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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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特別依頼

 午前一〇時。少々休憩があった後、放送で試合場に来るように言われた。


「さあ、橙色武術祭、いよいよ最後の催し物となりました。現、橙色の勇者様と橙色武術祭優勝者の試合となります!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場の空気が震えるほど、大きな音が鳴り、身が震える。


「凄い熱気だ……」


 僕は試合場のど真ん中にいる。何もかもが取っ払われ、視界の先に特等席で座るライアンの姿がある。


「ふぅー、お前らっ!、盛り上がってるかーっ!」


 ライアンは立ち上がり、叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ライアンの声にこたえるように、会場の人々が叫ぶ。


「今から、一生忘れられないような試合を見せてやる。楽しんで行ってくれよな!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場にいる人々は喉が潰れそうなほど叫んでいた。


「ふっ!」


 ライアンは特等席から飛び降り、空中で綺麗な弧線を描きながら、試合場に下りる。


 両足で着地し、僕の前に現れた。


「キース。やっぱり来たか」


「はは……。僕は来れると思っていなかったよ」


「そうなのか? 俺は来ると思ってたぜ」


「なんでそう思っていたの?」


「そりゃあ、強い奴は見たら強いとわかる。キースは白髪だが、何か圧力を感じるんだ。ものすごく巨大な何かが背後にいるような感覚。今まで、一度たりとも本気を出していなかっただろ。ずっと手加減しているように見えたぜ」


「い、いや、今まで全力で戦っていたよ。何かの見間違いじゃない」


「んー。確かに見間違いかもしれない。キースが全力だと言うのなら、全力なのかもな。じゃあ、俺はキースの全力の全力を引き出してみせるぜ!」


「あ、あんまり本気になられると、手も足も出ずに終わっちゃうから……、ほどほどに……」


「しゃっ! いっちょやりますか!」


 ライアンは僕の話しを聞かず、少し離れた位置で飛び跳ね、準備運動をしていた。もう、やる気満々だ。


 ――はぁ、この試合の説明くらいしてほしいんだけど……。


 僕が心の中で呟いていると、進行役の女性が音声増幅器に話し始めた。


「制限時間は無制限。どちらかが戦闘不能、又は降参するまで試合は続きます。前回、オリーザさんとライアンさんの試合は八時間越えの長丁場になりました。今回の試合も長引きそうな気がします。両者、準備はよろしいですか?」


「はい」


「おうよ」


「お二方とも準備万端と言うことですね。では、僭越ながら試合の合図をさせてもらいます。五、四、三、二、一……はじめっ!」


 進行役の方が初めと言った瞬間。爆発音が鳴った。

 僕とライアンは全く動いておらず、北東の方向からあまりに不自然な音が響いてきた。


 べニアさん達は原因をすぐさま調べる。いったい何が起こったと言うのか。


「すまない、キース。ちょっと見てくるぜ!」


 ライアンは闘技場から北東の方角に走って行った。この場合どうなるんだ?


「主、大変です! 大量のマクロープスがクサントス領の城壁を壊して侵入してきました」


 アルブは空を飛び、現状をすぐさま把握する。


「な……。大量のマクロープス。早く駆除しないと……。何体くらいいるの?」


「通常色が多数。黒色の個体が八体です」


「く、黒色が八体……。増えすぎでしょ……」


「『橙の鉱山』で発生した大量の魔素を吸収した影響でしょう。もしかすると他の原因があるのかもしれませんが、このままだと街の者が襲われます」


「奴らの目的は何?」


「わかりません。ですが、何かを探しているような挙動が見えます」


「何かを探している……。いったい何を……」


 僕は考えた。だが、答えがおもいつかない。


「とりあえず、マクロープスを駆除しないことにはどうしようもない」


 僕はべニアさんのもとに走る。


「べニアさん。クサントス領に大量のマクロープスが侵入しました。駆除をサボっていたツケですよ。落とし前を付けてください」


「マクロープスだと……。仕方ない」


 べニアさんは音声増幅器を口に近づける。


「皆、クサントスギルド特別依頼だ。街に侵入したマクロープス達の駆除を要求する。マクロープスを一体でも倒した者は報酬として今夜の打ち上げ祭の品は全てタダだ!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場にいる冒険者達は我先にと闘技場を出て行く。ざっと八万人の人々がマクロープスの討伐に駆り出された。


「キース君もマクロープスの駆除を頼む。今は少しでも人手が必要だ」


「わかりました。僕も戦います」


 僕はフルーファの持ち手を握り、やる気を上げる。


「シトラ、ミル。僕はマクロープスの駆除に行ってくる。二人は……」


「行くに決まっていますよ。さ、今にも多くの者が犠牲になっているかもしれません。急ぎましょう!」


 ミルはやる気満々だった。


「マクロープスが現れたのなら、行くしかないじゃない」


 シトラは体を動かし、呟いた。


「二人共、意気込むのはいいけど、気をつけて。黒色のマクロープスが八体いるらしい」


「八体ですか!」


 ミルは黒色のマクロープスと対峙経験があるため驚きの声をあげる。ミルがギリギリ倒せるくらいの強さを誇る黒色マクロープスが八体と言われたらそりゃあ、驚くだろう。


「シトラさん。黒色マクロープスを見つけたら無理せず、他の強い冒険者さんに任せてください。病み上がりのシトラさんにはあまりにも分が悪い相手です」


「わ、わかったわ。迷わず逃げるわね」


 シトラはミルの声にしたがい、頷いた。


 僕達は三人でマクロープスたちを駆除しに向かった。闘技場を出ると、悲鳴が聞こえてきた。


 あまりにもはっきりと聞こえるので、どこに黒いマクロープスがいるのかがすぐにわかった。


 大きな声が聞こえる方向に走る。少しすると、黒色マクロープスが冒険者達をなぎ倒している姿が見えた。黒色のマクロープスが他の冒険者を弾き飛ばし、一気に近づいてくる。黒色じゃない通常色の個体も確認できた。


「急がないと……」


 僕はフルーファの持ち手を握り、戦う意欲を見せる。すると。


「べッべッべッベッベッベッベッ!」


 黒色のマクロープスは速度がやはりあり、目でおえなかった。いきなり側面に現れ、僕は顔面を蹴り飛ばされる。


「くっ!」


 僕の顔が奴の足に蹴り飛ばされると、世界の景色が一気に線になった。気づけば屋根を転がりながら。高い建物の壁に衝突。何もかも貫通し、反対側の壁まで破壊し、やっと世界の景色が元に戻る。


 フルーファの持ち手を捻り、斧状にした後、体勢を立て直すために一度振るい、建物の屋根に足裏を付けて滑るように止まる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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