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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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本気のライアン

「キースさん、朝一番のキスをさせてください」


 ミルは僕のもとにやってきて言った。


「そんなに何回もキスするの?」


「毎日キスする夫婦は幸せになれるそうなので、毎朝毎晩キスしましょう」


 ミルは僕の方を見ながら熱弁した。いったい何の根拠があって言っているのかわからないが、確かにキスをしたら幸せな気分になる。キスをするだけでミルが幸せになるなら安いものだ。


「わかった。じゃあ、毎朝毎晩キスしようか」


「やったー! ありがとうございます!」


 ミルは僕に抱き着き、軽いキスをして来た。


 僕の心がじんわりを暖かくなり、効果を実感する。


「えへへ、こんな幸せがいつまでも続くと良いですね」


 ミルは微笑みながら言う。


「そうだね。出来ればずっと幸せでいたいね」


 僕はミルの頭を撫でながら言う。


 僕とミルが抱き合っているとシトラが腰を抜かしながら入って来た。


「うう……。まさか、ここまで強烈だとは……」


「ミルにボコボコ殴られていても立っていたシトラが……腰痛?」


「い、いや、これはまだ腰が抜けてて……、力が上手く入らないの」


「なにがあったの?」


「そ、そんなこと言えるわけないでしょ。とりあえず、お風呂に入って身を清めようと思ってここまで一生懸命這って来たんだから」


 僕はシトラを抱き上げ、お風呂のお湯に浸からせた。


「はぁ……。沁みるぅ……。何か体の調子がよくなった気がするわ」


「そんなすぐに効果があるとは思えないけど……」


「あ、そうそう、キース、朝と夜のキスは恒例行事になったから。そのつもりで」


 シトラは手を広げた。どうやら僕の意見は関係ないようだ。僕はシトラに近づきキスされる。


 シトラの頬は赤らみ、恥ずかしがっているのが手に取るようにわかる。


「二人共、今日はクサントス領の領主邸で打ち上げ会が行われるらしいんだ。それに出席してほしいらしいから、ちょっとしたドレスを買いに行こうか。僕はもう自前の燕尾服を持ってる。二人は持ってないでしょ」


「そうですね、ドレスは持っていません。社交場に出るなら必要ですよね。早速買いに行きましょう」


 ミルはお風呂から出ようと立ち上がる。


「ちょっと待ってミルちゃん。そんなに急ぐ必要もないでしょ」


「すぐにでも行って採寸してもらわないといい品が着れないじゃないですか。キースさんの隣に立つ者として安物のドレスで出るわけにもいきません」


「意識が高いわね。まあ、わからなくも無い……。じゃあ、すぐに着替えていきましょうか」


 シトラとミルは体をさっと洗って風呂場から出た。僕も汗を流し、お風呂場から出る。


 すぐに仕度をすませ、福屋さんに向かい、シトラとミルのドレスを見繕ってもらった。

 ミルの条件は丈が今日中に直せて一番高い品だった。その要求で通った品が黄色のドレスで。ミルにとても良く似合っており、金貨一○○枚の品だと言う。

 ミルは即決し、すぐに直しにかかる。ドレスだけではなく、靴も必要なため、ドレスと同じく高い品を見せてもらい、一番壊れにくそうで似合っていた踵が高い靴を購入。こちらも金貨一○○枚。すでに金貨二○○枚を支払うことになったが、ミルは全く嫌がっていない。逆に嬉しそうにしていた。


「ああ、キースさんといつかこの服を着ることになると思うと、今からドキドキが止まりません」


 ミルは飾られているウエディングドレスを見ながら言った。まだ結婚式を挙げるなんて早いと思うので、保留にしているが、いつかできたらいいな。


「キース、どうかな?」


 シトラは藍色っぽいドレスを着ていた。冷徹さが際立っているものの、レッドダイアモンドのおかげで温かみを感じる。靴も黒っぽく大人の雰囲気を感じた。


「似合ってるよ。ただ、胸がパツパツだけど……」


「ここは直すから問題ない。気にしないで」


 シトラも購入するドレスを決めたようだ。


 両者は料金を払った。お店の方が夜までに仕上げてくれると言うことなので僕達は後夜祭を楽しむことにした。朝食を得損ねた僕達は昼間に有名なカレー屋さんに入った。


「おおおおっ! 橙色武術祭で優勝なさったシトラさんと……、えっとえっと……」


「キースです」


「そう! キースさん! ようこそお越しくださいました!」


 店員さんはいつも通り元気で僕の名前を忘れていた。やはり僕は人に覚えられにくいらしく、少々悲しい。


「後夜祭限定、超特大カツカレーです! ジョッキラッシーもどうぞ!」


 定員さんは僕達の前に何人前かわからないくらいのカツカレーを置いてきた。ジョッキに白いラッシーが入っており、もう美味しそうで仕方ない。


 僕とシトラ、ミル、アルブの四食あり、全て超特大。食べきれるか不安になるほどだが、お腹が空いている僕達にとっては問題ない。最悪アルブに食べてもらえれば問題ない。


「いただきますっ!」


 僕は神様に祈った後、感謝の言葉を発し、スプーンを手に取る。特大カレーライスを食し、僕達はお腹をパンパンに膨らませた。


「もう、いつまでちょっかい掛けてくるんですか。私は巨大なカレーライスを食べに来たんです。助けてもらったのは感謝していますが、あなたと拘わる気はありません」


 カレーライスの名店に入って来たのは橙色武術祭準決勝でミルと戦ったティナさんだった。すぐ近くにいたのはライアンの姿があり、好みの女性であるティナさんをまだ諦めていないようだ。


「いやいや、拘わりたいだなんて考えてないぜ。俺はティナさんと普通におしゃべりがしたいなーって思ってるだけだから。特大カレーも奢るし、話相手にもなるよ」


「私は奢ってもらう気なんてありませんし、自分で払えます。ライアンさんと話すことなんて特にありません」


 ティナさんはテーブル席に座り、特大カレーを頼んだ。ライアンもティナさんの近くに座り、特大カレーを注文する。 


 勇者が来たと言うことで注文の上下が起こり、すぐに提供された。


「はぁ、あなたといると目だって仕方がありません。目立つのやめてください」


「そんなこと言われても、俺は橙色の勇者なんだから仕方ないじゃないか」


「なら、橙色の勇者でも辞めたら良いんじゃないですか。そうしたら付き合ってあげてもいいですよ。ま、そんなこと……」


「なるほど、勇者を辞めたら付き合ってくれるんだな! じゃあ、今すぐ辞めてくるぜ!」


 ライアンはお店を飛び出していった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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