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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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黒いマクロープスの相手

 ――そう言えば、アルブはいったいどこに行ったんだ。さっきから姿が見えないし、大丈夫かな……。


 僕は空を見た。アルブの姿を魔力視で探す。すると、空に白く光る物体がいた。


「アルブ。いったい何をしているの!」


「主、奴らの目的がわかりました」


「え? 目的って何なの?」


「私は空から、多くのマクロープスが何に反応を示しているか調べていました。すると、男は殺しにかかり、女は抱きかかえて攫おうとしています」


「女を攫おうとしている……。繁殖行動? そんなゴブリンやオークみたいな行動をとる種族なの?」


「どうでしょうか。でも、女を無暗に殺そうとしてないので、可能性は高いです」


「さっき、ミルが襲われてたけど……」


「ミルさんは中性的な顔立ちですから、雄と間違われたんだと思います」


「……このことは黙っておこう。ミルが怒りそうだ。えっと、アルブ。黒いマクロープスはどこにいる?」


「今、各一個体に五名が戦闘中です。一番危ない者のもとに案内します」


「よろしく頼むよ」


 僕はアルブを追い、黒いマクロープスと戦闘している者のもとに向かう。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


「おらおらおらおらおらおらっ!」


 マクロープスと戦っていたのはオリーザさんだった。全身に打撲根があり内出血を起こしている。だが体力を奪う拳をマクロープスに打ち込むことによって持ちこたえていた。


 ――こういう時って助けて良いんだっけ。獲物を横取りしたら、後で何か言われないかな。


「オリーザさん。手助けしても大丈夫ですか?」


「悔しいが! 倒しきる前に体の限界がきそうだ!」


 オリーザさんは叫び、助けを求めた。


「わかりました。助けます! そのままマクロープスを引き付けておいてください!」


 僕はマクロープスの背後に回る。


 今、オリーザさんとマクロープスが互いに拳を打ち合い、周囲に衝撃波をいくつも広げさせている。

 

 フルーファを振ったらオリーザさんの体も切ってしまいそうだったので、僕は無重力を使ってマクロープスを無力化する作戦に出た。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


「おらおらおらおらおらおらっ!」


 マクロープスとオリーザさんが殴り合っている中。僕はマクロープスの背中に触れた。


「ベベベッツ!」


 マクロープスは体重の八〇〇倍の重さを受け、地面に這いつくばる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ど、どうなっているんだ……」


 オリーザさんは息を上げ、疲れ切っていた。


「体重を少し重くしただけです」


 僕はナイフでマクロープスの首を切り裂いた。


「黒いマクロープス四体目、討伐完了」


 僕はウェストポーチから布を取り出し、刃から黒い血液を拭き取った。


「ほんと規格外だな……。にしても、三原色の魔力が無いのに、魔法をどうやってつかっているんだ?」


「魔法を使っているというか、マクロープスに大量の魔力を押し付けていると言ったほうが正しいかもしれません。僕、無色の魔力は異様に多いんです」


「なるほど。魔力を押し付けているのか。だが、この黒い個体が動けなくなるほどの魔力量とは……、どれだけの魔力がのしかかっているか想像もできないな」


 オリーザさんは立ち上がり、手足を動かす。


「ふぅ……。魔力が馴染んできた。こいつらの魔力、異様に吸い取り辛くて、てこづった。三原色の魔力が黒色になるまで混ざり合っていると、体に馴染むのも時間がかかるようだ。新し発見だな」


 オリーザさんの体の傷が少しずつ癒えていく。


「では、オリーザさん。僕は黒色のマクロープスのもとに行ってきます。通常個体と住民の避難はお願いします」


「ああ、任させておけ」


 オリーザさんは頭を縦に振り、了承してくれた。


「アルブ、次の者のもとに送って」


「了解です」


 アルブは空を旋回し、飛んで行った。僕も後をついて行く。


「はああああああっ!」


 黄色短髪を靡かせている女性が大剣を持ち、地面を雷の速度で走りながら黒いマクロープスのもとに向かう。


「まって、ソアラ! 一人で攻めちゃ駄目! そいつ、他の個体と格が違う!」


 橙色長髪の女性は剣を持ち、膝を地面に付けながら叫んだ。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


 マクロープスは橙色武術祭の準決勝、女の部でシトラと戦っていたソアラさんの攻撃を笑いながら回避した。


「なっ! 私の最速なのに! ごはっ!」


 ソアラさんは攻撃を躱されたあげく、速度が乗った体に上手く攻撃を合わされ、強烈なカウンターを貰い、弾き飛んだ。


 レンガ造りの建物に衝突し、頭を打ったら最悪死にかねない。運よく、僕の方に飛ばされてきたので、僕が体で受け止めればいい。


「ふっ!」


 僕は亜音速で飛んでいたソアラさんの体を身一つで受け止め、靴裏で地面を擦りながらも、八メートルほど耐え、止まる。


「ごほっ……。う、ぐぅ……」


 ソアラさんは口から血を吐きだした。どうやら、蹴られた際、内臓が破裂したらしい。僕はすぐさま『無傷』で彼女の腹部を治療した。


「う、うぅ……、し、しろい髪……、もしかして……、キース君……」


 ソアラさんは僕の名前を覚えていた。


 僕は影が薄いはずなんだが、大会に優勝できたからか、少なからず覚えてくれていた。まあ、一度焼肉も一緒に食べたからかもしれないけど。


 彼女は貧血のせいで視界がぼやけているらしく、もう戦える状況ではなさそうだ。


 ――マクロープスは女性を攫っているんじゃなかったのか。ソアラさんも女性だし、なんで攻撃されたんだ。まあ、ソアラさんも中性的な顔立ちだけど、胸があるから、女だとわかるはずだ。いったいなぜ……。


「アルブ、ソアラさんを闘技場まで運んで」


「了解です」


 アルブはソアラさんの体を軽くし、口で首根っこを噛んで闘技場まで運んだ。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


「くっ! こいつ、早いし力が強いし、攻撃も全部避けられるし……。なんか、気持ち悪い笑い方してるし、不愉快極まりない! 『橙色魔法:身体強化』」


 マクロープスに襲われていた橙色武術祭女の部準決勝でミルと戦ったティナさんは身体強化を使用し、新調した剣を振るう。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


 マクロープスは身体強化した速度の攻撃も全て回避し、ティナさんに抱き着いた。そのまま舌を出し、頬を舐める。腰をヘコヘコと動かし、犬のマウンティングのようだった。

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