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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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相手の研究

 僕はシトラに贈物を与えられたのかわからなかったが、シトラから不満の声が無かったのを考えると、よかったんだなと思えた。


 八月九日、今日はすかっと晴れていた。とても清々しい日で気温も上昇し続けた。昼頃には戦いに熱中しすぎて倒れる人が続出し、水分補給が放送によって義務付けられ、一時間に一度、水分を補給するようにと言われた。

 僕達はこまめに水分をとっていたので倒れはしなかったが、猛暑すぎて頭が解けそうだった。


「あ、熱いです……。熱すぎて体が解けそうです……」


「ほんと熱いわね……。獣族だと尻尾もあるから余計熱く感じる……」


「いや、二人は僕にくっ付きすぎなだけでしょ……」


 ミルとシトラは僕にくっ付き、熱い熱いと言っていた。そりゃあ、人にくっついていたら熱いに決まっている。


「あ、熱くてくらーってしているだけですよ。キースさんにくっ付いていないと倒れてしまいそうなんです。だから、こうやってくっ付いているんですよ」


「そうそう、私達、倒れる寸前なんだから……」


 ミルとシトラは倒れる寸前だったらしい。


 僕は両者を医務室に運び、水を飲ませてからベッドに寝かせた。


 その後、僕とアルブだけ医務室を出ていく。後方からバカっ! と言う怒号が聞こえたような気がするが暑すぎて頭がおかしくなってしまったのだろう。


 僕は観客席に戻り、猛暑の中、戦いを見る。


 どうやら、試合場も直射日光が当たり、暑すぎて戦いにならないと言うことで、大量の水がまかれた。地面が湿り、水蒸気が熱を奪うらしく、心なしか闘技場全体の気温も下がった気がした。


「にしても、第三回戦になると、皆強いな……。僕はこの先勝てるのだろうか」


「主なら大丈夫ですよ。楽勝とはいかずとも、耐久力はとても高いです。なので、怖気づくことなく戦えば、スキルを使わなくともいい所まで行けます。毎日鍛錬をしているんですから、魔法に頼っている者に劣りはしませんよ」


 アルブは僕の膝の上に乗り、僕を励ましてきた。


「ありがとう、アルブ。そうだよね。毎日鍛錬しているし、良い所まで行けるよね」


 僕はアルブを撫で、心を燃やす。あと一〇回勝てば賞金とライアンと戦える権利が貰える。別に欲しいとは思わないが、どこまで戦えるのか知りたいので、頑張るつもりだ。


 八月一〇日の午前に第三試合が終わり、八月一一日に第四試合が始まった。


 僕とシトラ、ミルの三名は第四試合も勝利し、八月一二日の第五試合に進む。


 第五試合にまで来ると、三〇〇人ほどになり、試合数が一五〇になる。ここまで来ると、相手の行動や作戦を読み、戦い合うことが増える。


 例えば僕なんかは一番覚えられやすい。髪が白く、大剣を持っている少年が第五試合まで残っていると言うだけで注目されてしまう。


 今までは『無視』によって存在を薄めていたが、アルブのスキルが適用されなくなっているので、目だって仕方がない。


 僕は今のところ拳しか使っておらず、大剣は背負ったまま。又は場外に置き去りにしており、拳の威力が半端ではなく、魔法は一切使わない男で、異様に強い人間だと思われている。


 多くの男が僕を倒そうと試行錯誤しているらしく、一番言われているのは『身体強化』で速攻を仕掛けると言う作戦だ。長期戦では確実に負けると思われているのか、開始一秒から全力で戦いにくる場合が多い。こういう具合に、相手を研究して戦法を変える楽しみが増えた。


 ミルとシトラも、橙色以外の髪色で珍しいため覚えられていた。クサントス領は獣族の偏見がないため、大した差別はなく、二人が勝つと皆がたたえ合っていた。二名にとってはルフス領よりも住みやすい領土かもしれない。


 八月一四日の第六試合が終わるころには一日で試合が終わり始めるようになり、出場者の体調も考え、男と女が分れ、一日置きに試合が行われるようになった。


 女、男の順で試合時間が五分追加され、一〇分間の戦いになる。今までの二倍と考えると、相当きつい戦いになりそうだ。


 八月一五日、女の第七試合。


 出場者は六二名。獣族が三分の一を占めており、髪色が違う者が混ざっているため、獣族の身体能力が高いことがうかがえる。


 試合数は三一試合。すべて一〇分かかる計算だと、三一〇分。五時間ほどで終わる計算となる。なので、試合場が四つに分かれていたが、全ての試合場が合わさり、大きな一つの試合場で戦いあうことになった。その方が全ての試合を見ることができるので、盛り上がりも増す。


 シトラは七戦目、ミルは二〇戦目となり、緊張感がひしひしと伝わってくる。


「ふぅ……。はぁ……。もう、ここまで来るとさすがに緊張してくる……」


 シトラは朝っぱらからずっと瞑想をしており、心を落ち着かせている。あまりにも緊張しているので、どうにかして緊張を和ませてあげられないか考えるも、抱き着いて背中を摩るくらいしか思いつかなかった。


「ああ、シトラさんだけズルいですー。ぼくにもキースさんの抱擁をくださーい」


 ミルの方はブラックワイバーンや黒いマクロープスとの戦いのおかげであまり緊張していなかった。あれほど強い敵が見当たらないと言うのも自信の表れになっている。

 ただ、油断しているわけではなく、こうすれば勝てると言う戦いを編み出しているため、余裕が持てるのだ。シトラにはまだ、どうすれば勝てると言うはっきりとした戦略が無いので、緊張しているのだろう。


「シトラなら大丈夫。勝てる、勝てるよ」


「うん、私なら勝てる……。絶対に勝てる……」


 シトラは精神を統一させ、試合場に向かう。彼女の体力は十分ある。動けなくなるほど攻撃を受けたり、場外にはじき出されたりしなければ簡単に負けはしない。


 シトラの相手は獣族の女性で熊族だった。

 力が強く体格が大きい。シトラの力と同等かそれ以上。


 シトラは獣拳を使えるとしても、相手も簡単な橙色魔法なら使って来るかもしれない。体の能力だけで言えば、シトラの方が早く力が弱い。熊族の方が力が強く、速度が遅い。攻撃をどのように当てるのかが重要な点だ。


「では、両者共に礼」


「よろしくお願いしますっ!」


 両者共に深々とお辞儀をして白線まで移動し、距離が一〇メートルほどの位置で停止。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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