アダマスの性能
「キースさん、キースさん。ぼく、キースさんが買ってくれた下着、着けてるんですよ」
ミルは浴衣の胸元を開け、真っ白で綺麗な胸当てを見せてきた。
「……う、ううん。すぴーすぴー」
僕はお酒にめっぽう弱かったらしい。
「え……?」
シトラとミルは拍子抜けた声を出し、わなわなと震えた。
僕はその後どうなったのよく覚えていない。こういうのをへたれと言うのだろうか。
「ふわぁ……。良く寝た……。えっと……、何があったんだ」
シトラとミルは両者共に裸になっており、気絶するように眠っていた。
「アルブ、昨日、何があったか覚えてる?」
「私の口からはとてもとても……。ですが、両者共に幸せそうだったので良かったのではないですか」
アルブは首を振りながら言う。昨日いったい何があったと言うのだろうか。シトラとミルが起きたら聞いてみるか。
僕は朝早く起きて鍛錬を行った。そのままフルーファとアダマスを持ち、外に出る。
「えっと。まずは挨拶をしてもらおうか」
僕はフルーファとアマダスを向かい合わせ、重ねる。おままごとみたいなことをしているなと思いながら、武器にも魂がいると言うのなら、挨拶は必須だ。二本の武器は心を通わせてくれただろうか。
「とりあえず役割として、フルーファは大量の敵、又は大きな敵、魔力が多い敵に対して使う。アダマスはまだ性能が良くわからないから、対人か、素早い攻撃をしてくる相手に使う」
僕は左腰にアダマスを掛け、左肩側から取り出せるようにフルーファの持ち手を右肩下がりにして背中につける。そうすれば一気に二本取り出せる。まあ両方使うなんて相手が相当大きな魔物か、大量の攻撃を放ってくる敵くらいだろう。
僕はとりあえず、アダマスの性能を知りたかったのでアダマスを鞘から引き抜いた。するととても綺麗な剣身が見える。
「えっとドリミアさんが言うには魔力を溜めこんで放つとか言ってたよな……。どれくらいの魔力を溜めこめるんだろうか」
僕はアダマスの柄に無色の魔力を流していく。
すると透明なダイアモンドが光る。一個、二個、三個と光が増えて行った。
「一瞬で増やせるのは三個くらいか。あとは時間が掛かるな。どうやったら放出されるんだろう……。普通に振っていたら放出されるなんて使いにくいし、何か方法があるはず」
僕はドリミアさんが送ってくれた手紙を見て使い方を調べる。
「えっと……。魔力が溜まるたび、剣の切れ味が増す。ただ振っているだけでも切れ味が上がっていき、八個全てが光を放った時、切れないものはほとんどなくなる。こわ……」
八個のダイアモンドが光を放つまで魔力が溜められたらフルーファ以上の切れ味をほこるそうだ。
「ダイアモンドに魔力が溜まった状態で鞘に戻し、強めに押し付けると魔力放出状態になる。振るだけで高密度の魔力の斬撃を放てる。初激が最も強く、弱まっていく。この間、魔力を溜めることは出来ない。もう一度鞘に戻し音が鳴るまで押し込めば解除される」
「へえ……。そう言うふうに使うんだ」
僕はアダマスを鞘に戻し、音が鳴るまで押し込んだ。カチッという金属音が聞こえた。これでいいのかな……。
僕はアダマスを鞘から抜く。すると剣身に無色の魔力が纏われており、安定している。
「魔力の斬撃ってどんな感じだろう……。空に放つか」
僕はまっさらな空に向かってアダマスを振るった。すると、三日月状の斬撃が放たれる。僕にとっては白っぽく見えるが無色の魔力なので見えない斬撃を放てる近距離、遠距離両様武器だと言うことがわかった。魔力の放出は『無反動砲』に近しいと思われる。
「なんか……、僕が使うのはもったいなすぎるな。でも、ありがたく使わせてもらおう」
僕はアダマスを鞘に戻し、魔力停留状態にする。
「ダイアモンド八個が光った時の切れ味が知りたい。取り合えずたくさん振って魔力を溜めるぞ」
僕は鍛錬に汗水たらし、雑草を狩って行った。ときおり見える蚊を切り割き、害虫駆除に努める。ざっと八分振り続けたら八個の魔石が最大まで光った。
「最大火力を出すためには八分かかるわけか。強敵と戦っている間に八分は長いかな……。使いどころが大切だ。にしても、八個が光っているアダマス。神々しすぎる……」
僕は何か試し切りをしたくて仕方がなかった。
「ここの家はしばらく訪れないし、無駄な枝は切っておいた方が良いよな」
僕は庭の周りに飢えられている木の枝が鳥の巣のようにボサボサに見えたので綺麗に切りそろえようと思い、アダマスを振るう。
「ああ……。どうしよう。これはちょっと普段使いをするのは怖いな……」
僕は何も切った感覚が無いのに、無駄な枝が切れていた。フルーファじゃ、絶対に出来ない。なせ、下からそっと持ち上げるように当てただけだ。豆腐を箸で切るよりも簡単に切れる。
「これ、人に当たったらただじゃすまないぞ……」
僕は庭の木を綺麗に切りそろえたあとアダマスを魔力放出状態にした。アダマスの剣身に纏わりつく無色の魔力の質があまりにも高く、大空に向かって何度斬撃が出るか調べた。
「ふっ! はっ! おらっ!」
一〇回振ったところ、八回出たので、ダイアモンドの数ぶん、斬撃を放てるようだ。
「良し、何となく使い方が見えてきた。人には絶対に向けられない武器ってことは確実だな」
僕はアダマスを鞘に戻したあと大量の汗を掻いたので、朝風呂に入る。
「ふぅ……。いいお湯……」
「し、失礼します……」
僕がお風呂に入っていると腰が引けているミルが入って来た。薬指に黄色の宝石がついた指輪をしており、彼女が少々大人っぽく見える。
「キースさん、昨日は調子に乗ってすみませんでした。ミルは僕に頭を下げてきた」
全く訳がわからない。
「えっと、何を謝ってるの? 僕、昨日ミルに何かした?」
「……いやあ、そのぉ、何がとは言いませんが、ちょっと貸してもらったと言うか」
ミルは指先を突きながら呟いた。
「僕が何を貸したのかわからないけど、昨日は寝てしまってごめん。今日の夜はお酒を飲まないようにするから」
「あーっと、そのー、当分は十分かなーと言うか、動かされたら死んじゃいそうなので」
ミルの発言はよくわからなかった。ただ、彼女は気にしなくていいと言うので、そうさせてもらう。
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