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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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求婚

 僕達は座り、運ばれてくる料理を待つ。


 運ばれてきたのは長芋と豆腐、卵料理だった。前菜は胃に負担がかかりにくい料理でとても美味しかった。スッポンのスープ、鰻のかば焼き、牡蠣の蒸し焼きなど、高級食材が並び、食べるたびに体が元気になっていくのを感じる。


「ほんと、ここの料理は食べるだけで元気が出てくるよね。すごいよなー」


「ほ、ほんとね……。だ、大丈夫かしら……」


「シトラさん。今日は体力をつけておかないとやばい気がするので、しっかりと食べておきましょう! ぼくの勘がそう言っています!」


 ミルはしっかりと噛み締めながら食べる。


「そうね。体力を付けないと本当に明日動けなくなっちゃうかもしれない」


 前菜の後に軽くお腹を満たしたあと、主菜が来た。高級霜降り肉のステーキが置かれる。


 僕達は肉を噛み締め、心の底から美味しさを得た。言葉にならない美味さで、貴族が来たがるのもわかる。主菜の後、デザートが配られた。今日はミルの誕生日と言うことで大きなケーキを用意してもらった。短い時間だったのに急いで用意してくれたらしい。


「じゃあ、今からちょっとした晩酌にでもしようか」


 僕はアイクさんから貰った葡萄酒を取り出す。


「お酒がやっと飲めるんですね!」


 ミルは尻尾を振りながら嬉しそうにしていた。


「飲めると言っても無理して飲んだら駄目だよ。飲める者と飲めない者がいるんだ」


 僕はグラスを用意してもらい、葡萄酒を三センチほど注ぐ。そのあと大きなケーキを四等分に分けた。


「じゃあ、ミル。誕生日おめでとう!」


「誕生日おめでとう!」


 シトラとアルブも大きな声で言う。


 僕達はミルの誕生日を祝い、グラスを軽く当てあい、人生初めてのお酒を飲む。


 僕はお酒を口に踏んだ。すると舌に乗る渋みと鼻から抜ける揮発性の液体、葡萄の良い香りが広がるのを感じる。


「ふぅ……。昔、アイクさんのお店で飲ませてもらった疑似葡萄酒の味がする……」


「ほんとですね。でも、揮発性の液体がふわっとなるので匂いがとてもいいです」


「うん。私の鼻でも全然嫌な臭いを感じない。すごくいい香り」


 僕達は葡萄酒を飲み、ケーキを食す。渋みと甘みが口の中に混ざり合い、飽きない美味しさになっている。ケーキは果実たっぷりで、ミカンやマンゴーなどの橙色の果物が多かった。


「じゃあ、ミル。僕からの誕生日プレゼントを送るよ」


 僕はずっと隠していたリングケースを手に取った。


「え、ええ、えええ……。な、なんですか、なんですか!」


 ミルは僕が持つ小さな箱を見るや否や声を荒げる。


「ミル、誕生日おめでとう。これをなんて言って渡したらいいか迷ったけど、もう言っていいのかな」


 僕はミルの前で立ち膝になる。そのまま箱を開け、イエローダイアモンドが付けられた指輪を見せる。


「ミル、僕と家族になってください」


「………………」


 ミルは僕の発言を聞き、正座の状態から後方に倒れた。


「ミ、ミル、大丈夫?」


 僕はミルを抱き起こす。


「は、はわわ……、はわわわわ……。えっと、それってつまるところそう言うことですか?」


「うん。そう言うことだよ。僕と結婚してほしい」


「う、ううううううぅぅ……。はいっ!」


 ミルは僕に抱き着きながら尻尾を振る。


「はあー、ミルちゃんに先を越されちゃったなー」


 シトラはブツブツと言い始めた。


「シトラ、結婚しよう」


 僕はシトラの方を向き、声を出す。


「…………バカ。いきなり二人に求愛するってどういうつもり……」


「どうもこうも僕は初めからこうするつもりだったよ。ミルの成人の日と決めていたんだ」


「はぁ……、私にも綺麗な品があるのかしらー」


 シトラは少々泣きながら言う。


 僕はミルの頭を撫でる。その後、シトラの方に向かい、リングケースを開けた。すると赤みが強いレッドダイアモンドが付けられた品が露になる。


「こ、これ……。二カ月くらい前に取ったダイアモンド……」


「うん。ミルの方も実際は貴重な品だったんだ。まあ、シトラにはバレてたけど、これを加工してもらって作ったんだよ」


 僕はシトラの左手の薬指に指輪をはめる。すると、指輪の大きさが全然違った。


「もう、何してるのよ。カッコ付かないわね……。あれ?」


 シトラが手を握ると指輪が縮み、指の太さに丁度合うようになった。


「す、すごい、指輪がちゃんと合うようになった」


「キースさん、キースさん! ぼくの指にも嵌めてください」


「今行くよ」


 僕はミルの左手の薬指にイエローダイアモンドがついた指輪を嵌める。やはり指の太さがあっていなかった。ぎゅっと握ると指輪の大きさが縮まり丁度合うようになる。


「ぼく、お嫁さんになっちゃいました……。うわーいっ!」


 ミルは僕に飛びついてきた。尻尾をブンブンと揺らし、耳がピコピコと動いている。そのまま僕の唇を眺めていた。


「キースさん、今、キスしてください……」


「……わかった」


 僕はミルの顎に人差し指を置き、軽く口づけをする。


「ああ……、ぼくは世界一の幸せ者ですぅ……」


 ミルは僕にぎゅっと抱き着いて言う。


「主、私にはないんですかー。私だっていっぱしの乙女なんですよー」


 アルブは尻尾を振りながら言った。まだ、生後二か月足らずなのに……。


「アルブはまだゼロ歳なんだから、何も無いよ」


「うえーん、主、酷いー」


 アルブは駄々をこねた。珍しい。


「じゃあ、撫でてあげるから、これで我慢してね」


 僕はアルブの頭を撫でる。すると用意に大人しくなり、テーブルの上で寝そべった。


「僕からの贈り物は終わったけど、シトラからはあるの?」


「私はこれよ」


 シトラはミルに髪留めを渡した。


「可愛い! ありがとうございますっ!」


 ミルは前髪を止めている紐をほどき、シトラから貰った髪留めを使って止めた。


「うん、良く似合ってる。すごく可愛いよ」


「えへへー、ありがとうございます」


 僕達は贈物を送り、ケーキと葡萄酒をたしなんでいたのだが、思考がぼんやりして来た。


「う、ううん……。何か、眠たくなってきた……」


 僕は視界がしゃばしゃばする。


「キースさん、キースさん、ちゅっちゅー、もう我慢できませーん」


 ミルは僕の頬にキツツキみたくキスしていた。


「はあ、二人共酔っちゃってるわね。まあ、私も酔っちゃってるんだけど……」


 シトラは素面のようだが、頬がほんわりと赤くなっている。


「すぴーすぴー」


 アルブは疲れたのか眠りこくっていた。


「キース、今日はするの? しないの? 私達は準備万端だけど……、あなたが決めて……」


 シトラは浴衣を少々着崩す。黒色の肌が透けた厭らしい胸当てを僕に見せながら聞いてくる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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