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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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一粒金貨一枚

「出来ました」


 僕はリーフさんに試験管を渡す。瓶は水で洗い、薬液が入った水槽の中に入れた。


「ありがとう。ふむ。水分はしっかりとっているようだね」


 リーフさんは試験管の中身を見て呟いた。椅子に座り、試験管を閉めているコルクを抜く。そのままミルの鼻下に持って行った。


「さあ、嗅ぎたまえ」


「か、嗅ぐって。これをですか。さすがにぼくでもキースさんのおしっこは……。ふにゃっ!」


 ミルは匂いを嗅いだのか、鼻を動かした途端、全身が痙攣して漏らした。全身から力が抜けて気絶している。


「ふ~む、これはかなり重症だね。猫族の中でも相当性欲が強い。思い人のフェロモンで伸びちまってるよ。少年、君はこの子を相当可愛がっているようだね」


 リーフさんは口角を上げながら僕の方を見て言った。


「可愛がっていると言っても撫でたりブラッシングしてあげたりしているだけですよ」


「十分可愛がっているじゃないか。獣族は雄が優位だからね。雌を屈服させたがる。だから、殴ったり力づくで押さえつけたりする者もいる。まあ、人間も同じか。彼女の血には雄に恐怖を得たり、屈服するような精神が備わっている。そんな中で可愛がられていたらほんの少しでも過剰な愛情が溜まりすぎてこうなっちまうわけだ」


「つまり僕がミルを甘やかしすぎているということですか?」


「原因はそうだな。まあ、人族と獣族の違いは大きい。少年の可愛がりがこの子にとってとんでもなく嬉しいご褒美なんだ。それを取り上げる気は無い。まあ、子供を産ませれば多少は落ち着くと思うが、猫族は永遠に発情期がやってくるから大変だぞ~少年」


 リーフさんは魔法で布を浮かし、ミルの尿を拭き取る。


「ん~、こりゃやばいな。フェロモンが尋常じゃない。媚薬に利用できちまうぞ」


 リーフさんは布のにおいを嗅ぎ、鼻をつまむ。何重にも袋で包み、ゴミ箱に捨てた。


「さてと、その子に合った発情止めを作るとしようか」


 リーフさんは壁に陳列された薬草や根っこ、乾燥させた物質をすり鉢の中に放り込む。


「値段はいくらでも構わないので、ミルが辛くならないようにしてあげてください」


「ほほお、太っ腹だね~少年。あいわかった。とびっきり高いが体に害なく使える薬を作ろうじゃないか」


 リーフさんは魔法で別部屋からさらに別の素材をすり鉢に放り込んだ。そのまま、棒でごりごりとすりつぶし、混ぜ込んでいく。

 ある程度混ざったら、薬研に移し、さらに細かくすりつぶしていく。完全にすりつぶすと粘り気のある土のようになり、纏まっていた。魔法で丸め、球状になっていく。風魔法で乾燥させると直径一センチほどの丸薬が三○個ほど出来上がり、袋の中に落ちていく。


「よし、完成だ。この薬研に付いたあまりを指で擦り取って伸びている嬢ちゃんに与えてやんな。そうすりゃ、半日は持つさ」


「わかりました」


 僕は薬研にくっ付いている薬を取り、椅子に座って伸びているミルのもとに向かう。口を半開きにしていたので、薬を直接食べさせる。


「んん……、んんんんっ! にっがああああ~!」


 ミルは跳ね起きて床を転がる。口の中身を吐き出そうとしたので僕は慌てて上を向かせた。


「ミル、飲み込んで。そうすれば、発情せずに済むから」


「んんんん……」


 ミルは涙を流しながら嚥下し、激苦の薬を体の中に入れた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。に、苦すぎて舌がおかしくなっちゃいました……」


「最初だけだから。あとは丸薬で苦くならずに飲めるよ」


「うぅ……、ぼくはキースさんの前で何回お漏らしすればいいんですか……」


 ミルは内股になり、濡れている下半身を隠そうとする。


「僕がお漏らしさせている訳じゃないよ。たまたま僕が近くにいるだけだから」


「そうかもしれないですけど……。こんなに濡れていたら仕事なんて出来ません。一回家に帰らないといけませんね」


 ミルはため息をついて立ち上がった。


「んじゃあ、夕食後に一粒飲むように。一粒で金貨一枚だから、三○日分で金貨三○枚だ」


 リーフさんは手を出し、お金を出せと急かす。


「一粒金貨一枚……、普通の丸薬よりも格段に高いですね」


「少年が高くてもいいと言ったんだろう。文句話言わないでくれ」


「いえいえ、文句なんてとんでもない。金貨一枚でミルの一日が安定するなら安い買い物ですよ」


 僕は中金貨三枚を出そうとすると、ミルが胸もとから袋を出し、中金貨を三枚をリーフさんに渡そうとする。


「ミル、僕が出そうと思っていたのに」


「いや、ぼくの体のことですから、自分で稼いだお金を使いますよ。キースさんになんでもかんでも出してもらうわけにはいきません」


「でも、中金貨三枚なんて大金だよ。そんなのミルに払わせるなんて出来ない」


「いやいや、ぼくが払いますって。キースさんにぼくの薬を買ってもらう方が申し訳ありません」


 僕とミルは互いに払いたがり、会計が全く進まない。結果、半分ずつ出すことになり、僕とミルは中金貨一枚と金貨五枚を差し出す。


「本当に仲がいいんだね。じゃあ、確かに金貨三○枚分は受け取った」


 リーフさんは僕に丸薬をが入った革袋を渡してきた。そのまま革袋をミルにわたし、薬屋を出る。


「いやぁ~。まさかキースさんの尿のにおいを嗅いだだけで伸びちゃうとは思いませんでした。ぼくの体はキースさんにどれだけ依存しているんでしょうか~。ふふふ~、キースさんにもっともっと愛してもらえるように頑張らないと~」


 ミルは僕にくっ付いてくる。今、下半身が大変なことになっているのに、くっ付いてこられても困るな。


「ミル、早く帰って下半身を洗わないとかぶれちゃうよ」


「はっ、そうでした。すぐに帰ります!」


 ミルは僕を置いて一人で家に走って帰った。僕も後を追う。


 家に着くと、ミルが顔を赤くしながら玄関から出て来た。


「どうしたのミル? もう着替えたの?」


「はい。着替え終わりましたし、軽くシャワーも浴びてきました。ささ、今日は昨日よりも少ない量しかこなせませんけど、仕事をしに行きましょう~!」


 ミルは僕の腕を持って手を引く。僕はミルに引っ張られてクサントスギルドに向った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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