手玉に取られる
「シトラ、撫でられて気持ちいいの?」
「そ、想像以上に……。キースは?」
「僕も凄く心が落ち着く。何だろう、母さんを思い出すよ」
「確かに、お母さんも胸が大きかったよね。えっと……、吸ってみる?」
「さ、さすがにそれは……、遠慮しておくよ。ミルが泣きそうだ」
「そうね。こんなことしてるだけでぬけがけだもの、私はずるい雌ね」
「まあ、ミルと何か約束しているみたいだけど……、何でそう思うの?」
「だって、身分が全然違う。私は奴隷。ミルちゃんは一般人。本当はミルちゃんの方が、位が高いの。キースとこういうことだって本当はミルちゃんの方が先になるの。キスだけでも抜け駆けしちゃったのに、さっきの避妊具を見て、またキースが取られると思って動いちゃった」
シトラは泣きながら言う。獣族の本能に従っているだけだと思うのだけど、自分の意志が弱いと言ってぽろぽろと雫をお湯に落とす。
「僕はシトラを奴隷だなんて思ってないよ。本物の家族だと思ってる。身分なんて気にしなくてもいい。シトラには笑って幸せに生きてほしいんだ。だから、そんな顔しないで」
僕はシトラを抱きしめる。大きな乳房に顔を埋める形になるが、抱き着きたかった。シトラも、僕の頭を抱きしめ、心臓を音を聞かせてくる。仕事中は冷静なシトラでも、今の心拍は拍手よりも早い。
「キース……」
シトラは求めるような瞳をして来た。何を求めているのかは昨晩と同じ瞳を見ればわかる。僕は微笑んで、口づけをした。柔らかい唇同士が重なり合い、数秒後に子供のころは考えられなかった深い大人のキスへと昇華する。
キスだけをし続けて何分経っただろうか。僕の下半身が異変をきたしていた。ふにゃふにゃから木の棒になっていたのだ。
「よ、よかった……。キース、人間の性欲部分はちゃんと残ってたんだね。睡眠欲と同じく、性欲まで無くなってたのかと思った……」
シトラは泣きながら言った。どうやら、僕の男の象徴か木の棒になったのが嬉しいらしい。
「に、にしても、これ……。ちょっと……、どうしよう」
シトラは実験に成功したのはいいものの、何か困っている様子だった。
「どうかしたの?」
「い、いや……。その、キースのが想像以上だったから……」
「えっと、どういう意味?」
「簡単に言えば、ミルちゃんのおっぱいくらいを想像していたら、私以上の胸が出て来た感じ……」
「なるほど、確かに普段は見えないもんね。えっと、聞いておきたいんだけど、シトラは子供の作り方って知ってる?」
「なっ……。ば、バカじゃないの。そんなこと、こんな時に聞かないでよ!」
シトラは頬を真っ赤に染め上げ、目を吊り上げながら声を出す。
「ご、ごめん。でも、薬剤師の森の民さんが大切なことなんだって言ってたんだ。相手とちゃんと話し合わないと駄目だって」
「そ、それはそうだけど……。えっと、えっと……、私は一応性奴隷だし、子供の作り方は知ってる……」
シトラは指先を合わせながらぼそぼそと呟いた。
「そうなんだ。ん、翌々考えたら性奴隷って子供を作ることをしてる奴隷だよね? つまり、遊びって性行為のことなんじゃ」
「え……、今さら?」
「あはは……、子供を作る行為と性行為がどうもうまく結びつかなくてさ。今、合致したよ」
「はぁ……。ほんとバカね。でも、キースも知識を付けてくれたのね」
「これからの仲に関係する大切なことだって言われたからさ。真剣に聞いてきたよ」
「どんなところで真剣になってるのよ……全く」
「そりゃ真剣になるよ。だって、僕はシトラとミルとずっと仲良くしていたい。そう思ってるからさ、適当にはしないよ」
「私達がどんなにお婆ちゃんになっても若くて綺麗な子に目移りしない?」
「…………」
「そこは即答しなさいよ! 変態!」
僕とシトラはお風呂を出て体を乾いた布で拭いてから、ベッドに寝ころぶ。柔らかくてとても寝心地の良いベッドだった。
僕の下半身は未だに元気で、なかなか戻らない。
シトラが色々してくれたら、なんか……やばかった。語彙力が無くなるくらい、幸せなひと時だった。性行為はしなかったが、シトラはなぜか満足げな表情で、先ほどよりも仲が深まった気がする。
「ふふふんっ、ふふんっ、ふふふんっ」
「シトラ、なんか機嫌がいいね。さっきの宿、そんなに楽しかった?」
「えへへ、今のつよつよキースをあそこまで手玉にとれるなんて思ってなかったから、完全勝利の優越感を久々に味わってるの」
「た、確かに、完全敗北だった気はするよ。と言うか、僕たちは何か忘れてない?」
「……買い物」
「それだ……」
僕たちは午後六時頃に愛宿を出て、買い物が全然終わってないことに気づき、急いで料理の食材を買いあさった。
「キュウリ、ナスビ、サツマイモ、どれもこれもキースより柔らかくて細くて弱いわね」
「ちょ、シトラ。人前でそう言うことは言わない方がいいんじゃない」
「なによ、別に変なことを言ってないじゃない。キースは野菜にも勝てないの?」
シトラはにやにや笑いながら聞いてくる。ほんと、一度調子に乗ったら乗り続けるんだから。
僕はため息をつきながらシトラと買い物に付き合い、午後六時四〇分ごろに家に到着した。シトラが家の扉を開けると、玄関に胡坐をかきながら座り込んで頬を肉まん以上に膨らませているミルの姿があった。アルブはミルの股部分で寝そべり、眠っていた。
「遅いお帰りですね!」
ミルは不貞腐れながら言う。
「あはは……。シトラと一緒に買い物にちょっと行っていたんだよ。ミルは眠ってたからさ、起こすのも可愛そうだなと思って」
「うわぁ~ん、ぼくもキースさんと買い物に行きたかったです~」
ミルは玄関でゴキブリのようにひっくり返り、駄々をこねた。
「これから買い物に行く機会なんて何度もあるよ。そんなに悲しがらないで」
「うぅ……、そうかもしれませんけど……。今日は今日しかないんですよ」
「じゃあ、今日よりもいい日に買い物に行こうか」
僕が呟くと、ミルはパッと明るくなり、頭を縦に大きく振った。
「むぅ、今日よりもいい日に行くなんてズルいじゃない。私も連れて行きなさいよ」
「い、いや、シトラは今日を楽しんだでしょ」
「そうですよ、シトラさん。今度はぼくが楽しむ番です! シトラさん、今日は相当楽しかったみたいですね。もう、顔に楽しかったと書いてますよ」
「そ、そんなことないわよ。ま、まあ、ほんの少し楽しかったかな」
「むぅ~」
シトラとミルは喧嘩になりそうになったが、僕が間に入り、仲裁する。ほんと、喧嘩し始めたら止まらないんだから。
僕達は夕食の料理を三名で作り、美味しく食べる。僕とシトラ、ミル、アルブの四名はお風呂に入り、仲を深めた。
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