剣術の練習
「もう、やりすぎ。手が血だらけじゃない。ここまでするとか、ほんと馬鹿じゃないの」
シトラは僕の手を掴み、マゼンタ撃斬が成功したさい、全ての血豆が破れ、手の平が血だらけになっていた。あまりにも恐怖だが、僕なら問題ない。でも、シトラはこれ以上は駄目だと言ってアダマスを鞘に戻させた。
「はぁ……。シトラが言うんじゃ仕方ない」
僕は潔く従い、手の平同士を合わせる。いつの間にか再生し、手の平が治る。
その後、夕食を得てお風呂に入り、女子は睡眠。
僕はプルウィウス流剣術の練習を行う。シトラが眠ったので誰にも邪魔されない。
「んー、あんな流れるような動き、した覚えが無い……」
僕はイリスちゃんがシアン流斬を放った時を思い出しながら足を動かす。だが、何度やっても上手く行かない。
僕は見様見真似で行いまくる。何度も何度もこけまくり、全身が土塗れだ。
シアン流斬の練習を行い続けて夜が明けた。マゼンタ撃斬のようにうまくいかず、僕は夜明けの空を見上げながら倒れていた。
疲れすぎて立つ気が起きない。まあ、八秒もしないうちに立てるようになるのだけど。
僕は立ち上がり、お風呂に入る。お湯口から温泉があふれ出ている。攻略の糸口が無いかと凝視し続けるも、ただの水に過ぎず、何もわからなかった。
途中でミルとシトラが入ってきて三人で温まった後、お風呂から出る。
イリスちゃんはまだ寝ているようだ。眠いなら、寝させてあげる方が良い。
僕たちはイリスちゃんが起きるまで、各々がしたいことをして過ごした。
僕はプルウィウス流剣術の練習を行う。
午前八時頃、イリスちゃんが起きてきた。
イリスちゃんは朝食を得て、裏庭で準備運動をしたのち、氷剣を手に取って僕の前に立った。
「じゃあ、今日は私の打ち込みをしっかりと見て行動してね。あと、その剣は危なすぎるから、別の剣にしてくれる」
僕はイリスちゃんに言われ、アダマスを鞘にしまい、切りそろえた木の枝が落ちていたので長く比較的真っ直ぐな木の棒をとり、剣の代わりにする。魔力を流し、少しでも強化した。
「本当の戦いでそんな舐めた武器を持っていたらさすがに死んじゃうと思うけど、まあいいか。じゃあ、攻撃していくよっ!」
イリスちゃんは僕の周りをイエロー連斬の足さばきで移動してくる。加えて剣の構えと攻撃の仕方がマゼンタ撃斬になっていた。
「ルフス撃連斬!」
イリスちゃんは一撃が重いマゼンタ撃斬と連続攻撃のイエロー連斬を組み合わせた攻撃を放ってきた。防ぐのがあまりにも難しい。なんせ、強い一撃が放たれ、防いだと思ったら別方向から全く同じ攻撃が飛んでくる。重い連撃に体が潰れそうだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……。い、イリスちゃんの体のどこにそんな力が……」
「私はマゼンタ撃斬とイエロー連斬を組み合わせたルフス撃連斬を繰り出しただけ。私の火力は低い方だよ。マゼンタとイエローの三原色の魔力を持つ者が行えばさらに強い連撃になる」
「基礎を一つ行うのもまともに出来ないのに……。いきなり二種類は……」
「できないでしょうね。でも、全て基本的な型は昨日見せた三種類しかない。しっかりと分析して自分のものにして」
「は、はい。わかりました」
「じゃあ、次々行くよ!」
イリスちゃんは容赦なく、攻撃を放ってくる。
今度はマゼンタ撃斬の脚運び、手の方はイエロー連斬の構えだ。僕の目の前におり、剣の柄をしっかりと握りしめ、右脚が地面に着いた。次の瞬間、目の前に七連撃の斬撃が生まれた。
「クサントス連撃斬!」
七つの斬撃があまりにも重い。一撃で七つの連撃を放つとか、常人を逸脱している。
すべての攻撃を防ぐなんて不可能で硬い氷の峰が体に当たりまくる。ざっと五回切り刻まれ、弾き飛んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……。容赦なさすぎる……」
初見で見破れる技なわけが無く、イリスちゃんが持っている氷剣に刃がついていたら僕の体は切り刻まれていた。
「さ、キース君、すぐに立って。まだあと五回残っているんだよ!」
「う、うへぇ……」
その後、僕はイリスちゃんに五回切り刻まれた。
もう、全身打撲。でも、多くの技を見てこれだけたくさんの技が使えたら、戦いを有利に進められるのは間違いない。そもそも僕はまだ、基礎の基礎すら完璧に覚えられていないのだ。
それを覚えてから、ようやく次に行ける。
イリスちゃんが使う、シアン流斬とイエロー連斬を見まくり、頭で動きを理解させる。
ただ見ているだけでは無理だったので魔力視を使い、魔力の使いどころなどもしっかりと見た。すると、シアン流斬は足裏と腰に魔力が集中しており、イエロー連斬は体全体に魔力が広がっていた。
イリスちゃんにプルウィウス流剣術を教えてもらってから六日目。
僕は足裏に魔力を溜め、ごく微量の魔力を放出しながら地面の上を滑るように体の動きを制御して脚が重ならないよう、移動する。
このシアン流斬の凄いところが、後方に下がる時にも使えると言うことだ。もう、どこに向かうにしても流れるような脚の動きを行えば、滞りが無く素早く移動できる。
上半身で攻撃をいなし、逃げる守る、攻撃するの三種類から選べる。ものすごく使い勝手のいい剣術だった。
ただ、形だけは出来るものの、僕のシアン流斬はイリスちゃんほど上手くない。練度が全く違い、イリスちゃんは大人、僕は子供くらいの差がある。
「はぁ……。まだまだだな……」
「キース君、六日でマゼンタ撃斬とシアン流斬を覚えられるなんて凄いよ。まあ、実践で使うのはまだまだ練習が必要だけど、覚えられただけでも十分だって!」
イリスちゃんは褒めてくれた。
僕は褒められると伸びる人間なので、練習を頑張れている。でも、明日は列車が来るため、練習は出来ない。
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