訪問者
寝室に行くとミルは満面の笑みで起きていた。
「ふわぁーあ。キースさん、おはようございます。昨日の夜は気絶しちゃってすみませんでした。まだまだ実力不足ですね」
ミルは僕のもとにやってきて唇にキスしながら言う。
「昨日の僕は何か失敗したかな? 痛かった? 辛かった?」
「とんでもない、最高でした! もう、死んじゃうかと思うくらい最高でしたよ! 逆にぼくの方が謝らないといけません。キースさんを完璧にご奉仕してあげることが出来なくてすみませんでした。昨晩の雪辱を晴らすべく、今晩もたくさんたくさんしましょうね!」
ミルは昨日より一万倍元気になっていた。シトラも絶好調。二人を可愛がっただけで元気になるのなら、僕も頑張らなくてはいけないなと思うようになる。
一晩過ぎたが、スージア兄さんたちは帰ってこない。イリスちゃんの手紙を読み、同じく手紙を書いた。毎回持って行くのも変だと思い、冒険者ギルドに提出し、届けてもらう。
家に帰り、鍛錬をする。シトラとミルも同じように鍛錬しているが、両者とも動きがぎこちない。筋肉痛にでもなっているのだろうか。
「二人共、腰が引けてるよ。もっと本腰を入れないと鍛錬の効果が半減しちゃうじゃないか」
「き、キースのせいなんだからね……」
「キースさんのせいなんですよ……」
「じゃあ、僕が治そうか?」
「これ、治されたらぼくたちのあそこってどうなるでしょうか……。元に戻るんですかね」
「し、知らないわよ!」
ミルとシトラは吠え、今日は休みにするようだ。
僕はアダマスを振った後、フルーファの動きを確認する。
「えへへ……、えへへ……。あの超イケメンで優しい白髪の男性はぼくの夫なんですよー。昨日なんてもう、本当にすごかったんですからー」
「あら、そうなの。若いっていいわねぇー」
ミルはご近所さんのおばあさんと話し合っていた。シトラよりも会話力があるらしい。一方シトラの方は黙々と掃除をして洗濯までこなす。一名で家事をすべてこなしてしまうのだから、本当に働き者だ。
僕はシトラのもとに向かい、感謝を伝える。
「シトラ、今日もありがとう。何か僕に出来ることは無いかな?」
「別にキースがするようなことは何もないわよ。仕事をして欲しいけど王都の依頼なんて大した物じゃないでしょ。全部他の領がこなしちゃってるし大人しく剣でも振ってなさい」
「確かに……。スージア兄さんたちが返ってこないし、一体何をしているんだろう。聞きに行くにも、僕は立ち入り禁止だろうし……。仕方ない、剣を振るか……」
僕は剣を振りながら体を鍛える。昼に肉を食べ、体作りも入念に行う。午後からは瞑想をしたり、魔法の練習を行った。心を静め、体の魔力を溜めるのだ。
夜になり、夕食を行ってからのお風呂。寝る準備を行う。
「キースさん、今日も、お願いしていいですかー」
「ちょ、ミルちゃん。今日はやめておきましょうよ。さすがに二日連続は体がもたないわ」
「えぇー。ぼく、キースさんならいくらでも受け止められるんですけど……」
「さすが猫族……。夜はまた一段と強いわね……」
ミルとシトラでは夜に違いがあった。ミルは朝よりも元気なんじゃないかと言うくらい。シトラはなれていないからか、何度もしたがらなかった。
どうも、体が心に追いつかないそうだ。さすがにミルだけを抱くと言うのもシトラに申し訳ないので、今日は二人を撫でまわすことにした。
これなら、刺激が少ないと思ったのだ。いつも頭を撫でてるし、時にはキスもしている。それでも、二名は気絶した。ただ優しく撫でながらキスしていただけなのに。痛かったのかな……。相手の気持ちにならないといけなかったか。まだまだ練習が必要らしい。
僕はベッドに横になって眠った。
眼を覚ますと、シトラが微笑みながら僕を見ていた。
「キースの顔、寝ている時は可愛いわね……。昨日は沢山撫でてくれてありがとう。また、飛んじゃったけど……。でも、前よりも辛くなかった。愛されてるって満たされちゃった」
シトラの微笑みは僕に効く。脈打つ鼓動と共に感じる下半身の痛み。
シトラはそれを知ったのか、にやりと口角を上げて僕を朝から元気にしてくれた。途中でミルも乱入してきた。こんな場面、スージア兄さんたちに見せられない……。そう思っていたら玄関の扉がガチャリと空き、全員飛び跳ねる。すぐさま服を着て何事もなかったように扉を開けた。
すると、顔が見えない覆面達が現れた。見るからに悪い者達で、なぜこの家に入り込んだのだろうか。
「え……。誰ですか?」
「隊長、どうしますか?」
「捕まえろ」
黒いニットを首まで被り、顔が全くわからない者が剣を持ちながら言う。
「了解です」
同じく黒いニットを被った者が剣を抜いて切りかかって来た。その時点で敵だとわかる。僕は剣に触れ、重くした。
「うおっ! な、なんだ!」
剣が床に落ち、重すぎて持ち上げられないようだ。
僕は相手が混乱しているうちに、皆に触れていく。
「くっ!」
全員、床に這いつくばるように身を重くした。大量の無色の魔力が彼らに掛かっており、身動きが取れない。
「キース。何があったの?」
服を着替え終わったシトラとミルが、部屋から出てきた。
「いきなり襲われてさ。とりあえず、身動きを取れないようにした。あなた達は一体誰ですか? 何が目的でここまで」
「作戦は失敗だ、自決せよ……」
「了解……」
多くの者が奥歯を噛み締め始めた。
僕は咄嗟に口を開けさせる。毒を口の奥に仕組んで自決する算段なのだろう。そんなことさせない。そう思い、口の中に手を突っ込み、毒が含まれた薬包紙を掴む。唾液が付着した時点で薬包紙が破れ、指先が解けた。
「くっ!」
僕の指先に解けた毒が付着したのだろう。すると……。
『毒をくらったことによりスキル『無毒』を獲得しました』とアルブが言う。
僕の指先に付着した毒は体を腐食させていたが、すぐに完治した。他の者が苦しみ出していたので、すぐさま『無毒』で解毒して全員助けた。
皆を全裸にして持ち物や仕込み武器なども没収した後、縄で縛りつける。
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