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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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シトラの誕生日

「少年、君は明後日の方向を見ていなさい」


「は、はい」


 僕はリーフさんに背中を向け、何も見ないようにする。いったい何を調べるのだろうか。


「ふむふむ……。獣族にしてはあまりにも綺麗な状態だな。珍しい。上玉も上玉、体内の温度もわるくない。骨盤も広いし、安産型だ。こりゃ、何人の子を産んじまうんだろうな。少年、生活費と教育費はしっかりと稼ぐんだぞ~」


「な、なんか色々と早いですね。でも、大丈夫です。ミルが生活費を貯めまくってるので」


「彼女任せとは、男が廃るんじゃないか? 力があるのなら、金稼ぎに使えばいい」


「ミル任せにしている訳ではなく、彼女が自分で貯めたいと言っているんですよ。僕の方でもお金の管理はしてます」


「そうかそうか。ならいいんだ。にしても嬢ちゃんもいい男を選んだな~。ただ、髪色が無色の魔力同士だからなぁ……。ただ、金髪ならまだ可能性はある」


「どういう意味ですか?」


「えっとだな……、説明するのが難しいんだが、たまに親の髪色と違う子が生まれる時がある。例えば、両親がイエロー同士だとすると、子供もイエローになる確率が高い。なんなら、九.九割だ。ただ、時たま、両親の両親の髪色が現れる時がある。だから、必ずしも無色の魔力しか持たない子が生まれるわけじゃない」


「なるほど……。でも、風当りは悪そうですよね」


「そうだな……。無色の魔力しか持たないとなると、三原色の魔法が使えないからな。無色魔法と言っても生活魔法くらいしかない。あんな魔法では戦うのは無理だ」


「ですよね……。なので僕も魔法ではなく、武力で戦っています。僕の師匠が魔法よりも自分の肉体を鍛えろと教えてくれたので、ずっと鍛錬をして己を鍛えています。功を奏して今、このように生きていられるんです」


「いい師匠のようだな。ほんと、君たちは興味深い。良い機会だ、嬢ちゃんから獣族用の媚薬のフェロモンをちょうだいしよう」


 リーフさんはミルにいったい何をしているのだろうか。


 八分ほど経ち、リーフさんは目を開けて振り返ってもいいと言った。振り返ると、ミルは服を着ており、すやすやと眠っている。リーフさんは薬草をまぜあわぜ、発情止めを作った。


 以前と同様に金貨三〇枚を払い、ミルを背負う。


 リーフさんは避妊具が入った紙箱を金貨一枚で買わせてきた。加えてスライムの潤滑剤まで、金貨一枚で売ってくる。まぁ、金額は薬よりも安いので、買っておいた。


 薬と同じく、紙袋に入れてもらい、受け取る。


 ――避妊具はミルがアイクさんから貰っていた気がするけど、まあいいか。


「少年、すまないがこの馬鹿も連れて行ってくれ。面倒なら、道端に捨てておいても構わない」


 リーフさんは未だに気絶しているライアンを部屋から連れ出し、僕に渡してきた。


「わ、わかりました」


 僕はライアンの服に触れ、持ち上げた。すると、頭の中で聞き覚えのある声がする。


「大量の病原菌に触れ、手に付着したことにより、加護(スキル)『無菌』を取得しました」


 アルブの声が頭の中に流れた。よくわからないが、何かしらの効果を持った能力なのだろう。眼に見える効果があればわかりやすいのだが、僕の得る効果は目に見えないことが多い。


 僕はライアンを引きずりながら、薬屋の外に出る。


 いつの間にか昼を過ぎており、ライアンをギルドに返したあと、中途半端な時間になってしまった。


 ――ミルも眠ったまま目を覚まさないし、家にいったん帰るか。


 僕はミルを家に寝かせてシトラと買い物にでも出かけようと計画を立てる。


 家の前に到着し、扉を叩いた。


「キース、今日は早いのね」


 シトラは扉を開け、僕を招き入れる。


 僕は薬が入った紙袋と避妊具、潤滑剤の入った紙袋をいつもの癖で無意識に彼女に渡す。


「いや、ミルの薬を買うのが案外時間が掛かったんだ。ミルも全然起きないし、今日は仕事をお休みにするよ。ん……シトラ?」


 シトラは紙袋の中身を見て固まっていた。白い肌が真っ赤になっている。


 ――どうしたんだろう。別に高かったわけじゃないし、怒られはしないか。


「薬は高かったけど、あとの二つは安かったから気にしないで。あ、シトラ。ミルを寝かせるから、寝室に布団を敷いてくれる」


 僕はミルを寝室に運び、シトラはミルの布団を敷いた。ミルを布団に寝かせ、薄い布をかける。


「シトラ、一緒に買い物にでも行こうか」


「ひゃ、ひゃい!」


 シトラは眼を回しながら、動揺しまくっている。いったいどうしたのだろうか。


「シトラ、どうしたの? さっきから変だよ」


「べ、べ……、別に変じゃない。情報の整理が出来てないだけ……。ふぅ、か、買い物ね。準備するからちょっと待ってて」


 シトラはちょっと待ってと言ってから三〇分ほどかけ、準備していた。僕はミルに抱き着きながら目を瞑り、眠りそうになっていたところを叩き起こされる。


「ふわぁ……、ん? メイド服じゃない。いつもよりお洒落……」


 シトラはレースが何枚も着けられた白いワンピースを着て、軽い化粧までしている。いつもの硬い印象から一変し、僕の心臓が高鳴るのを感じた。


「きょ、今日はこういう気分なだけ。アルブちゃんはミルに任せて二人で買い物に行きましょう」


 アルブはミルと同様に眠っており、僕の代わりにミルに抱き着いてもらう。


「じゃあ、行こうか」


 僕はシトラに手を差しだす。


「え、ええ。行きましょう」


 僕とシトラは歩きながら市場に向かう。昼時なので人が多く、とても賑わっていた。


「いやぁ、人が多いね。シトラは大丈夫?」


「…………こうしていれば、大丈夫」


 シトラは僕の手を握り、左肩にピタリと寄り添ってきた。

 彼女の大きな胸が僕の腕に当たり、柔らかさを得る。


「シトラ、今日はやけに積極的だね。何気に初めてのデートを楽しもうとしてる?」


「で、デートって……。ただの買い物でしょ」


「シトラにとってはそうかもしれないけど、僕にとってはシトラと初めての買い物なんだよ。デートって言っても差し支えない。今日は八月一日。シトラの誕生日なんだから、楽しもうよ」


「全く……、忘れてなかったんだ。じゃあ、しっかりと付き添ってよ」


「もちろん。今の僕はシトラを守れるだけの強さがある。安心して歩いても大丈夫。僕が必ず守るから」


「何そのキザっぽい言い回し……。もぅ、そんなんで喜ぶと思ったら大間違いなんだから」


 シトラの尻尾はブンブンと振られ、自らスカートを捲ってしまいそうな風を起こしている。


 そんな彼女と僕は市場を一緒に歩いた。


 今は八月と言うことで橙色武術祭がクサントス領全体で行われている。クサントス領は一年の中で八月が一番賑わっているようだ。


 屋台で売っているかき氷を銅貨五枚で買い、僕はみぞれを選んだ。おじさんから無色透明のかき氷を受け取る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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