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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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ライアンのライアン

「リーフさん、大丈夫ですか」


 僕は倒れている森の民のリーフさんに声を掛けた。


「ああ、キース少年か……。いやはや……、手を少し伸ばして腰に貼る薬草を取ろうとしたら、ぐきっとなってしまってな。こんな老骨の見っともない恰好を曝してすまないね」


「老骨って……。僕にはまだ若々しい綺麗な女性にしか見えませんよ」


「はははっ、口が上手いね~。年寄りを褒めても何も出てこんよ。机の上に薬草飴が入ってるから食べなさい。体調がよくなるよ」


 リーフさんは震える指で机を差し、話した。


「ありがとうございます。あとでいただきますね」


 僕はリーフさんをお姫様抱っこしてお店の奥の部屋にある、木製のベッドに寝かせる。


 リーフさんの部屋は温泉宿のお土産ばかりが飾られており、風刺画や水墨画なども掛けられている。森っぽさは木製のベッドしかない。


「いやぁ、すまないね。迷惑をかけてしまった」


「いえいえ気にしないでください。ただ、その調子だと発情止めの薬は作れなさそうですね」


「そうだね……。私も若くないのに無理しちまったのがいけなかったな。薬を飲んで少ししたら治ると思うから、店番でもしておいてくれないかな。お客が来たら、私に知らせてくれ」


「わかりました」


「あと、嬢ちゃんの方は今、どうなっている?」


「魔力を吸っても吸ってもすぐに発情してしまって手が付けられなくてですね」


「なら、少年が椅子に座って膝の上に嬢ちゃんの頭を乗せて撫でてあげなさい。獣族の母親が子供をなだめる時に行う。多少大人しくなるはずだ」


「は、はい。やってみます」


「キースさ~ん、キースさ~ん。ぼくぅ、体が熱くて熱くて仕方ありませ~ん」


 ミルは冒険着を脱ぎ、下着姿になって椅子の座っていた。下着すら脱ぎ捨てようとしている。


 僕は受付の椅子に座り、ミルを呼ぶ。


「ミル、おいで」


「は~いっ。なんですか~」


 ミルは僕の体にギュッと抱き着き、頬擦りしてくる。全身汗まみれだ。


「膝の上に頭を置いてくれる」


「こうですか?」


 ミルはしゃがみ、腕を伸ばして頭を膝の上に乗せる。僕はミルの頭を撫でた。


「よしよし、ミルはいい子だね~」


「ふ、ふにゃぁ~」


 ミルは子猫のような声を出し、尻尾をくねらせながら蕩けていた。発情しているにも拘わらず、普通に甘えている時と変わらない。ここまで効果があるとは……。


「アルブ、ミルの服を持って来てくれる」


「わかりました」


 アルブは床に落ちたミルの服を持ち、僕のもとに戻って来た。短すぎるショートパンツに胸しか隠せない上着を着せる。お腹が冷えないか心配になるが、夏で気温が高いので大丈夫だろう。心配なのはお客さんが来た時に僕が対応してもいいのかと言う点だ。


 ミルが眠ってから五分後、お店の扉が開き、風邪っぽい子供を抱いた女性が入って来た。


「すみません、リーフさんはいますか?」


「今、呼んできますね」


 ミルが寝ている間にリーフさんを抱き上げて子供を見せる。リーフさんは手を伸ばし、子供に触った。体温や口の中などを見て、診察している。


「ふむふむ……。喉が腫れとるな。いつ頃から風邪っぽいんだい?」


「昨日は元気だったんですけど、朝起きたらぐったりしてて。体温を測ってみたら三九度もあって……」


「熱い外と涼しい室内を行き来して体の温度を調節する機能が狂ったのかもしれないな。解熱剤を出すから、水分をとってしっかりと休ませなさい」


「は、はい。わかりました」


 リーフさんはすでに作成済の解熱剤を棚から取り出し、銀貨一枚を貰って手渡した。


「解熱剤って安いんですね」


「いや、クサントス領は健康保険を払えば多くの薬が安く買えるようになっている」


「え……、保険なんてあるんですね。じゃあ発情止めも保険に加入すれば安くなんですか?」


「安くなるが、クサントス領に住んでないと保険に加入できない。残念だったな少年」


「そうですか、わかりました」


 僕はリーフさんをベッドに戻し、ミルの頭を撫でながらリーフさんの腰が回復するのを待っていると、ライアンと思われる人物が帽子とサングラス、マスクを着け、お店に入って来た。


「あ、あれ……、何でこんなところにキースが……。い、いや、今はそれどころじゃない」


 ライアンは声質を変え、僕に話かけて来た。


「あ~、えっと、リーフさんはどこにいる?」


「連れてきますね」


 僕はリーフさんを抱きかかえてライアンのもとに連れて来た。


「ライアン……。なんだね、その格好は?」


「な、何でわかったんだ……」


 ライアンは帽子とサングラス、マスクを取った。


「いや、服装とか髪色、眉の色なんかもほぼ橙色なんて滅多にいないだろう」


「き、気づかれたのなら仕方がない。リーフさん、いつもの薬をくれ」


「はぁ……、女遊びをしてまた貰ったのか。懲りない奴だな」


「い、いやぁ~、酒が入るとつい……」


「ほんと、モテにモテまくっとるの~。昔は純粋だったのに、今では頼まれたらホイホイやっちまう遊び人になりおって」


「あはは……、すみません」


 ライアンは頭をペコペコと下げていた。リーフさんと昔からの知り合いみたいだ。


「じゃあ、パンツを脱いでもらおうか」


「ま、またですか……」


 ライアンは頬を赤らめ、股を閉じた。


「またですか? じゃない。なんなら、こっちが言いたいわ。またと股をかけなくてもいい」


「そんなつもりないですよ……」


「私は腰が痛くて動けんからな、この少年も同行する」


「は、はい……」


 僕とリーフさん、ライアンは別室に向かい、診察をした。ライアンはズボンとパンツを脱ぎ、下半身を丸出しの状態にする。顔を手で隠し、髪まで真っ赤になりそうなほど恥ずかしがっていた。


「はぁ~、どれどれ……。まったく、この腑抜けめ。何回もらって来たら気が済むんだ」


 リーフさんは細い木の棒でライアンの下半身にぶら下がっている男の象徴を持ち上げ、診察する。


「間違いないな。薬を出そう……。何度も貰って来ておるが、もっとマシな女を捕まえなさいな。品がない女ばかりと遊んでいるだろう。だから貰ってくるんだ、馬鹿者」


「じゃあ、リーフさんが俺と付き合ってくださいよ~」


「なっ! 私は三〇〇間近の婆だぞ。何を言っておる!」


「冗談ですよ~。俺、子供体型の女性に趣味ないんで」


「ば、馬鹿者! 大人をからかうな!」


 リーフさんは木の棒でライアンのライアンを思いっきり叩いた。


 ライアンは頭を床にたたきつけるように気絶し、泡を吹いている。


「全く、このエロガキ。強いからってちょっと調子に乗りおって」


 リーフさんは頬を赤らめており、ムスッとむくれている。

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