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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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異様なもの

「準決勝二戦目、始めっ!」


 審判の方が頭上に掲げていた手を下ろす。


「ふぅ……。『ロックバレット』」


 ユビルさんは指先に小さな魔法陣を展開し、音速に近い石を放ってきた。眉間にとんできたので頭を傾け、攻撃をかわす。


「あの速度を魔法も使わず躱せるのか……。どんな身体能力をしているんだ」


 ユビルさんは苦笑いを浮かべた。そのまま剣で攻撃してこず、魔法で攻めてきた。


 僕の周りを覆うように魔法陣が展開され、一粒一粒が小さな石だが、速度が速く、すべて躱すのは容易ではない。

 当たると肉に食い込むようで激痛が走る。目にでも入ったら危険だ。フルーファで顔周りを防ぐ。だが、そうしていると、相手の位置がわからない。もし、一〇分間魔法を放ち続けられるのだとしたら、僕はこの場から出てユビルさんを倒しに行かなければならないので、早々に出る。

 だが、出た先に剣を抜いたユベルさんが立っており、容赦なく剣を振りかざしてきた。

 なぜ、出てくる位置がわかったのだろうか。謎だが、相手に先を読まれている。


 僕はユビルさんの攻撃を回避し、空中で回し蹴りをするも躱されてしまった。着地した後、僕も魔力視を使い、ユベルさんの位置を見失わないように戦わないと、後方に回られて気絶させられそうだ。


「身体能力が高いのに加え、耐久力もあるのか、面倒だ」


 ユビルさんは険しい顏をしながら呟く。僕も、魔法でねちねち攻撃されるのはとても面倒くさい。出来るのならやめてほしい。でも、試合なので止めてほしいなんて言う甘い考えは受け付けてもらえない。なら僕の方から攻める。


「ふっ!」


 僕はフルーファの柄を右手で握り、攻撃しようとした。だが、『ロックバレット』により、右手の甲を撃たれ、右手のグローブに石がめり込む。痛かった。

 グローブが無かったら肉に突き刺さっていただろう。しっかりと握ったフルーファを、攻撃に使用する。


 『ロックバレット』が顔に当たるのだけは避け、体に当たるのは無視する。急所に当たる場合のみ、フルーファの剣身で防いだ。


 ユビルさんの頭上に大剣をもたげた僕は大きく振りかぶる。当然のように躱された。大剣が空を切り、風圧で地面の水溜まりが切り裂かれる。


 ――大振りじゃ当たらないな。もっと細かな攻撃にしないと。


 僕は全身を雨に濡らした状態でユビルさんの方を見る。

 彼は『身体強化』をすでに施したのか、手足と剣身に橙色の魔力が付着していた。どうやら、あちら側も、魔法だけでは効果が薄いと判断したようだ。


「岩の剣」


 ユビルさんは一言呟くと、剣身に纏わりついていた魔力が安定した。

 裸眼で見ると岩が剣に纏わりついたような姿に見える。長さは二メートルほどあり、ほぼ大剣と変わらない大きさだ。

 そんな大きな剣を使って大丈夫なのだろうかと言う疑問があったが、瞬きをした瞬間、視界の中にユビルさんはいなかった。


 後方から悪寒がしたので振り返ると今にもぶつかりそうなほど近くに岩の剣が迫ってきている。前に構えていたフルーファを背後に回し、直撃を避けた後、僕は弾き飛んだ。


 フルーファを背後に回していなければ、巨大な岩の剣をぶつけらていた。


 質量が上がっているはずなのに、ユビルさんは重さを感じていないのだろうか。


 質量があるにしては移動速度が先ほどと段違いだ。あの剣の重さは先ほどと全く違うはず。攻撃範囲が増えているから、思ったよりも攻撃が伸びてくる。油断をしていたら当たるぞ……。


 僕はユビルさんの攻撃に警戒した。魔法が使えない僕は力と手先の技だけで戦うしかない。肉眼だと雨が邪魔で上手く見えないが、魔力視だと、ユビルさんの橙色の魔力がよく見える。

 右眼と左目で分けようとすると、頭の処理が追い付かない。魔力視と裸眼を行き来すると、数秒の差が生まれてしまう。どちらか一方に絞らないと、いけないが裸眼じゃ攻撃が見えないとなると必然的に魔力視を使うしかない。

 だが、万が一魔力の無い攻撃をされた場合、上手く見えず攻撃を食らう可能性がある。


「ふうぅ……。集中……」


「異様な威圧感……。なにかとんでもない生き物を見ているような感覚だな……」


 ユビルさんは警戒しているのか、身を引いていた。僕の持ち味は体力と攻撃力。速度が物凄くあるわけじゃない。相手も体力を温存しているようだし、攻撃を加えないと僕の判定負けになりそうだ。


 大剣のフルーファじゃ速度について行けない。相手に全て躱される。なら……。


 僕は大剣の状態でユビルさんの頭上から振り翳した。案の定躱される。


「ふっ!」


 僕は柄を捻り、フルーファの形状を大剣から大斧に変えた。柄が伸び、大剣の部分が斧に変形する。


「なっ!」


 ユビルさんも予想外だったらしく、身を一瞬固めた。

 僕はこれ見よがしに伸びた持ち手を軸に、フルーファを横に薙ぎ払った。すると、ユビルさんが持つ岩の剣と右腕で攻撃が防がれたものの、彼の剣と右腕をへし折りながら、弾を打つように弾き飛ばす。


 ユビルさんは地面に体を叩きつけながら跳ねるも、体に残っている力を回転しながら逃がし、足裏で着地。だが、力が抜けきっておらず、地面に手を付けながら後方に滑り、ようやく止まる。


「ふぅ……。これでお相子ですかね」


 僕は長い柄を持ち、斧の先を地面に向けながら構える。


「まさか変形するとは……。予想外だったな」


 ユビルさんは右腕を左手で押さえ、痛みに耐えているのか、苦笑の表情を浮かべる。全身泥まみれだが、雨が洗い流す。岩の剣は斧の一撃で割れ、折れた剣に戻っていた。


「今から、この男にどうやって攻撃を加えたらいいのか、全く想像つかない」


 ユビルさんは右腕に橙色の魔力を送り、少しばかり回復させる。

 自然治癒能力を引き上げ、折れた骨を結合させたようだ。


 ――すごい器用な方なんだな。


 ただ、体を治癒するのは大量の魔力を使用するらしく、ユビルさんの体から、半分以上魔力が減った。残り時間は四分ほど。

 僕の魔力は一向に減っていない。なんせ、魔法をしようする場面など一切ないからだ。


 体を治癒すると言っても少量の魔力で完了してしまう。このままじり貧に持ち込めば勝てる可能性が高い。でも、そんな勝ち方でいいのかと疑問に思う。


 オリーザさんみたく正々堂々と戦い抜いたほうが観客も楽しめるだろう。そんなことを考えていた。だが、油断はできない。ユビルさんが、僕と同じように奥の手を隠しているかもしれない……。警戒を怠っていい訳じゃないので、このまま気を引き締めて戦う。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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