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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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防戦一方

「両者、白線まで移動してください」


 シトラとミルはべニアさんの指示に従い、試合場に引かれた白線のもとに移動する。


 べニアさんは二名から少し離れ、息を整えた後、手を持ち上げた。辺りの審判を見渡し、皆が頭を縦に振る。


「橙色武術祭、女の部、決勝戦、開始っ!」


 べニアさんは合図と共に試合場から履ける。


「ふっ!」


 シトラはミルのカウンターを嫌い、魔力を溜めることに専念するのか後方に退避。もとの距離が一〇メートルほどだったのに、場外ギリギリの当たりまで下がった。両脇を閉め、肘を九〇度に曲げながら、お腹に力を入れ魔力を練り込んでいく。

 瞑想を何度も行っていたため、すでに魔力量は十分溜まっているはずだ。あとは魔力操作で拳に魔力を移動させるだけ。そうすれば、ミルの体に拳を一度当てるだけで高威力の攻撃が放てる。


「そう来ると思いましたよっ!」


 ミルはいつも以上に強気になり、シトラのもとへと走る。どうやら、攻撃に自ら転じるらしい。彼女は動きながらでも魔力操作が可能なので、体に溜まっている魔力を移動しながら自由自在に動かせる。僕と同じくらい上手いので、魔力の移動に滞りが無い。


「ふっ! はっ! やっ! とうっ!」


 ミルはシトラに向け、拳を連続で突く。


「ふっ、はっ、やっ、とうっ……」


 シトラはミルの拳を紙一重で躱していた。だが、とても嫌そうな顔をしている。どうも、全てカウンターを狙えるほど甘い攻撃らしく、手を出せば返しの攻撃を確実に食らうとわかるのだろう。


「はははっ! シトラさん、どうしたんですか! 手を全然出してきませんね!」


「喋る余裕があるなんて、舐められたものねっ!」


 シトラはミルの安い挑発には乗らず、回避に徹する。場外から距離を取り、投げ技を警戒。


「シトラさん、逃げ続けていたら普通に時間切れになりますよ!」


 ミルはシトラを追いかけ、魔力を溜めさせない。逆に、自分の拳には、魔力が集まり、光っていた。手に溜めた魔力を脚に移動させ、シトラよりも早く走り、回り込む。


 シトラは攻撃したらカウンターを食らうとわかっており、確実を期すために今は逃げているのだろう。だが、逃げると言う行為は戦いとしてあまりいい恰好ではない。そのため、会場から不満の声が漏れていた。


「シトラさん、戦わないと、会場の人が嫌気を露にしてきますよ。決勝戦で逃げるなんて情けないですねーっ!」


 ミルはシトラに挑発を続け、自分に攻撃をくらわそうとしていた。


 シトラは聞く耳を持たず、試合場の中央に移動。投げ技でもさすがに場外へは移動させられない距離になった。


「シトラさん、キースさんと隠れてキスしてますよね……。ずるくないですか?」


「っ!」


 シトラは動揺の色を見せ、振り返りぎわに拳を放つ。


 ミルは拳が頭をすり抜けたのかと言うくらい紙一重で躱し、柔らかい体から生み出される推進力を使ってシトラの体に右拳を撃ちこんだ。


「獣拳っ!」


「ぐっつ!」


 ミルの拳がシトラに当たった瞬間、無色の魔力が腹部に打ち込まれる。防御しても体の内部に大きなダメージが入ってしまう一撃だ。


 会場は真面な攻撃が入ったため、大盛り上がり、僕はミルの獣拳の痛さを知っているので腹痛がする。今のところ、小雨が降っているとはいえ、ミルの感覚を狂わせるほどではないようだ。戦いに関しても、ミルの方が優勢に見える。


 シトラとミルが試合を始めて五分が経った。現状はミルの猛攻をシトラが生身で受けていると言う一方的な試合になっている。


「おらっ! おらっ! おらっ! おらっ! おらっ!」


 ミルの一撃一撃に魔力の追撃が入り、攻撃を受け続ければ、橙色の勇者と互角に戦っていた黒色のマクロープスをも静める蓄積ダメージになってしまう。


「ぐっ! うぐっ! ぐあっ! っつ! ぐふっ!」


 シトラはミルの攻撃をなるべく躱していたが、体に疲労が蓄積すると、体が動かなくなってくるのか、攻撃を躱せなくなっていた。

 もう、ミルの拳を体で何度受け止めているだろうか。ミルの拳がシトラの体に当たるたび、大きな花火が弾けるような大きな音が鳴る。会場も盛り上がっていたのだが、さすがにミルの猛攻が激しすぎて戦いに眼をそむける者もいた。止めてあげてと言う声も聞こえるが、シトラが倒れるか、場外に出る、時間切れ、降参のどれかしか、試合を止める方法はない。


「ほっ! シトラさん、どうしたんですか! このままじゃ、負けちゃいますよ!」


「くっ! 舐めるなっ!」


 シトラは軋む体を無理やり動かし、ミルに右拳を撃ちこむ。


「にひっ……」


 ミルははにかみ、シトラの拳を紙一重で躱す。拳は空を切ったが、叩き込まれた空気が音速を越え、障壁に衝突し、大砲を撃ちこんだような爆発音がなる。あの拳に直接当たれば、ただでは済まない。だが、ミルには一向に当たる気配がない。逆に……。


「はあっつ!」


 ミルは柔らかい体を最大限使い、シトラの腹に潜り込む。そのまま、右拳を真上に打ち込み、顎を強打した。


「うぐっ!」


 シトラは弧線を描きながら、空を舞う。一瞬気を失っているように見えたが、空中で意識を取り戻し、足裏から着地。


「はぁ、はぁ、はぁ……。い、今のは……、やばかった……」


 シトラは膝をつき、息を整える。眩暈がしているのか、体を上手く動かせないようだ。そんな状態のシトラをミルが逃すわけもなく、低姿勢で加速からの急接近。


「せいっや!」


 ミルは走り出して最速になったころ飛び蹴りを繰り出した。


「まだまだっ! ここから!」


 シトラは無理やり右足を踏み出し、左拳をミルの右足裏を狙う。ミルの早業とシトラの力技がぶつかり合い、突風が吹く。


 「獣脚!」


 ミルは足裏からも魔力を出し、二段激を繰り出した。


「ぐふっ!」


 シトラは魔力に弾かれ、後方に飛ぶ。だが、根性と耐久力が売りのシトラはそれでも倒れず、顔中あざだらけなのに、笑っていた。


 僕としてはもうやめてほしいくらいなのだが、彼女らの戦いを止められるものはいない。


 すでに判定では覆せないほど、シトラはミルからの攻撃を受けている。そのため、時間切れになれば、シトラの負けが決定する。


 ミルが場外に出るか、気絶するか、負けを認めるかの三択しか勝ち筋が無くなった。でも、ミルが降参するわけないので、のこり二択。


 ミルを場外に出すか、気絶させるかのどちらかだ。そんなことができるのだろうか。僕はその想像がつかない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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