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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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縛られない一日

「……やっぱり、私、キース君と結婚するよ」


「また……。その話はしないって言わなかったっけ?」


「だってだって、権力の道具になるなんて嫌だもん。それなら、キース君と結婚して楽しい人生を歩みたいよ! 私、王族なんてまっぴらごめんなの。こんな堅苦しい服も着たくない!」


 イリスちゃんは街中でドレスを脱ぎ始めた。さすがに、目立つ行動をしたらスキルの効果が無くなるので、僕とシトラ、ミルの三人で抑え込む。


 すぐ、近くの服屋に入り、僕達は三時間長の買い物に付き合わされた。もう、魔物の討伐をするよりも断然疲れる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。買い物ってこんなに疲れるっけ……」


「はぁ、はぁ、はぁ……。いや、そんなことないと思いますけど……」


「イリス様が元気過ぎるだけだと思うわ……」


 僕とミル、シトラはベンチに腰掛け、息を整えていた。


「あはははっ! 楽しーっ、楽しすぎるよっ! 堅苦しい生活、親の権力を狙う貴族たち、道具としか見てこないお見合い相手。こんな何も考えず遊んだの、何年ぶりだろう!」


 イリスちゃんは僕が購入した可愛らしい青っぽいワンピースを身に纏い、妖精のように踊っていた。つやつやで長い青髪が風に揺らめく度、彼女の笑顔の綺麗さが際立つ。


「さっ! キース君、もう夕方だけど、どこに行く!」


 イリスちゃんはまだまだ元気で、僕の手を掴み、走る。僕達はクサントス領の中を夜中まで走り回った。

 加えて……。


「もう一杯!」


 イリスちゃんは成人しているので普通にお酒をたしなめる。なので居酒屋に来たわけだが、イリスちゃんが思ったよりも酒豪だった。いや、ただお酒に酔っているのか否かの判断が出来ていないだけにも思える。


「ぼー……」


 イリスちゃんは頬を赤らめた状態で、僕の顔を見てくる。


「お酒に酔った状態でキース君を見ると、いつもの八割増しカッコよく見える……」


「わかる……。なんなら、二.八倍くらいカッコいい……」


「ぼくはキースさんがいつもの八倍カッコよく見えます!」


 女性陣は皆、お酒を飲み、だいぶ出来上がっていた。


 僕はお酒が弱いので、たくさん飲めない。なので、ジョッキ一杯のエールをチビチビとたしなみながら焼き鳥を食しているわけだが、彼女らはお酒が飲めるのか、エールや蒸留酒を次々飲んだ。


「ぷはー、エールって美味しいのね! お城の中じゃ、葡萄酒ばかりでこういう刺激的な飲み物が無いのよねっ!」


 イリスちゃんは酔っ払い、声が大きく、身振り手振りが増えた。


「ほんと、なんでキースはこんなにカッコいいんだろう。困るなー。本当に困る……。これ以上カッコよくなられたら、私がどうにかなっちゃいそう……」


 シトラはお酒を飲むと本音が駄々洩れなるのか、目をうつろにしながら僕を見ていた。


「キースさん、キースさん、キースさん、キースさんっ!」


 ミルは……。まあいつもと変わらないような気がするが、いつも以上に甘えん坊になってしまう。どうやらキス魔らしく、隙あらば、口づけを繰り出してくる。僕の安息の時間は酔っぱらった女性陣に浸食された。


「はむはむ……。主、結婚とは自分の時間を代償に幸せを得ることですよ。ま、私は結婚したことないんですけどねー」


 アルブはまだゼロ歳なのに結婚について語り出す始末だ。飲酒はしていない。


 僕はアルブの顎下を撫で、背中を優しく摩る。すると、アルブは尻尾を振り、消えていた翼が荒ぶる。


 周りを見ても、酔っぱらった大人ばかり。


 ――そう言えば、ルフス領にいたころ、『赤光のルベウス』さん達と居酒屋に行ったときもこんな感じだったな。懐かしい。


「……キースさん、今、別の女の人を思い浮かべましたね」


 ミルのジト目が僕に向けられる。


「え、よくわかったね」


「キースは顔に出過ぎるのよ。で、だれを思い浮かべたの」


 シトラも僕を睨む。


「ルフス領にいた『赤光のルベウス』さん達だよ。昔、お酒の席があったんだ」


「ああ……。あの人達。ふーん、まあ、キースのことだから手なんて出してないんでしょ」


「はは。あの頃はそんなこと考えている暇がなかったよ。シトラのことしか考えてなかった」


 僕はシトラに微笑みを送る。すると、シトラの尻尾が大きく振れ、耳がパタパタと動く。顔はいつも冷徹だが、他の部分がわかりやすいんだよな。


「あ、ああ……。き、キース君、ごめん。めっちゃ気持ち悪い……」


 イリスちゃんは口を押えながら呟く。シトラがイリスちゃんを抱え、女子トイレに駆け込む。一五分ほどするとげっそりしたイリスちゃんが出来てきた。あまりにも気分が悪そうだ。


「イリスちゃん、大丈夫?」


「うう……。大丈夫じゃない……」


 イリスちゃんは顔を髪色と同じくらい青くしながら言う。


「じゃあ、まず水を飲んでアルコールを少しでも薄めるんだ」


 僕はコップに水を入れ、渡す。


「う、うん……」


 イリスちゃんはコップを受け取り、水を飲み干す。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お、美味しい……。やっぱり水が一番、美味しいよ」


 イリスちゃんは微笑み、僕に言う。顔色がほんの少しだけよくなっていた。


 僕たちはお金を払い、家に帰る。ほろ酔いの僕といい具合に酔っているミルとシトラ。お酒を吐き出し、気分が最悪のイリスちゃん。これでお酒をがぶがぶ飲もうと言う気は起きなくなっただろう。


「皆、明日にアルコールを残さないよう、お風呂に入ったらすぐに寝るように」


「はーい」


 三名、それぞれ違う感情の返事をして来た。


 皆、お風呂に入った後、歯を磨き、床に就く。僕は別室の布団に入り、眠る。


 次の日、僕は目をすっきり覚まし、シトラとミルも元気だった。ただ、イリスちゃんだけ、二日酔い状態に陥り、気分が悪そうだ。


「イリスちゃん、完全に二日酔いだね」


「うう……。頭痛い。お酒飲み過ぎた。でも……あんな楽しいお酒、飲まずにいられるわけないよ」


 イリスちゃんは水を飲み、テーブルに突っ伏していた。ずっと寝込んでいる方が体に悪いので、朝食をしっかりと取って運動をして健康的な日常に戻さなければならない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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