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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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蒸し風呂

「大きく動いても仕方ないよ。眠るだけなんだからさ、まったりしないと」


 僕はミルとシトラに返答した。


「むぅ……。なんでなんで……」


「ほんと、バカなんだから……。全然やる気がないのよね……」


 ミルとシトラは頬を膨らませ、僕を睨む。僕はどうしようもない男と思われているようだ。


 僕達は服を着替え、お風呂に向かう。個室のお風呂なのにとても広い。僕達三名がお湯に入っても足が全然余裕で延ばせる。加えて露天風呂なので、外の景色がありありと見えた。


 まだ昼間なので、明るく景色がはっきりと見える。まあ、シトラとミルの姿もよく見える。


「キースさん、ぼくの体をちらちら見すぎですよ……。どうせ見るなら、しっかりと見てください!」


 ミルは全裸で立ち上がり、両手を目一杯広げ、胸を吐出させる。


「ミルちゃん、大胆過ぎ!」


 シトラがミルを押し倒し、体をすぐに隠させた。そのせいで、水しぶきが上がり、僕の顔に大量に掛かる。お湯を飲みそうになったが口の中に入ったお湯を排水溝に吐き出し、呼吸を確保する。


「もう、シトラさん、邪魔しないでくださいよ。キースさんがせっかく見ていてくれたのに」


「あんな大胆な行動を取られたら、飛びつかざるを得ないわよ。ほんとに、大胆な猫ちゃんなんだから……。もっとおしとやかに出来ないの?」


「シトラさんに沢山追い越されちゃってるんですから、ぼくも頑張らないといけないじゃないですか。キースさんの心をしっかりと掴みたいんですよ。そのためにはこのくらいしないと」


「キースはミルちゃんのことが大好きだから、そんなことしなくても大丈夫」


「でも、ぼくはキースさんに大好きってまだ言ってもらってませんよ」


「私だって言われていないから、気にしなくても大丈夫。キースは律儀な男なんだから、ミルちゃんが一五歳になるまで襲おうとしない。私だって襲われてないんだから」


「でも、シトラさんは自分からキースさんを襲ってるじゃないですか……。ぼくだってキースさんとイチャイチャしたいのに……」


 ミルは指先を突かせながら僕の顔を見る。


 僕はミルの手を握り、指と指の間にするりと入れ込む。絶対に離さないと言う意味も込めて恋人つなぎを行った。


「ミル。これで我慢してくれない?」


「うぅ……。もっともっとー! これくらいしないと満足できません!」


 ミルは僕に抱き着いてきた。もう、そんなにくっ付いてきたら肌と肌が合わさってしまうよ。


「これでギリギリ許します」


「はぁ、仕方ない……。少しの間だけだからね」


 僕はミルに抱き着き、背中を摩る。少しでもミルの気がまぎれればいいなと思い、行い始めたが、どうやらミルの機嫌をよくできたらしく、怒って来なくなった。


「ああ、ぼくもキースさんと熱い口づけをしたいです……。もう、がっつけばすぐそこにあるのに、一五歳にならないとできないなんて……。あと二三日も待たないといけないと考えると、時の流れが遅すぎます……」


「二三日なんてあっという間だよ。すぐにやって来るさ」


「キースさんとぼくの時の流れ具合は全然違うんですよ。早く着てほしくて仕方ない時間と普通の日が来る時間とはわけが違います。今にも未来に駆けていきたいくらいなんですから」


「じゃあ、頬同士で我慢する?」


「うぅ……。我慢できますかね……」


 ミルははにかみながら呟いた。僕はミルの頬に軽くキスをする。すると、ミルも僕の頬に軽くキスをした。


「ああっー! もっと口づけしたくなっちゃいましたー!」


 ミルは僕の腕の中で暴れ、気が狂いそうになっていた。アルブを抱いているシトラは視線を僕に合わせ、コクリと首を振り、全身のお湯を綺麗に拭きとってから皆で蒸し風呂に駆け込む。


「ああ……。ぼーっとしてきました……。なにも考えられません……」


 ミルは胡坐をかき、鼻から息を吸い、息をゆっくりと吐くと言う瞑想に近い呼吸法を行いならが、蒸し風呂の中で耐えていた。


 僕はミルの体を魔力視で見る。体内にあった魔力が体中を巡り、不要な魔力が汗に乗って流れ出ていた。薬の影響か、ミルの汗から漂う甘い香りはせず、焼き石に駆けるアロマ水に香りしかしない。


 シトラも鼻から息を吸い、ゆっくりと吐く呼吸を行い全身を暖める。


 僕は焼き石にアロマ水をかけ、室内の湿気を一気に上げた。体が悲鳴を上げる熱さで、汗が滲み出てくる。


 老廃物を出し、体の血行を促進している。頭が機能しなくなり、意識が低迷してくる。そろそろ出て水風呂に入らなくてはならない。


 僕はミルを抱き、共に水風呂に入った。他のお客さんはいないので、頭まで水に浸かる。水風呂が氷かと思うほど冷たく、血管が一気に締まり、心臓がバクバク言っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。す、すごい……。冷たい……。息がすうすうします」


 僕とミルが水風呂に浸かっていたら、シトラがゆっくりと出てきて足先から全身入る。


「はぁー。生き返るー。もう、ぶっ倒れるかと思っちゃった。でも、これくらいしないとやり切った感じがしないのよね」


 熱ったシトラの顔が、とても艶めかしい。僕はミルを抱きしめながら水風呂から出て体を布で拭く。露天風呂の近くに寝ころび椅子があり、解放感抜群な休憩が出来る。


「あぁ……。キースさん、ぼく、意識が飛びそうです……」


「大丈夫……。ボーっとしているだけだから……」


 僕とミルが意識を錯乱させているとシトラとアルブやって来て椅子に座った。そのまま、ボーっとして空を眺めていた。体が冷えてきたらもう一度同じように蒸し風呂に入って水風呂に浸かる、また外で風をあびた。

 三回繰り返して身も心も疲れを取ったころには全員、良い笑顔をして脱衣所で体を拭いていた。


 そのまま浴衣を着て食事をする部屋で待っていた。すると、前菜から少しずつ料理が運ばれてきた。お酒は飲まないと言ってあるので、持って来ない。お酒の料金を食事に回してもらえないか交渉すると快く受け入れてもらえた。さすが、高級な宿。相手の要望に応えられるのがすごい。普通は無理だと思うのだが、やってくれるところに温かみを感じた。

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