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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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橙色武術祭、本戦

 お風呂に入ったあと、シトラとミル、アルブの三名は眠り、僕は鍛錬を行った。遊んでいたら体の力が抜けてしまうかもしれない。少しでも力が落ちないように鍛錬を繰り返す。


 八月二日、ミルとシトラの橙色武術祭本戦の初戦が行われる。


 橙色武術祭は男女合わせて八万人の参加者がおり、男五万人、女三万人が七勝になるように戦った結果、男七一四二名、女四二八五名の者が本戦に出る。


 八月一日はお知らせや対戦表が発表されただけで、戦いは無かった。


 今日から、本格的に試合が始まるようだ。


 今日だけで初戦をすべて行えなければ明日に持ち越される。

 闘技場の試合場は四つに分けられ、男女二カ所ずつ使用される。


 男の方は単純に計算して三七〇〇試合ほどあり、女は二一〇〇試合ほどある。

 両方合わせて五八〇〇試合あり、一試合の制限時間は五分。


 全試合は試合場が四つあることで四分割されるので一四五〇試合。


 最も時間が掛かったとして七二五〇分。つまり、一二〇時間なので、ずっと試合をし続けて五日掛かる。


 初戦をするだけで五日掛かるって出場者多すぎ……。


 今日、シトラとミルの番が回ってこない可能性もある。ま、実力差などもあるので、五分も経たずに終わってしまう時もあるだろう。


 約一一〇〇〇名の出場者の内、五五〇〇名は初戦で脱落する。その後も戦い続けて一三回勝てば優勝だ。


 一三回のうち、何回不戦勝になれるかで最後まで残りやすくなるか決まってくるだろう。


 僕は一〇連勝しているので、初戦、二回戦、三回戦まで不戦勝になっている。どうやら、七勝から上は不戦勝になれる回数らしい。八勝や九勝は案外多かったが、一〇勝は僕とオリーザさんだけだった。僕は八月の中盤くらいまで、戦いが無いかもしれない。


 僕達が闘技場にやってくると物凄い人の数だった。皆、戦いが好きなので、試合を見に来るのだろう。八万人も入れるわけがないので、外で待機している人たちもいる。こんなに熱い中、外で待つなんて……。熱中症になってしまいそうだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。八月、熱すぎます……。人がこんだけいると密集してもっと熱く感じてしまいますよ」


 ミルは手で風を起こし、顔を冷ましていた。


「そうだね。水分補給をこまめに取らないと絶対に倒れちゃう。でも、戦う時に動けたらいいから、熱い所で待たなくてもいいんだよ。涼しい場所で時間を潰していてもいいんじゃない?」


「何を言ってるんですか。戦いを見るために来たんですよ。戦いを見ずに涼しい場所で待つなんて出来ませんよ」


 ミルはやる気満々だ。戦いを見るのとすることが好きなので、待ちきれないらしい。


「そ、そうなの? シトラは……」


「ふんす……」


 シトラも鼻息を荒げ、早く見たいと言わんばかりに笑みを浮かべた。


「シトラもやる気満々だね……。はぁ、開いている場所があればいいけど」


 僕達は参加費金貨一枚を払い、本戦もずっと見られるようにする。会場はすでに人だらけ。多くのクサントス領の者が見に来るので参加費だけでもすごい儲かりそうだ。


 会場の中央にはすでに八名出ており、試合開始の午前八時を今か今かと待っていた。


 ここから初戦が終わるまでほぼ休みなく試合が行われる。夜の一二時から朝八時までは休みなので倒れる者がいると言う訳ではない。皆、戦いが好きなので試合が始まる合図のファンファーレが起こると会場も雄叫びを上げて開始の合図を掻き消す。


 あまりにうるさく、耳を塞がざるを得ない。審判が一六名おり、皆、ギルド員だったり、騎士だったり、何かしらの事態が起こった時、すぐに配慮できるようになっている。なので、死人が出る事態にはならない。


「さあ、始まりました! 橙色武術祭。八月の間、頂点を目指す者達がただただ戦い合います。優勝者には男女共に金貨一〇〇〇〇枚が送られます。加えて、男性には橙色の勇者様への挑戦権も与えられます。クサントス領に籍を置いている方であれば、橙色の勇者様をうち破ったさいに新たな橙色の勇者となり、来年の橙色武神祭終了まで、橙色の勇者様を引き継いでもらいます」


 ――この大会、橙色の勇者を見つけ出すための大会なのか。だから橙色の勇者は安定して強い者が多いんだな。賢い大会運営だ。でも、男性の方が強いと言う古い考えはやめたほうがいいと思う……。女性が勇者の領土があるんだ。そう言う所は少し古臭いのかな。


「優勝して金貨一〇〇〇〇枚をもぎ取ってきます! なんなら、一位二位をぼくとシトラさんで埋めてしまえば、確実にお金は手に入ります! 危険を冒さずに、大金を手に入れる好機ですよ」


 ミルははしゃいでいた。もう、金貨のことしか頭にないようだ。


「金貨一〇〇〇〇枚を手に入れたところで何に使うか決めてないけどね」


 シトラはお金のことはあまり気にしていないようだ。戦えたらそれでいいと言う戦闘狂の思考をしている。


「男女ともに金貨一〇〇〇〇枚もらえるなんて、太っ腹だよね。女組の方が参加人数が少ないから、手に入れられる確率が上がる。シトラとミルが手に入れられる可能性も高いね」


 僕は別にお金などいらないので、シトラとミルが楽しんでくれたらそれでいい。


「では、試合中ですが現橙色の勇者様であらせられるライアン・ハートフルさん、今回の意気込みをお聞かせ願えますか?」


 司会者の女性が会場全体がよく見渡せる特等席に座っていたライアンに音声を広げる魔道具を向ける。


「えっと……。今回の参加者の中に、化け物が混じっているんですけど今から戦うのが楽しみで仕方ないです。皆には言いませんが、そいつを見たらこいつだって思うので楽しみにしていてください」


「ありがとうございました。なにやら。不穏な空気が漂っておりますよ……。勇者の座を三年以上維持しているライアンさんが警戒している方がいるようです。いったい誰なのでしょうか。これは試合から一時も眼が離せませんね!」


 女性は魔道具を握りしめ、興奮していた。


「エール、エールはいりませんか! キンキンに冷えた美味しい美味しいエールと共に、試合を観戦しましょう!」


 エールの売り子さんが会場を歩き回り、大量に儲かっていた。この暑さの中、冷えた飲み物を売るのは流石にずるい。売れるに決まっているじゃないか。


 試合が進み、シトラの初戦がやって来た。案外早くてほっとしている。夜中とかになると、体長を崩しかねない。午前中に試合をしてもらえて嬉しい限りだ。


「じゃあ、キース。戦ってくるね」


「うん、気張らずにね」


 シトラは観覧席から立ち上がり、中央の試合会場に移動する。


「シトラさん、なら勝ってくれるはずです。絶対に大丈夫です……」


 ミルは僕やシトラよりも緊張しており、尻尾が真上に立ち上がっている。耳までぴんと上に向いていた。

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