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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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獣拳

「べッベッベッベッベッベッベ!」


「疲れたからって甘い一撃は放たない方がいい。撃つ前に力を抜くんだよ。雑な一撃は隙だらけだ」


 僕はマクロープスの足首を持ち、頭を地面に叩きつける。


「五体目。討伐完了。残るは五体。戦えそうだった一四体でも目指すか」


 僕の方にマクロープスが寄って来なくなり、自分から戦いに行かなければならなかった。どうもミルの方に流れているようだ。でも、どっちに行っても同じ結果にしかならない。


「はははははっ! どうしたんですか! もう、終わりですか! ブラックワイバーンの恐怖はこの程度じゃありませんでしたよ!」


 ミルは五体のマクロープスからの攻撃を華麗な身のこなしで回避していた。

 攻撃をかわすたびにカウンターを敵の体に打ち込み、彼女は一撃も食らっていない。

 武器を使えばもっと楽できるのに、肉弾戦を選んでいる理由が僕にはわからないが、獣族の特徴として戦うのが好きと言うのと、自分の強さを相手に見せつけることが求愛と言うか、自分の価値を知らしめる行為らしい。

 なので、時おり僕の方を見て片目をぱちくりと閉じ、決め顔をしているのが敵を少々舐めているような気がしなくもない。でも出来てしまっているのだからミルの強さを認めざるを得ない。


「べッベッベッベッベッベッベ!」×五体。


「ぼくの戦いっぷりをキースさんに十分見せつけたので、あなた達はもう用済みです!」


 ミルは二体のマクロープスの顎に手を当てて少し引き、最短で首を回した。敵の首から冷や汗が出そうなほど大きな音がボギっと鳴る。

 首を折られたマクロープスは何が起こったのか理解できず、首が折られた影響で脳からの指令がとどかず、首から下が動かなくなり絶命。


「はあっ!」


 首を折るために使った反動を利用し、別個体の二体の首を掴み、強靭な体幹で身を捩じりながら首を折る。とんでもない荒業だが、出来てしまっているので怒る必要がない。


 ミルは一瞬で四体を倒し、残りは一体。


 マクロープスも頑張っているが晴れの日のミルには攻撃が当たらず、疲れていた。通常の個体よりも狂暴化しているマクロープスは疲れるのが早いのか。はたまた、ミルとの戦いが単純に疲れるだけなのか。調べるには通常個体の方のマクロープスがどれくらい動けるか知らないといけない。でも、この中に通常のマクロープスがいないので、調べることは不可能だ。


 ミルは敵のマクロープスから攻撃を躱し続ける。


 マクロープスの拳や蹴りがミルの顔や横腹、足、首、胸に飛んで行くが、どこをねらっても攻撃が彼女に当たらない。だから、敵は焦っている。

 ミルは焦るどころかあくびをしようとしていた。さすがにミルも舐めすぎていると思ったのか、頬を叩き、気を取り直していた。


 ミルとマクロープスはその場に停滞している。どれだけ押してもミルはとある線までは下がらない。後退するまでの距離をあらかじめ決めているらしい。もしそうなのだとしたら、僕よりも戦う気力があって戦闘の勘が鋭いようだ。


「せいやっ!」


「べッベッベッベッベッベッベ! グホッツ!」


 ミルの拳がマクロープスの鳩尾に直撃した。もう、拳一個があばら骨を無理やり広げながら打ち込まれている。

 加えて拳に魔力を移動させており、無色の魔力を放った。すると魔力の拳が敵の体を貫通し、後方の草花が舞う。

 大きな石を木に打ち付けたような炸裂音が鳴り、胸椎を破壊したのか、背骨が肉を裂いて飛び出ていた。その瞬間、黒い血が噴き出し、地面を黒く染める。


「ふぅ……。無色魔法『獣拳』成功です!」


 ミルは両手を握りしめ、顔の前で交差させたあと横腹に向って肘を引いていき、武闘家の構えを行う。


 ――無色魔法『獣拳』。ミルが勝手に命名したのかな。まあ、別にいいか。


「ミル、次々行くよ」


「はい!」


 残りは一八体。僕とミルはマクロープスを一体一体着実に倒していく。


 僕は敵を舐めたりせず、フルーファをしっかりと使っていく。毎日振り続けている大剣は僕の手足の如く動き、長さや速さ、耐久力などをすべて熟知している。そのため、他の武器とは比べ物にならないくらい使いやすい。


「べッベッベッベッベッベッベ!」


 マクロープスの群れは後退を始めた。と言うよりかは黒いマクロープスのもとに向かおうとしていた。


「キースさん、追いますか?」


「ん~。そうだな……。あの中に入って行っても大丈夫だろうか……」


 僕は魔力視で黒いマクロープスとライアンの戦いを見ていた。


 魔力を追ってギリギリ視界でとらえられるほどの速度の打ち合いを行っており、普通の人間が入って良い戦いではない。

 ミルなら、全身の感覚を使って戦えると思うが、僕なんかが入ったら完膚なきまでに叩きのめされそうな気がする……。

 ただ、今でも互角の戦いなのに、あの中に通常のマクロ―プスが加わったらライアンは押され始めるだろう。勇者を見殺しにするわけにもいかない。


「よし、追うよ。ミルは黒いマクロープスの攻撃に注意して動いて。通常の個体は僕が倒す。役割を分担しよう」


「了解です」


 僕とミルは敵を倒す方と警戒する方の二手に分かれ、マクロープスを追った。


「ちょ、ちょっと待て! お前達がどれだけ強いのかは今の戦いでわかった。だが、あの個体の相手をするのはさすがに危険だ!」


 オリーザさんは僕達を止めてくれたが、誰かが助けに入らなければライアンが倒されてしまうかもしれない。


「すみません。このまま見過ごせません。ライアンが死んだらクサントス領は危機に陥るはずです。なので助けに入りたいと思います」


 僕達はオリーザさんの声を振り切って通常のマクロープスを追った。残りの個体は一〇体。


「べッベッベッベッベッベッベ!」


「なっ! おい、どこに行く!」


 ライアンの大声が響き、ミルが僕の前に出た。


 「べッベッベッベッベッベッベ!」


 黒色のマクロープスがミルに蹴り込んできている。加速した状態での蹴りなので、相当な威力があるはずだ。


「はああああああっ!」


 ミルは黒色のマクロープスの攻撃に対し、獣拳で対抗する。


 手と脚がぶつかると当たりに衝撃波が広がり、髪が靡く。


 ミルの拳を魔力視で見る限り怪我はしていない。どうやら敵の蹴りと無色獣拳の威力はほぼ同じのようだ。だが、魔力を使う反面、ミルの方が不利になる。あの威力はそう何発も打ち込めない。

 なのでミルは敵の攻撃を躱しまくり、魔力を溜めると言う戦法を編み出した。カウンターを狙うこともでき、一撃で相手をしとめる力も手に入れたとなると、ますます体格以外に足りない部分がないほどの戦闘能力を得たことになる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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