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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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警戒音

「シトラの方にばかり気を使っていたけど、ミルも大丈夫? 最後、もの凄い威力で殴られていたけど、体で痛い所とかない?」


「痛い所ですか? そうですねー、ぼくが痛い所はー」


 ミルは僕の顔に胸を当てて抱き着いてくる。


「キースさんとシトラさんがチュッチュしたせいで、ぼくの胸がずきずき痛んでいます。治してください」


「えぇ……。難しいな」


 僕はミルの無理難題に苦しみ、殴られていた左頬を優しく撫でてあげた。そのまま顎下を撫で、耳の後ろ、付け根などあらゆるところを撫でていった。


「も、もう、許します……。これ以上されちゃったら、発情しちゃいます……」


「ごめん、撫で過ぎた。でも、機嫌を直してくれたみたいで、よかった」


 僕はミルに許しを貰い、家に到着する。


「キースさん、明日は決勝戦ですね。意気込みはどうですか?」


「んー、頑張ろうとは思うけど、どうなるかわからないな。オリーザさんの強さが知れないし、僕は全力を出すだけだよ」


「そうですね。でも、キースさんならきっと勝てますよ。逆にどうしたらキースさんを倒せるのかわからないですもん。ぼく以上の反射神経と、シトラさん以上の怪力……。オリーザさんの戦い方を見るに、近距離戦になるのは明白ですからフルーファと大斧の打ち合いからの流れになるんじゃないですかね」


「そうだね」


 明日、僕はオリーザさんと戦う。食事はミルが作ってくれると言うので、おねがいした。彼女は買い物に向かい、僕とアルブは家で瞑想をしている。

 窓から見える外の景色が暗くなっていく。明日は雨だろうか。決勝戦に雨と言うのも、熱が上がり切らない気もする。そんなことを考えていたら、クサントス領全体に響くほどの大音量で警報が鳴った。この警報には聞き覚えがある。ルフス領で、フレイが暴れたさいになっていた警戒音と同じ。つまり、クサントス領でも何かしら危険なことが起こったんだ。


 僕は警報が鳴り、目を開ける。


「ただいま、橙の鉱山にて大量の魔素と共に、推定体長三〇メートルを超えた黒甲虫が姿を現しました。住民の方は速やかに建物に非難してください。繰り返します……」


 放送で知らされたのは、以前から大量の魔素が検出されていた橙の鉱山から甲虫が姿を現したと言うことだ。

 甲虫は以前戦ったロックアントの女王と同格かそれ以上の実力を持つ。討伐ランクはAランクだが、警報が鳴ると言うことはそれだけ危険な存在と言う訳だな。


 いったいどこにいるんだろう。ライアンが討伐に向っているはずだけど、明日の試合はどうなるんだ……。

 僕は疑問に思いながらも、たいして危険視していなかった。ライアンと他の冒険者だけで充分だろうと。

僕は瞑想を続け、長い間、じっとしていた。すると、扉を突き破る勢いで家の中に入ってきたミルが、大変慌てていた。


「キースさん! 空に大きな魔物がいます!」


「甲虫は飛ぶから、空にいるだろうね。それがどうかしたの?」


「甲虫が高い位置にいて冒険者の攻撃が届かないそうです。甲虫が地上に降りてきたら建物が軒並み壊されてしまいます。明日の試合が行われないかもしれません」


「攻撃が届かないくらい高い位置にいるの……。空を飛んで他の領土に行かれるとクサントス領としては困るだろうな。でも、自業自得な気もする。ほんと、こうなる前に防げなかったのだろうか……」


 僕は祭りに浮かれすぎていた運営の失態なのではないかと考える。今更、何を言っても仕方ない。空を飛べる力を持っているので、手を貸しに行こうか。


「アルブ、無重力で僕の体を軽くした後、黒甲虫のもとに送って」


「了解です」


「キースさん、明日、大会の決勝なので無理をしないでください。ぼくは夕食を作って待っています」


 ミルは空を飛べないのに加え、戦いの疲労もあるだろうから、留守番をお願いする。


「わかった。僕は別に戦う訳じゃないし、クサントス領の中に黒甲虫を入れないようにするだけだから、心配しないで」


 僕は裏庭の扉から外に出てアルブの足を持ち、空を飛ぶ。浮かぶだけなら別にアルブの体を持つ必要はないが、移動しなければならないので、アルブの足を持っている。無色の魔力を足裏から出したり、手の平から放出しても移動が可能だが、まだ、加減が上手くできないので使用していない。


 アルブが羽ばたくと、あっと言う間に家が小さくなり、巨大な角が頭部から生えた黒い甲虫が翅を羽ばたかせながら飛んでいた。羽を広げると横幅が五〇メートルはあるのではないか。


「あの巨体に触れて無重力にした後、領の外に投げよう。その後、加重して飛べないようにすれば、他の冒険者さんが倒してくれるでしょ」


「主が倒さないのですか?」


「僕が倒してアルブの餌にするのも手だけど、甲虫を食べたい?」


「見た目が気持ち悪いですし、虫を食すなんてリザードじゃないですか。ドラゴンの私はあんなゲテモノ食したくありませんよ」


「はは……、そうなんだ。食いしん坊のアルブなら、何でも食べたがると思っていたけど、好き嫌いがあったんだね」


「私の舌は主と共に生活した手前、人に近しくなっています。なので、虫を食べる気にはなれません」


「マクロープスとかむしゃむしゃ食べてたのに」


「肉は別腹ですよ」


 アルブは肉が大好きな生き物だった。


 アルブは肉が大好きな生き物だった。


「ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッツ!」


 甲虫は大きな翅を拘束で動かし、空気が振動する音を響かせる。頭に二本の角を生やし、下の角の方が長く、上の角は短い。頭、胸、銅、六本の足と言う昆虫の特徴を持っている魔物だ。見た目は黒く、好きな人は好きそうな見た目をしているが、僕は苦手だ。


 角の一撃は体重の二〇倍の重さを持ち上げられると言う。あの巨大な甲虫なら体重は六トンほどだろう。つまり、一二〇トンの力が出せる計算になる。


 人間ならすぐにぺしゃんこに出来るな。


「ギューギューギュ―ギューっ!」


 黒甲虫は僕に気づいたのか、威嚇音を鳴らし、突っ込んでくる。速度は馬と同じくらい。体が巨体のため、そこまで早くなかった。


 僕は長く伸びた角を掴み、黒甲虫を無重力で鳥の羽と同じ重さに変え、振りかぶって領外に向って投げる。すると、甲虫の体は何にも阻まれることなく、速度を保ったまま飛んで行く。


 領外に出たところで、通常体重の八〇倍の重さを体に与える。六トンなら四八〇トンだ。体が潰れてもおかしくないと思うが、甲虫は地面に押しつぶされながら身動きがどれなくなっているだけなので、外壁が相当硬いと言うことがわかった。


「まあ、これで他の冒険者さんが倒してくれるでしょ」


 僕は黒甲虫を地面に貼りつけにしたまま、ミルの待つ家に戻る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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