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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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ライアンとの戦い

 午前七時、いったんお風呂に入り汗を流したあと、シトラの作った美味しい朝食を得る。戦う活力を得た。


 僕は手入れをしたフルーファを持ち、シトラとミル、アルブと共に闘技場へと向かう。街は壊れているが、屋台が大量に並び、後夜祭の準備が完了していた。


「僕とライアンの戦いが終わったら後夜祭か。ほんと祭が好きな領土だな。じゃあ、シトラ、ミル。僕は橙色の勇者と戦ってくるよ。二人は観覧席で応援してて。アルブも見ててね」


「はいっ! ぼくはキースさんを応援し続けます!」


 ミルは大いに張りきり、手をブンブン振っていた。


「応援してる。勝たれたら困るけど、負けられても困る。どっちにしろ困るなら、勝ってきなさい。負けたら慰めてあげるわ」


 シトラは微笑みながら言った。


「主、戦いを優位にするスキルを使用しなくてもいいんですか?」


「うん。僕は自分の力だけで戦ってくるよ。スキルを使ったら初見殺しにもほどがある。対等にならないと意味が無い」


「そうですか。では、応援しています」


 アルブは翼をはためかせ、言った。


 僕と三名はいったん別れ、僕は闘技場の控室に入る。


「失礼する。キース君、おはよう」


 控室にべニアさんが入ってきた。


「おはようございます。えっと、ライアンは帰ってきましたか?」


「ああ。帰ってきた。両頬に平手打ちを何発も食らったのか、真っ赤に腫れていたよ。だが、体調に問題は無い。今日は思う存分戦ってくれ。どちらが勝っても領民以外は何も言わん」


「領民に疎まれるのが一番嫌ですけど……。まあ、僕が出せる全力で戦いますよ」


「ライアンもキース君と戦えるのを楽しみにしていた。ぜひ、有意義な試合を楽しんでくれ」


 べニアさんは呼ばれたら来てくれと最後に言い、控室を出て行った。


 午前八時。会場がざわつきだしたころ、司会役の女性が音声を増大させる魔道具に話しかる。


「皆さんのおかげで今年の橙色武術祭中に起こったマクロープス襲撃事件を何とか乗り越えられました。クサントスギルド員一同、感謝の気持ちでいっぱいです。いつもなら後夜祭中の八月三一日ですが、八月の終わりに橙色武術祭で最も熱い戦いが行われようとしています。皆さん、準備は良いですか!」


「おおおおおおおおおおおおっ!」


 会場の人々は大きな声を上げる。


「では、登場してもらいましょう。第八八八回橙色武術祭男の部優勝者、キース・ドラグニティさんです。皆さま、大きな拍手でお迎えしましょう!」


 会場の多くの者が手を叩き、僕の入場を労ってくれた。


「続いて現橙色の勇者。ライアン・ハートフルさんです!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ライアンの名前が出るだけで、会場は大盛り上がり。


 僕にとってはあまりにも不利な環境だ。なんせ、多くの者がライアンの勝利を願い、彼を応援している。こんな状況で上手く戦えるか不安だが、僕は全力を出すだけだ。そう、心に言いながら息を整える。


「ふっ!」


 ライアンは特別席から飛び降り、闘技場の試合場へと靴裏を付ける。


「いやー、リーフさんと相性が良すぎて死ぬかと思ったぜ。色々迷惑をかけたが、今日は楽しもう! 俺は元気元気、超元気! やる気十分、勝つ気満々! よしっ! やるぞー!」


 ライアンは大声を出しながら、戦う意欲を見せる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ライアンが大声をあげただけで、会場がドカンと爆発したかのような大声が上がる。


「はは……、僕を応援してくれているのは三名くらいか。まあいい、集中集中」


 僕はシトラが誕生日にくれた黒色のグローブを嵌め、手首のベルトをしっかりと締める。フルーファの持ち手を握り、横から抜くようにして前に持ってくる。


「キースもやる気満々だな。そう来なくっちゃ!」


 ライアンはアイアンナックルをぶつけ合わせ、火花を散らし、爆発音をかき鳴らす。


「では、制限時間は無制限。場外も無し。両者のどちらかが戦闘不能になるか、負けを認めるかによって試合が終わります。気絶も戦闘不能と見なしますので、そのつもりで!」


「ああっ!」


「はい」


「では、僭越ながら試合開始の合図をさせていただきます。三、二、一、始め!」


 司会者の女性が声をあげる。


「ふっ!」


 僕とライアンは互いに飛び出した。


「まずは、挨拶の一発っ!」


 ライアンは視界にとらえられる速度で動き、僕目掛けて握り拳を打ち込んでくる。


 僕はフルーファをアイアンナックルめがけて振り抜く。


 がちんッという低い金属音が鳴った瞬間、ぼがんッという耳が裂けそうな爆発音が鳴り、黒い爆炎と共に僕はふきとんだ。


 空中を飛び、靴裏をすり減らしながら、着地。


「次々行くぜっ!」


 ライアンの攻撃は止まらず、追撃を放ってくる。僕はもう一度フルーファで切り掛かった。すると、アイアンナックルとフルーファが合わさった時、またもや爆発が起こった。だが、何かしら魔法の類をしようしているわけではなく、何かしらが爆発の効果を利用していた。


 僕は巨大な爆風と爆炎に身を焼かれながら、後方に弾き飛ぶ。地面を数回転がり、力が分散したと感じたら、すぐに立ち上がった。


「爆発しているのは、そのアイアンナックル? ライアンの専用武器(スペシャルウエポン)なの?」


 僕は気になったのでライアンに聞いてみた。


「ああ。爆裂拳と言って、触れた瞬間に相手の魔力を利用して爆発する。相手の魔力量が多ければ多いほど、爆発の威力が変わると言う武器だ」


 ライアンの専用武器は長距離武器との相性は取れないが、中距離までなら拳の最大の弱点である攻撃範囲の狭さを克服できる。加えて、体が吹き飛ぶような火力が出る拳を打ち込まれたら僕の生身もどうなるか。


「武器にぶつかっただけで、巨大な爆発が起こるなんていったいどれだけの魔力量をほこっているんだよ。空気がピリピリしてやがる。だが、それがまたいい……」


 ライアンは足踏みしながら、体を温めていた。彼は橙色魔法の中で一番使い勝手がいい『身体強化』をまだ使用していない。僕と合わせているのか、はたまた初っ端から魔力を大量に消費する『身体強化』を嫌ったか。どちらにしろ、あの拳に直接触れるのは避けた方が良い。


 僕はフルーファを大剣の状態から斧の状態へと変形させる。


「キースの武器も専用武器だろ。そんな代物見た覚えが無いぜ」


「そうだよ。大剣と斧に変形が可能なんだ。あと、相手の魔力が多いほど、切れ味が増す」


「なるほど。馬鹿力のキースには丁度良い武器ってことだな」


「馬鹿力はお互い様でしょ」


 僕は斧を体の周りで回し、準備運動をする。大剣よりも持ち手が増えるぶん、取り回しが可能なのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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