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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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二日酔い

 シトラとミルが朝食を作り、皆で一緒にいただいた。今日は体を動かす日にする。


 シトラとミルは橙色武術祭で良い結果を残したものの、まだまだ先があると言い、鍛錬を重ねていた。僕もライアンと戦い、自分の力をある程度把握できた。あとはどのように成長していくかが問題だ。


 僕はイリスちゃんと裏庭に移動した。


「イリスちゃんってプルウィウス流剣術が得意だって手紙に書いていたよね。僕に教えてくれないかな。知り合いの鍛冶師に剣を打ってもらったんだけど生憎、剣の師匠がいなくてさ、素振りもまともに出来ないんだよ」


 僕はアダマスを撫でながら言う。


「今は激しい運動が出来ないから、打ち合いは出来ないよ……」


 イリスちゃんは青白い顏を浮かべながら呟いた。


「うん。剣の型だけでも見せてくれたら覚えるよ」


「じゃあ、その剣、貸て」


 イリスちゃんはアダマスを指さした。


「ごめん、これ専用武器(スペシャルウエポン)なんだよ。だからイリスちゃんじゃ振れない」


「そうなんだ。じゃあ、仕方ない……」


 イリスちゃんは右手を横に差し出した。


「『青色魔法:氷剣(アイスソード)』」


 イリスちゃんの右手に魔法陣が浮かび、夏の終わりごろなのに、寒さからか水蒸気が発生した。突風が吹き、水蒸気が晴れるとイリスちゃんの右手に真っ青な剣が出来上がっていた。


「じゃあやろうか」


 イリスちゃんは剣を持った途端、雰囲気が変わった。完全に騎士の顔だ。


 その表情は天真爛漫だった元気少女とは違い、イケメンな女性と言う言葉がよく似合う。


「お、お願いします」


 僕は剣術の先生に習う面持ちで頭を下げた。


「プルウィウス流剣術の技は七種類。もちろん、七色を意識して作られた型だよ。基本は三種類だけだから、ある程度簡単に覚えられると思う」


「剣術の基本は三種類。全部で七種類……」


「基本の型はマゼンタ撃斬、シアン流斬、イエロー連斬の三種類」


 イリスちゃんは二日酔いが嘘のように動き始めた。


「大きく振りかぶり、一発の砲撃の如く打ち込むマゼンタ撃斬」


 イリスちゃんは氷剣を頭上に掲げ、地面が大きく凹むほど思いっきり踏み込み強風が吹き荒れるほどの振りかぶりを放った。何かが爆発したような一撃で僕の髪が靡く。


 ――い、イリスちゃん怖い……。


「剣の柄を軽く握り、流れる水の如く動きながら相手に切り込むシアン流斬」


 イリスちゃんはシトラとミルの戦いの合間を滑るように移動し、両者の尻尾の毛を軽く切って見せた。両者は身動きが取れず、何が起こったのかすら理解できてない。


「最後、踊り出すかのように拍子よく足を運び、稲妻の如く移動、閃光のように切り込むイエロー連斬」


 イリスちゃんは僕の周りを走り、八連撃の斬撃を与えてきた。もちろん当たっていないが、当たっていたら僕の体は今頃八等分になっていたころだろう。


「髪色でどの型が行いやすいかどうか決まるんだけど……、キース君は白だから、どれがいいかわからないや。とりあえず、好きな型から練習してみよう。うぐ、うげえ……」


 イリスちゃんは朝食後すぐに激しく動き、二日酔いだった為、庭で吐いてしまった。この子、本当に貰い手がいなさそうだ……。


 僕はイリスちゃんの背中をさすりながら、体調が良くなるように休んでいるよう伝える。


「うう、キース君、今すぐ結婚して……」


 イリスちゃんはぼろ泣きしながら僕に抱き着いてくる。


 僕はイリスちゃんを椅子に座らせる。王族と結婚するなんて僕には出来ないと何度言えばわかってもらえるのだろうか。

 イリスちゃんから離れ、プルウィウス流剣術の基本の型を練習する。一番簡単そうなマゼンタ撃斬の練習に入った。剣を頭上に掲げ、思いっきり踏み込み剣を振るうだけ。どう見てもただの打ち込みにしか見えない。


「キース君、駄目駄目。力が全然乗ってないよ。キース君の振り方はただの打ち込み。剣を上げて、脚を踏み込んで、剣を振るうって言う三工程を行っているだけだよ。でも、マゼンタ撃斬はその三工程を全て繋げるの。初めから終わりまで力が伝わらなきゃマゼンタ撃斬にならないよ」


「三工程を一工程に縮めたのがマゼンタ撃斬なのか……。もう何度も繰り返すしかないな」


 僕は剣を持ち上げて踏み込み、剣を下ろす工程を何度も繰り返した。だが、いつまでたってもただの打ち込みにしかならない。まあ、一朝一夕で身に付く技じゃないことはわかっていたが、手が血豆だらけになってしまった。


「この光景、懐かしいな……。斧を振っていた時もこんな風になってた……。ん? ああ。なるほど」


 僕は疲れ切っていた最後の一振りで掴んだ。またしてもアイクさんに感謝しなくては。


「イリスちゃん。見てて」


 僕は斧を振るように剣を大きく持ち上げて流れるように踏み込み、そのままの推進力を乗せた一撃を放つ。


 地面の枯れ草が舞い、巨大な凹みが生まれた。ただの一振りにより、地面が凹むとか訳がわからないが、イリスちゃんの方を向くと目を見開き、微笑みながら握り拳を作り、親指を立てていた。どうやら成功しているようだ。


「す、すごいよ、キース君。一日でマゼンタ撃斬を覚えるなんて……。もしかして天才……」


「いや斧の振り方を思い出したんだ。何千回って重たい斧を振って来た経験が生きた」


「なるほど。確かに斧の振りかぶりと似た動きだった。そこに気づける辺り、やっぱりキース君は戦いの勘が鋭いんだね!」


 イリスちゃんは興奮していた。剣のことになると性格が変わるらしい。


「でも、シアン流斬とイエロー連斬は出来る見当がつかないよ。シアン流斬の滑るような脚運び。あんなの本当に滑っているようにしか見えなかった。イリスちゃん、青色魔法を使っていたわけじゃないよね」


「もちろん。私はただの脚運びだけしか見せてないよ。私が一番得意な型だから、脚の動きすら見えなかったでしょ」


 イリスちゃんは足をぶらつかせながら言う。


「うん……。僕に教えてほしい」


「じゃあ、けっこ……」


 イリスちゃんはまたもや言い出したので、僕は言う。


「自分で考えるよ……」


「ぶぅー。別に良いじゃん、もう結婚してるんだから、一人くらい増えたってさー」


「いや、そう言う問題じゃないでしょ……」


 僕は苦笑いをしながら言う。


 僕はまたアダマスを振ろうとした。だが……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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