ゲテモノ料理
「むぅ。シトラちゃんばかりスージア様に良い子良い子してもらえてずるいですー」
テリアさんはスージア兄さんの背後から抱き着き、甘えていた。
「もう、テリアも甘えん坊だな」
スージア兄さんはテリアさんの唇に軽くキスをして微笑む。
「はうぅ……」
テリアさんは耳まで赤くしてスージア兄さんにメロメロになっていた。
「なんか、スージア御兄さんとキースさんは兄弟って感じがします……」
ミルは僕の体に抱き着きながら言う。
「僕はスージア兄さんほどカッコよくないよ」
「俺はキースより純粋じゃないさ」
僕とスージア兄さんの言葉が重なり合うと、周りから一気に否定される。
今日はスージア兄さんたちの家で泊まらせてもらう。部屋が余っているそうなので、お言葉に甘えた。食事代が宿代だと思えばいいだろう。
「シトラちゃん、一緒に料理を作りましょ」
テリアさんは長い髪をお団子状に纏め、エプロンを身に着けながら言う。
「はい。お手伝いさせていただきます」
シトラも散らばる髪を纏め、エプロンを付けた後、台所に立つ。ミルは家の掃除を行い、僕とスージア兄さんは何もすることが無く、ただ話した。一五年間兄弟だったのに今日ほど語り合った覚えは一度も無かった。
「スージア兄さんとテリアさんはいつから好き合っていたの?」
「もう、子供のころからだな。ずっと思い続けていた。彼女がいたから俺は努力出来たと言っても良い」
スージア兄さんは頬を赤らめながら言う。どうやら、僕にとってシトラのような相手がテリアさんだったようだ。僕もシトラがいたらここまでこれた。彼女がいなかったら、僕はあの家で腐っていたはずだ。ほんと、シトラに何度感謝すればいいのだろうか。
僕とスージア兄さんが話している間に、夕食が出来てしまった。
「今日はキース君とミルちゃんが買って来てくれたお肉を焼いたわ。あと、スープにパン、野菜も茹でて食べやすくしたから、皆でいただきましょう」
テリアさんはゲテモノ料理をテーブルの上に出す。あまりにもおどおどしい。いったい、どうやったらこのようになるのかと言うほど見て目が最悪だ。
「し、シトラ。テリアさんと一緒に作ったんだよね?」
「わ、私は肉をしっかりと焼いたわ」
シトラが焼いた肉は綺麗に出来ている。他の品はテリアさんが作ったのか食べ物から叫び声が聞こえてきそうなほど恐ろしい。
「じゃあ、いただきましょう」
テリアさんは椅子に座り言う。シトラやミル、僕も椅子に座り、皆で一緒に神に祈り、感謝してから食事を行う。
「い、いただきます……」
僕は恐る恐るゲテモノ料理を口にした。あまりにも美味い。
「え、な、なんで……」
「テリアの料理は見かけが悪いが味は美味いんだ。すごいだろ。そんな料理、中々作れない」
スージア兄さんは慣れた様子で、食事を進めた。
「もう見た目が悪いなんてひどいこと言わないでくださいよ。可愛いじゃないですか」
テリアさんは他の者と感性がずれているのか、自分で作った料理が可愛いと言い出した。
僕達は返す言葉が見つからず、苦笑いをするしかなかった。
食事を終え、お風呂に入る。浴槽があるだけのお風呂でスージア兄さんが暖かいお湯を魔法で出してくれた。他の桶にお湯を張り、そのお湯を使って体を洗う。僕とシトラ、ミル、アルブの皆で一緒にお風呂に入り、体を暖める。
僕たちが入り終わった後、スージア兄さんとテリアさんが入り、キャッキャウフフ状態だった。楽しそうな声が居間にまで聞こえてくる。
その間に僕たちは歯を磨き寝る準備を整えた。
「キース、恋人ってあれくらいキャッキャウフフってするものらしいわよ」
「そーです、そーです。ぼくたちにもあれくらいキャッキャウフフってする必要があると思います!」
シトラとミルはスージア兄さんとテリアさんがイチャつく声を聴き、羨ましそうに話しかけてくる。
「他の恋人たちと僕達は別に同じである必要はないと思うけど……」
「でもでも、ぼく達はキースさんの妻なんですよ。妻と言うことはあんなことやそんなことも喜んでがんばっちゃう者のことを言うんですよ。避妊具はまだまだありますし、もっとたくさん愛し合いましょうよー」
「え? 僕、二人と避妊具を使うようなことをしたっけ?」
「あ……。いや、えっと……」
ミルは何か不味いことを言ったと自覚したのか、僕から視線をそらせる。怪しいと思い、避妊具の数を確認しようとするとシトラとミルに止められた。止められたのなら潔く引く。
僕達は軽いキスをしたのち、眠りについた。
次の日の朝、僕は目を覚ました。
「ふわぁー」
隣を見るとぐっすりと眠ってる二名の姿が映る。他の者の家でも十分に眠れると言うことがわかった。
僕は起きてすぐにコップ一杯の水を飲み、そのままイリスちゃんが見せてくれたプルウィウス流剣術の練習を行う。
外は空いている場所が多い。周りに被害が出なさそうな空き地に出て剣を振るう。マゼンタ撃斬と形だけだがシアン流斬は出来るようになった。シアン流斬をもう少し完璧に使いこなせるようになってからイエロー連斬に入るか迷うが、今日は型を少しでも覚えられるようにマゼンタ撃斬とシアン流斬をしっかりと復習する。
アダマスの柄を握り、剣を振るだけで体が良く動く。昨日まで体をあまり動かすことが出来なかったので、型を身に叩き込んでいた。
足の運び方や上半身の使い方、腰の回し方など、何年も研究され、無駄を削った動きが出来るようにイリスちゃんに習っていた。そのおかげか、体が良く動く。
「やっぱり、誰かに教えを乞うのは大切だな。そうじゃないと無駄な動きが多い戦いをしていたことになる。武器ごとに戦い方があり、剣と大剣では全然違う。だから、武器を一つに絞るのか。でも、ごく一部の者は多くの武器を使って戦える。すごいよな……」
僕はプルウィウス流剣術の基本的な型を朝に何度も練習した。すると、一時間経った辺りで、スージア兄さんが外にやって来た。剣に魔石が付いた魔剣を持っており、魔法と剣術が得意なスージア兄さんの専用武器だと思われる。
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