相棒の域
僕の体を受け止めたのは地面に突き刺さっていたフルーファだった。どうやら、お腹が空いているらしい。
勇者の魔力が食べたくて仕方がないようだ。無茶を言ってくれるが、仕方がない。真面な攻撃ではあのライアンに傷一つ付けられない。なら、ブラックワイバーンをも切り裂くフルーファに頼るしかない。
僕はフルーファの持ち手を握り、肩に担ぐ。すでに斧の形状なので、他の人から見たら持ち手が二メートルを超える大きな斧を持った白髪の青年に見られているはずだ。
――槍の攻撃を掻い潜り、フルーファでライアンの体内にある魔力を食い尽くす。今日中に終わればいいけど。
「ライアン、ごめん。君を倒すのは時間が掛かりそうだ」
「ははっ! 言うじゃねえかっ!」
ライアンは地面を蹴って移動した。もちろん何も見えない。魔力視だとしても残像がほぼ残っていない。これじゃあ、瞬間移動をしているのと何ら変わらなかった。ライアンの攻撃の傾向から、後方と判断し、フルーファを振るう。
「うおっ!」
攻撃を読めたおかげで、ライアンの体にフルーファの刃が迫る。
「ふっ!」
ライアンはフルーファを蹴り上げた。そのため、ライアンの体を切り裂くことは出来なかった。だが……。
「ちっ! それ、触っただけで魔力を食うのかよ」
フルーファはライアンに蹴られてもなお、魔力に食らいついていた。どれだけお腹が減っているんだ。
今まで気づかなかったが、フルーファは振れた者の魔力を食うらしい。つまり、僕の魔力も食らっているわけだ。でも、僕の膨大な魔力量のおかげで何ら問題なく使用できているっぽい。
先ほどもライアンの攻撃時、魔力を削っていたようだが、ライアンは気づいていなかった。多分、一定割合を削る効果があるのだろう。
今のライアンの魔力量が膨大すぎるため、仮に最大で八パーセントを削るのだとしたら八万人中、六四〇〇人の魔力を食らったことになる。大食いにもほどがある。
まあただの憶測でしかないため、わからないが、フルーファがライアンの魔力を沢山食らってご満悦だと言うことはわかる。
「魔力を削られるのが一番きついんだよな……。全く、とんだ荒くれの武器を使ってやがる」
「師匠の贈り物でね。ブラックワイバーンを切り割ける威力を持った大食い武器だよ」
「燃費が悪そうな武器だな……。だが、キースが使えば弱点なく使える優れものか」
「もう、相棒の領域だね」
僕はフルーファを体の周りで回し、全方位からの攻撃に対処できるよう想像しながら予行練習をする。ライアンは警戒しており、靴裏をじりじりと動かしていた。予備動作が終わり、持ち手を握りしめた。
刃を上に向けた状態で持ち手の穂先を地面擦れ擦れに保つ。
「『橙色魔法:グランスペア』」
ライアンは直接触れるのは危険だと判断したのか、遠距離攻撃に完全に変えた。地面から大量の槍が突き出し、射出される。
僕は亜音速で飛んでくる槍をフルーファで叩き切り、ライアンのもとに走る。
「くっ! やっぱり止まってくれないか」
ライアンが放つ槍はライアンの移動速度よりも遅く、目で追えるため場所さえわかれば回避できた。
ライアンのもとにたどり着いた僕はフルーファで魔力を削りに転じる。命を削り取る死神のように、ライアンの力の源である魔力を抉る。
「触れられないとなると回避か」
ライアンは振り下げ攻撃を回避した。その瞬間に僕は持ち手を、体の周りを一周させるように捻る。すると持ち手がライアンの体に直撃し、彼が弾き飛ぶ。
フルーファが食べた橙色の魔力が無色の魔力になり、僕の体の中に入ってくる。相当な魔力量だ。黒色のマクロープスを切っても魔力を吸収している感覚を得た覚えが無いのに、超勇者状態ライアンを攻撃したら魔力量が多すぎて感じられた。
どうやら、フルーファは食べた魔力を持ち主の三原色の魔力にしてしまうらしい。アイクさんが使っていたらマゼンタの魔力が送られてくるのだろう。僕の場合は無色。無色の魔力ならいくらでも蓄積できるし、このまま攻め続けられる。
僕はライアンが飛んで行った方向に走った。
ライアンは地面を転がりながら体勢を立て直し、僕目掛けて走ってくる。
「おらっ!」
遠くからちまちま攻撃するのは性に合わないのか、握り拳を打ち込んできた。
「ふっ!」
僕はライアンのアイアンナックルにフルーファをぶつける。爆発の威力は変わらないが、拳の威力が上がっていた。フルーファだけでなく、僕の体も弾き飛ばされる。
フルーファの刃を地面に叩きつけ、即座に停止。地面を強く蹴り跳躍の威力をフルーファの振りかぶりの力へと変換しながら、ライアンへと攻撃する。
「くっ!」
ライアンは回避が遅れ、両手の拳で刃を受け止る。その反動で地面が陥没した。二発の爆発だけではフルーファは離れてくれない。ライアンの拳の一撃が加わらないと弾き飛ぶほどの威力が出ないようだ。
――このまま潰す!
僕は持ち手がしなりそうなほど思いっきり地面に向って力を加えている。だが、ライアンの『身体強化』は魔力を奪いながらでも解除されなかった。
「『橙色魔法:グランスペア』」
ライアンは靴裏を地面に叩きつけた。すると、魔法陣が展開され、至る所から槍が突き出してくる。回避せざるを得ないほどの数が突き出してきたため、フルーファを持ちながら後方回転。攻撃を躱しながら距離を取らされた。
「あぶねえ……。でも、魔力をゴリゴリ削られちまったな……」
ライアンは拳を構え直す。
僕は先に動き、ライアンに的を絞らせない。神速は早すぎるあまり、位置の制御が難しいはずだ。なら、僕が動いていればそう簡単に使えないはず。失敗すれば大損害になるからな。でも、一般人の考えだ。ライアンは……。
「攻撃される前に倒す!」
ライアンは脚に膨大な魔力を溜め、瞬間移動かと一種思うほどの速度を出し、僕の前にやって来た。速度と力が合わさればとんでもない火力が出る。それはわかっていた。
この攻撃を回避するなんて光に当たる前に逃げろと言っているようなものだ。
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