次、仕事をしないより、した方が良いに決まってるじゃない。ほら、さっさと着替えて朝食を取ったら、仕事に行く!」
シトラの強引な性格により、僕とミルは朝食を取ってすぐに家を追い出された。
「まったく、人使いが荒い……」
「でも、仕事をしないとぐだぐだしちゃうのも確かです」
ミルは冒険者服を身に纏い、肩にローブを羽織っている。
「仕方ない。雑用を受けに行こうか」
「はいっ!」
僕達は王都にある、冒険者ギルド本部にやって来た。見かけだけはどこの冒険者ギルドよりも大きい。城のような見かけで様々な髪色の冒険者たちが行き来していた。
王都から他の領土に移動し、依頼を行う人もいるのか冒険者さん達は案外多かった。中に入ると冒険者ギルド本部と言うだけあって、七領土全ての依頼が掲示板に掲載されている。
「うわ、なんか、他の冒険者ギルドと雰囲気がまるで違いますね……」
「ほんとだね」
多くの冒険者たちが王都以外の依頼を探している中、僕は王都の依頼を見る。
よくあるのが、貴族の護衛だ。貴族の護衛はだいたい騎士が行う者だが冒険者に雇えば、お金が少なくて済むと言うことで依頼として出されているのだろう。
人気が無いのは冒険者がほとんど平民で、貴族からの嫌味などを言われるのが面倒と言うのがある。
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