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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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たまには寝るのも悪くない

 僕達はクサントスギルドに戻り、三種類の依頼が終了したと報告しにきた。


「すみません。三種類の依頼が終わりました」


「え? も、もう終わったんですか……」


 僕は依頼が終了したと言うと受付の女性が戸惑っていた。


「わ、わかりました。えっと護衛料が金貨一〇〇枚。マクロープスの討伐が金貨一〇〇枚。岩の除去金貨二〇〇枚。マクロープスの色の濃い魔石が四個なので金貨一六〇枚。合計金貨五六〇枚となります」


 受付の女性は大金貨四枚と中金貨一六枚を渡してきた。丁度半分に分けられるのでありがたい。僕はミルに大金貨二枚、中金貨八枚を渡した。


「なんか物凄い額が稼げるようになっているんですけど……」


 ミルは苦笑いをしながら呟いた。


「ほんとだね……。まあ、お金はいくらあってもありがたいから、受け取っておこう」


 べニアさんはギルドにいなかったので、顔を合わせることがなかった。でも受付さんが何度も感謝してきたので、僕も仕事をしてよかったと思えた。


「このまま家に帰るか……、小腹を満たしてから帰るか……」


「シトラさんの美味しい料理をお腹いっぱい食べるためにそのまま帰るのもありですね」


「そうだね。じゃあ、帰ろうか」


「はい。帰りましょう」


 今日の報酬はマクロープスの魔石二九個分と橙色の勇者が受けるはずだった依頼三種類を行い、計金貨一五六〇枚。


 ブラックワイバーンを除いた時の最高金額ではないだろうか。


 まあ、狂暴化したマクロープスの魔石が思ったよりも大分高く売れているのがありがたい限りだ。強さと個体数、魔石の濃さが合わさり、金貨四〇枚と言う高値になっている。僕の取りぶんは金貨七八〇枚。シトラに渡したら喜んでくれるだろうか。


 僕達は家に帰る。玄関を叩きながら声を掛けるとシトラが玄関を開けてくれた。


「お帰りなさい。今日は時間通りに帰って来てくれたんだ」


「ただいま。まあ、シトラの悲しむ顏は見たくないからね。はいこれ、今日の依頼料。シトラの持ち金でいいよ」


 僕は大金貨七枚、中金貨六枚入った革袋をシトラの手を置き、玄関に上がる。ミルもシトラの横を通り、玄関に入った。


「ちょ……。馬鹿! いくら渡してきてるのよ!」


 シトラは硬貨の入っている袋を僕の頭に投げつけて来た。金貨は重く、頭に打撃が入り、視界が揺れる。


「いたた……。シトラ、物を投げたら危ないでしょ」


 僕は床に落ちた袋を手に取り、シトラのもとに移動した。


「ご、ごめん。てんぱった。って、そうじゃなくて稼ぎ過ぎ!」


「稼ぎ過ぎって怒ってくる主婦の方はそうそういないと思うんだけど……」


 僕はシトラの手の平に袋を置き、しっかりと手渡す。


「私は主婦じゃないし、いきなり大金を渡されたら驚くに決まってるでしょ」


 シトラは怒りながら袋の中身をもう一度見た。


「大金貨七枚に中金貨八枚……。はぁ……。見間違いじゃなかった」


「シトラ、今日もお疲れ様。そのお金は報酬として受け取ってね」


「受け取れるか~!」


 シトラは子供のように怒り出した。僕とミルはクスクスと笑い、シトラは尻尾を大きく振りながら僕に抱き着いてくる。


 お昼と言う名のおやつを食べ、小腹を満たした。お風呂に入り、雨と汗を洗い流す。


 お風呂から出るとシトラの大盛り料理が食卓に並んでいた。皆で美味しくいただき、満足のいく夕食になった。


「キース、たまには寝ないの?」


「そうですよ。スキルがあると言ってもさすがに寝なさすぎも体に酷だと思うんですけど」


「ん~、寝てしまったら鍛錬が出来なくなるでしょ。弱くなっていたらどうしようって不安に駆られるんだ」


「普通の人は皆眠ってる。寝ても弱くなったりしないでしょ。寝た方がいい可能性だってあるんだから、少しくらい寝なさい」


「そうですそうです。たまには皆で一緒に寝ましょうよ」


 シトラとミルは僕に寝るのを進めてきた。


「主、人の体は本来、眠っている間に体力や魔力、筋繊維の回復を行います。主の場合は溢れる魔力によって睡眠を必要としなくなっている状態です。ですが、常に頭は働いている状態なので、休息をとって休ませるのも鍛錬の内だと思われますよ」


 アルブはあくびをしながら僕に伝えてくる。


「そうなの? じゃあ、久しぶりに寝ようかな」


 僕はアルブに頼んで『無休』を解除し、眠れるようにした。『無休』を解除した途端に頭が重くなり、眠気が襲ってくる。


「あぁ……。もう、眠たくなってきた……」


 僕はフラフラと歩き、シトラに抱き着く。シトラは僕を受け止め、寝室に運ぶ。僕の寝室かと思ったら、シトラとミルが寝ている部屋につれていかれ、布団の間に寝かされた。

 着ていた寝間着を脱がされ、下着だけの姿になる。ただ、頭が疲れすぎているからか体に力が入らず、抵抗できない。


 僕はシトラとミルに挟まれ、アルブがお腹の上で丸まっている中、眠る。


 意識が飛ぶ前に両頬から柔らかい感触を得た気がするも、意識はすでに深く沈んでいた。


 次の日、僕は八時間眠り、午前六時に目を覚ます。


 シトラとミルはまだ僕に抱き着いたまま眠っており、安らかな表情を浮かべている。アルブは四肢を伸ばし、お腹の上でぐてーッと寝ている。アルブの頭を撫でたあとそっと持ち上げて僕の寝ていた部分に寝かせた。


「ふぐぐぐ~。あぁ……、寝た……。この感覚は久しぶりだな~」


 ずっと起きていると気分がスッキリする部分がお風呂を出た時くらいしかない。でも、眠ったあとのこの解放感はどんなことをした後よりも心地がいい。


「うん、寝るっていいな……。たまには寝るのも鍛錬に取り入れた方がいいかもしれない」


 僕は起き上がる。すると体が驚くほど軽い。昨晩まではずっと重りを持っているような感覚だった。今は濡れた布が乾燥したような状態になっていた。


 フルーファを手に取り、外に出て鍛錬を行う。フルーファまでも軽く感じる。真上に向ってフルーファ本体が湾曲しているように見えるほどの速度で振ると、空に浮かぶ雲が切れた。加えて枯れた雑草が巻き上がり、上昇気流が発生する。


「寝ただけなのに……。力が確実に上昇してる。本当はこれだけの力が出せるのに、無休で無理やり起きていたから最低限の力しか出せていなかったのかな。そう考えると、毎日寝てた方がいいのではないか……」


 今日の天気は晴れ、ミルの本領を発揮できる。僕の身体能力も向上し、黒色のマクロープスにも負けない気がする。


 僕は二人が起きるまで鍛錬を続けた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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