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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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いやがらせ

「キースさん、優勝おめでとうございます!」


 ミルは僕に抱き着きながら褒めてきた。


「ありがとう、ミル。危なっかしい勝利だったけど、ミルのおかげで何とか勝てたよ」


「ええー、ぼくの応援がキースさんに聞こえていたんですかー。きゃー、嬉しいですー」


 ミルは頬に手を当て、尻尾を振りながらもだえる。


「あはは……」


 ミルの発情から勝利の活路を見出したなんて言えないな……。


「ミル、アルブと一緒に先に家に戻っていてくれないかな。僕はべニアさんと話しがあるんだ」


「なら、ぼくはキースさんが出てくるまで闘技場で待ってます。家に帰っても寂しいだけですからね」


「まあ、ミルがそれでもいいなら、一向にかまわないけど、べニアさんがいつ目が覚めるかわからないよ」


「じゃあじゃあ、べニアさんが目を覚ますまでキースさんにくっ付いてますねー」


 ミルは僕に抱き着き、微笑んだ。ほんと、甘えん坊なんだから……。


 僕はミルの頭を撫で、べニアさんが目を覚ますのを待った。


 僕が闘技場の上に向かうと多くの人に声を掛けられると思われたので、ミルに昼食を買って来てもらい、控室で食事をとろうと考える。運営の方に話しを通すと、好きに使ってもらっていいそうだ。


「キースさん、キースさん。たくさん買ってきました!」


 ミルはカレーライスにカツ、から揚げ、ステーキ、ソーセージなどなど、屋台で売られている多くの品を自費で購入してきた。どうやら、僕に食べさせたいらしい。


「キースさん、あーん」


 ミルはから揚げをつまようじで刺し、僕の口もとに持ってくる。


「あ、あーん」


 僕はから揚げを食し、口内に広がる塩味と、油、衣、肉汁などを噛み締め、飲み込む。


「ふぅー、凄く美味しいよ。ミル、ありがとうね」


「えへへ、こんなの当然ですよー。ささ、もっといっぱい食べて良いですからね」


 ミルは僕にとことん食べさせてきた。本当、面倒見のいい子だな。


「ミル、あーん」


 僕はお返しにから揚げをミルに食べさせる。


「あーん。んんー、美味しいですーっ!」


 ミルの笑顔がとても明るく、僕の心を暖める。


 ――あぁ、癒される。疲れが吹っ飛んじゃうな。


 ミルは僕の膝の上に載っているのだが、丁度抱き着きやすい位置におり、疲れと甘えたい具合が混ざり合って、抱き着きたい欲が生まれる。


「はぁ……、ミルは暖かいね。良い匂いもするし、食べちゃいたいな……」


「き、キースさん、だ、駄目ですよ。こんなところで……」


 僕がミルに抱き着いていたら、扉が開かれる。


「キース……。ああ、すまない。お取込み中だったか」


 オリーザさんは待合室の扉を開け、すぐに閉めた。


「僕はただ抱き着いていただけなんだけどな……。って、ありゃりゃ……」


「あーん、キースさん、ちゅっちゅしてー、もっともっとぎゅっとしてー」


 ミルは僕に抱き着かれ、完全に発情してしまっていた。魔力を吸い取り、もとに戻す。


「ああー、もう、オリーザさんのせいで良い雰囲気がぶち壊されました。抗議してきます!」


「ちょちょ、今は待って。ミルはアルブとここで昼食を得ていて。僕は話しをしてくるから」


 僕はアルブをミルに預け、医務室に向かった。


「やあ、キース君。お取込み中すまなかったね」


 先ほどよりも顔色が良いべニアさんが、ベッドに座りながら話かけてきた。すぐ近くにオリーザさんもいる。


「い、いえ。別にそう言うことをしようとしていたわけではなく……」


「まあ、お年頃だろうから、仕方ないか。って、今、こんな話はどうでもいいか」


 べニアさんは橙色の髪を耳にかける。


「キース君、オリーザ、私はさっきまでの記憶が無いんだが、どこまで話した?」


「僕はライアンを殺してくれと頼まれました」


「そうか……。そんな事を話したのか。じゃあ、殺してほしい理由も言ったようだね」


「はい……。第一王女に命令されたと言っていました。何かの間違いじゃ……」


「いや、間違っていない。真実だ。だが、私は殺したくないと言う気持ちが強かったんだろうな。本来は言ってはいけない秘密事だったはずだ。私が気づけないほどの洗脳をされていたとは……、さすが第一王女様だ」


「で、べニア。どうする気なんだ」


「ほんと、どうしたものかね……。ライアンはクサントス領になくてはならない存在だ。死んでもらったら困る。だが、あの癇癪王女の嫌いな者に数えられているとはとことん女運の無い奴だ」


「はは……。ライアンだからな。仕方ない」


「ライアンに下りてもらうことは出来ないし、下りてもらわなかったらそれで、王女が激怒しかねない。政治の実権を握っているのがあのお方だと思うと恐ろしくて逆らうにも逆らえない」


 べニアさんとオリーザさんは共に考え込んでいた。


「…………一つ、考えがあります」


 僕は考え付いたことを話そうと思った。


「ん? 聞かせてもらおうか」


「えっと、極秘だそうですけど、作戦に必要なので言わせてもらいます。今、プルウィウス王は病床に伏しているそうです。だから、実権を第一王女が持っています」


「な……?」


 べニアさんとオリーザさんは驚きの表情を見せる。


「僕の考えはプルウィウス王に会って病気を治し、第一王女の暴走を止めると言う作戦です。王に会えるかどうかはわかりませんが王女に勇者を変えるだけの権限は無くなります」


「何とも非現実的な作戦だね……。王が病床に伏しており、面に顔を出さないと言うことは王都の医師にも治せないと言うことじゃないか。そんな病を治せる医師はいない」


「そうですね……」


 ――僕なら、助けられるんじゃないだろうか。でも傷と病は違うのかな。


「べニア、第一王女の機嫌を損ねたらどうなるんだ?」


 オリーザさんはべニアさんに聞く。


「そりゃあ……、色々な政策で嫌がらせをしてくるに決まってる。面倒事を押し付けてくることもあるだろう。まあ、私の首が跳ねるのは確実かな」


「なら、ライアンは王都に行かなければ良いと思います。勇者順位決定戦を辞退するのも一つの手だと思いますよ」


「だが、そうなるとクサントス領の領民に不満が積もる。最下位ならまだしも、出場していないと言うのは論外だ」


「うう……。こうなったら、第一王女の持っているライアンへの印象を変えるしかありません。第一王女は大の宝石好きです。ライアンに高かな宝石を持たせ、第一王女に献上すれば、少なからず印象が変わるかもしれません」


「ムムム……。悪くない作戦だが、クサントス領は毎年多くの宝石を王に献上している。だから、第一王女も普通の宝石じゃ満足してくれない。もし、嫌がられたら終わりだ」


「……僕は特大のダイアモンドを掘り起こしました。それならさすがに気分を良くするはずです」


「大型のダイヤモンド……確かに、王女はダイヤモンドが好きだが、大きな品はもう、揃えられているだろう。今更見せられても、機嫌を直すどころか、悪くなるんじゃ」


 べニアさんはまた、否定した。


「じゃあ、僕が出来ることはもう、ありません。お疲れさまでした」


 僕は話を早々におえ、部屋の外に出ようとした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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