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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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正しい方法で稼ぐ

「ちょ、ミル。どう考えてもミルが倒したのに、何で僕になるの?」


 僕はミルの方を見て言う。


「いやいや、ぼくは最後まで倒せていませんし、逃げられそうになっていたんですよね。黒色のマクロープスの逃亡を阻止して倒したのがキースさんなんですから、キースさんが倒したと言ったほうが正しいです」


 僕とミルの言い合いは八分ほど続き、結局『名無し』の功績となった。

 Sランクの魔物の討伐によって冒険者ランクがEからAにあげられると言われたが、僕達はEの次である、Dランクで十分だと答え、唖然とされる。

 僕達は別に冒険者ランクにこだわっている訳ではない。ギルドカードを通行書や身分証として持っていたいから冒険者登録しているだけだ。


「通常のマクロープスの魔石を三〇個持って来ました。どれも色が濃いですね。僕とミルが倒したのは二九体で、金貨四〇なのだとしたら……。金貨一一六〇枚……」


「えっと……、とんでもない数を倒したのね……。でも、確かに魔石の数はある。加えてSランクの個体まで倒してしまった。黒いマクロープスの価値がはっきりとわからないから、また今度、支払わせてもらう。とりあえず、一一六〇枚分の金貨を持ってくる」


「わかりました」


 べニアさんはマクロープスの魔石を持って奥の方に向かう。その後、黒い板の上に大金貨一〇枚と中金貨一六枚を持ってきた。半分に分けられるように持って来てくれているのが、すごくありがたい。


「普通のマクロープスにここまでお金を払ってもらえるなんて感謝しかありません」


「普通と言っても最近の個体は冒険者の死者が出るくらい狂暴化している。討伐依頼にも影響が出てくるから、これだけの数を倒してくれてこっちとしてもありがたい。にしてもオリーザとライアンが向かったのに、ほぼキース君とミルちゃんが討伐しちゃってるのは何でだ?」


 べニアさんは首をかしげながら言う。


「こいつらの強さが異常だからだ」


 オリーザさんは腕を組みながら呟く。


「あなた達二人もだいぶ異常だと思うのだけど……」


「ミルちゃんは俺といい勝負できるくらい強いぜ。俺が魔法を使わなかったら勝てないくらいだ」


 ライアンは笑いながら堂々と言う。相手の強さを妬まず、敬意を払えるなんて勇者の鏡みたいな人物だ。


「ライアンが勝てない……。とんでもないな。えっと、ミルちゃんはキース君の師匠?」


「いやいや、キースさんがぼくの師匠です。ぼくはキースさんに勝った覚えがありません」


 ミルは頭を振りながら言った。


「な……。キース君、そんなに強いの?」


 べニアさんは僕に視線を向け、聞いてきた。


「ど、どうでしょう。僕自身はあまり強くないと思っているんですけど……」


 僕は強い弱いに興味はなく、勝てるか勝てないかに重きを置くべきだと思う。どれだけ強い相手でも弱い者が勝つ時があるように、強さと勝ちは結び付かない。だから僕は自分を強いとは思わない。


「キースさんは謙虚なので、自分から強いとか言いません。自分から強いと言うと警戒されますし、対策されますからね、知られていない方が都合がいいんです」


 ミルは自信満々に呟き、笑っていた。


「ドラゴンは潜むってことか。なるほどな」


 オリーザさんはなぜか納得し、頷いた。べニアさんとライアンも理解したのか大きく頷く。


 僕達はギルドで解散し、お金を持ってシトラが待つ家に向かった。


 扉を叩き、シトラを呼ぶ。するとシトラが扉を開き、玄関に立っていた。


「お帰りなさい。今日も大変だったみたいね」


「ただいま。ほんと、大変だったよ」


 僕はシトラにギュッと抱き着いて今日の疲れを癒す。シトラに抱き着くと癒し効果があるのはなぜだろう。


「ほんと、甘えん坊ね」


「あぁ~、キースさん、ぼくにも甘えてくださいよ~」


 ミルは僕に抱き着いてきて、入口でこけそうになった。アルブがミルの背中を脚で掴み、こけるのを止める。


「シトラ、今日の放出。たくさんもらってきたよ」


 僕はシトラに大金貨五枚と中金貨八枚が入った袋を渡す。そのまま彼女の隣を歩き、居間の方に向かった。


「はぁ、遅い日は相当儲けてくるのはわかってるんだけど、少し加減してほしいわね」


 シトラは袋を受け取り、中身を見る。


「ひい、ふう、みい、よ、いつつ……。だ、大金貨五枚。ひい、ふう、みい、よ、いつ、む、なな、や……。中金貨八枚……。うわあっ!」


 シトラは金貨の入っている袋を僕の頭目掛けて投げて来た。


「痛っ! も、もう。その袋、すごく重いんだから、投げたら危ないでしょ」


「ご、ごめん。つい……」


 シトラは床に落ちた袋を持って苦笑いを浮かべる。


 僕とミルが帰って来た頃には午後七時を過ぎており、夕食がすでに用意されていた。鳥の胸肉を使ったステーキにブロッコリーのサラダ。大豆の入ったスープと言う具合に食べ応え抜群の料理たちが並んでる。

食べ応えのある料理はお腹に溜まり、明日の活力になる。


 夕食を終えたあと、お風呂に入り、今日の疲れを洗い流す。シトラとミルも共に入浴し、他愛のない話をして気を緩める。


「キース、どんな仕事をしたら一日であんな大金を稼いでこれるの? なんか悪い商売をしているんじゃないでしょうね……」


 シトラは僕の方を見て呟いた。


「してないしてない。僕はいたって普通に冒険者をしているんだよシトラも戦った覚えがあると思うんだけど、マクロープスって言う魔物が物凄く暴れ回っていてさ、その個体が多くて沢山討伐しただけなんだ」


「本当に? 何か法律に背いた方法で稼いでいるんじゃないでしょうね……」


「神に誓えるよ」


「そう……。まあ、あれだけ稼げるということはそれだけ危険なことをしているってことよね。体の方は大丈夫なの?」


「うん。大した外傷はない。今回一番頑張ったのはミルだよ。普通のマクロープスよりも強い個体をミルが追い詰めたんだ」


「そんな、そんな。ぼくは敵の攻撃を避けてカウンターを打ち込んだだけですよ。なので、褒められることじゃありません」


 ミルは謙遜して自分の行いを低く見た。僕からすれば十分すごいことだと思うのだけれど、今までの鍛錬の成果が出せただけだと言う。


 体を洗ったあと、お風呂を出て、体に付着した水分を拭き取ったらシトラとミルは寝間着に着替える。僕は普通の冒険者服を着て鍛錬の準備をする。アルブはすでに眠っており、シトラとミルに寝床につれていかれた。


「さてと、僕はフルーファの手入れをして、また何か起こった時のために鍛錬を続けるぞ」


 僕は皆が寝静まっている夜に鍛錬をして体を絞る。次の日からマクロープスの被害が無くなり、気持ち悪いくらいに静かになった。黒い個体が倒されて懲りたのかもしれない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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