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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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感謝されると嬉しい

 二時間ほどすると、二人は眼を覚まし、僕は鍛錬を終える。


「よし、今日も依頼を頑張るぞ!」


 僕達は朝食を得て、それぞれの仕事を行う。僕とミルは昼食を買ってからギルドに向かう。すると、べニアさんがギルドの中を何往復もしながら歩いているのを見つけた。


「べニアさん、おはようございます。今日は晴れましたね」


「キース君。今日も来てくれたのか。ありがとう」


「いえ、僕達はほぼ毎日仕事をしますよ。何かの記念日は休みますけど普通の日は仕事漬けです」


「いはやは……、キース君は冒険者とは思えない性格をしているんだね。私達としてはとてもありがたい」


 僕はべニアさんに感謝され、ギルドの受付さん達にも感謝された。仕事をしていると物凄く感謝される。昨日だって三種類の依頼で三回も褒められた。


 僕達はお金を貰うことよりも感謝を貰ったほうが嬉しくなりつつある。それくらい自分達を必要としてもらえているのだと感じられるのだ。


「じゃあ、今日も依頼を受けてくれるかい?」


「はい。ライアンの受けるはずだった依頼を受けさせてもらいます」


 僕はべニアさんから依頼書を貰った。


 魔物の討伐から荷物運びまで、雑用かと思われるような仕事もある。でも、依頼料は高く、金貨一〇〇枚が最低額だ。それほどの金貨を払ってまでライアンに完璧に処置してもらいたい者達なのだとべニアさんは言う。


「皆、本当に困っている者達だ。だからこそライアンに頼みたくなる。金額が高いのは気にせず、依頼を完璧にこなしてくれればいい。それ以上でも構わない」


「わかりました。では、こなせる依頼だけこなしてきます」


 僕はべニアさんから依頼書を受け取り、そのままミルと共に依頼を受けに向かう。


 お金や宝石、貴金属を運ぶ依頼を三種類こなし、盗賊も二組ほど捕まえた。午前中だけでも仕事が一気に減り、昼食をまったりと得たあと午後からは魔物の討伐に入る。


 マクロープスばかり狩っていたので、久しぶりにゴブリンや大量のスライムを討伐する。このような低ランクの魔物でも大量に集まれば勇者に頼まないといけなくなるほど危険な魔物になってしまう。


 なるべく早くから討伐しておいた方がいいと言うのに、人は目先のことを気にするあまり、先の状態が見えないのか被害が出てから依頼を出す。


 もっと早く依頼を出しておけば比較的安く、被害者も出さなかったのに……。そう思うも、依頼者側に悪意はなく、いつの間にか増えてしまっていたという。ハチの巣をほおっておいたら大きくなるように、小さい時にまた後で駆除しようと言い続けた結果手が付けられなくなると言う具合だ。


「うへへ……、体が魔物の血でベタベタです……。スライムの粘液のせいでてっかてかですし、体を早く洗いたいです」


 ミルは血しぶきやスライムの体液に滑って突っ込み、別の魔物が生まれてしまったのかと思うほど全身がギトギトになっている。布である程度拭き落としたが、髪などは洗わないとどうしようもなさそうだ。今日は五種類の依頼を受け、金貨五〇〇枚を得る。二人でわけて僕の取りぶんは金貨二五〇枚だ。


「ほんと……、君たちは優秀なんだな……」


 べニアさんは苦笑いが納まらず、嬉しいのか引いているのかわからない表情だった。


 今日はギトギトの体を洗うために大きなお風呂に向かい、綺麗に体を洗う。久しぶりの蒸し風呂にも入り、水風呂に浸かる。

 外気よくをして気分爽快だ。


 大きなお風呂から出て綺麗な体に汚れた服を着るのは抵抗があった。女湯から脱所にやって来たアルブに頼み、シトラから替えの服を持って来てとお願いすると数分後にバスケットが届き、僕とミルの分の服が入っていた。僕が着替えるとアルブはバスケットを持って女湯の脱衣所に向かい、ミルに着替えを持っていく。


 着替え終わった僕達はお風呂を出て、家に帰った。たまに入る大きなお風呂は小さな贅沢で気分がいい。毎日入るよりもありがたみを感じられた。


「いや~、心地よかったですね~。ぎっとぎとだったからこそ、最高でした~」


 ミルの髪は綺麗な金色に戻っており、艶々と輝いて見える。肌は疲れが癒えた証拠とでも言わんばかりにぷるぷるに潤い、張りがいい。ミルの肩を抱き寄せて匂いを嗅いでも石鹸と彼女のにおいしかせず、落ちつく。


「もう、キースさん、どうしたんですか?」


「ミルの髪が綺麗になっていたから、どんな匂いがするのか気になっちゃって……」


「へぇ~、どんな匂いがしましたか?」


「石鹸の香りがした。爽やかで清潔感溢れるいい香りだったよ」


 ミルは僕の体に鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。


「キースさんのにおいがします~。とってもとっても、良い匂いです」


 ミルは僕に抱き着きながら呟いた。


「ありがとう。って言うのも変かな。まあ、臭いと言われるよりはいいか」


「ぼくはキースさんから汗のにおいが漂っていたとしてもギュって抱き着いてペロペロしたいです……」


 ミルは舌をチロリと出して微笑む。彼女が舌を出しただけで僕の胸がドキリと跳ねる。視線を反らした。

ミルはこれ見よがしににんまりと笑い、尻尾をうねらせる。


 僕達は少しくっ付き合いながら、家に帰る。


 家に到着すると、仁王立ちしているシトラが待っていた。


「二人とアルブで温泉に行ったの……」


「え、えっと。そうだよ。体中がギトギトだったからさ、家のお風呂に入るのも悪いな~と思って……。大きなお風呂で体を洗ってきた」


「ふぅ~ん。私も誘ってくれたらよかったのに……」


「シトラにはシトラの時間があるわけだし、僕達の都合に合わせるのは悪いな~って」


 僕はシトラの怒りを買わないよう、なるべく下手に出て話を進める。シトラは自分も誘ってほしかったらしく、はぶられたことに怒っていた。


「ご、ごめんシトラ。シトラも温泉に行きたかったよね。シトラを誘わずにミルとアルブの三名で行ってしまって反省します」


「まぁ、わかってくれればいいんだけどさ……」


 シトラの怒りは原因を理解してもらったという過程の下、消えていった。


 僕達は夕食を得てミルはそのまま就寝、疲れがたまっていたのだろう。


 僕は無休を発動し、眠気を押さえて活動を続ける。まあ、シトラが一人でお風呂に入るのはつまらないというので僕はまたもや自宅のお風呂に入る。アルブはミルにくっ付いて眠りについていた。


 僕とシトラは珍しく二人だけでお風呂に入っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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